第3章 観客のいないelegy 1/4
朝、目が覚めればやっぱり身体は重い。
体に鉛が詰まったように動かないし寝返りを打とうにも体が横を向けない。
(えっとこんな時は、少し勢いを付けてっと)
体を何度か振って勢いを付けてから体を起こして少しでも平気な風を装う。
それも全てはおばさんのため、私が笑顔でないと心配するだろう。
ここに来てからは周りに望まれるように演じてきたし、私が消えるまでもそれは変わらない。
元より演じるのは得意だった、人の顔を見れば何となく考えていることが分かったりどういう受け答えを望んでいるのかも分かった。
後はいかにもそれっぽく見せてその場をやり過ごす、それが私の身に着けた処世術だった。
おばさんも例外ではない、あの人が「笑顔でいる私」を望むのなら演じ切って見せる。
私が素を見せるのは今も昔もたった一人だ、それ以外は望まれるようにすればいい。
(そうだ、それでいいのに、なんで二人の前だとできない)
だというのに蓮や伊吹といるとどんどん自分の仮面が剥がれていく。
唯のぼんやりとしてそれでいて冷静な「東雲宮古」の仮面が剥がれてしまう。
それは嫌だ、本当の私なんて誰にも知られたくない。
あんな屑と糞の身体と胤から生まれたなんて、知られたくない。
「助けてよ、お姉ちゃん……」
どうして先に死んじゃったんだ、どうしてもっと私にいろいろ教えてくれなかったんだ。
声にならない声はずっと部屋に木霊したまま、遂に帰ってくることはなかった。
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