東雲宮子の都合・隠し事
スマホに届いたメッセージに一通り目を通した後、それを仕舞って街道に目を移す。
あぁ言ったはいいものの実のところおばさんに迎えはいらない。
以前に1度伺ったときも「宮古ちゃんは自分の時間を大事にして」と言われた。
だからそれ以来行ってないし、それ以外の時間はある目的のためにここ最近ずっと街を回ることに使っていた。
(あ、綺麗な空……)
ポシェットから小型のカメラを取り出して1枚、ネイビーブルーの空の写真を取る。
おばさんが誕生日に買ってくれたもの、これからはいい事を残せるようにくれたものだ。
(そんな事言ったら蓮たちに笑われるかな……)
そんな人たちではないことは分かっているけど、やっぱりどうしても疑ってしまう。
嫌な考えを振り切るがごとく、周囲に目を凝らし見覚えのある人影を探す。
道路の反対側にいる人、ビラを配るお姉さん、取引先と連絡する会社の人。
当然と言えば当然だけど私の探している人は何処にもいない。
(日暮れくらいならいると思ったんだけどな、もっと遅い時間じゃないとダメか?)
いっそのこと伊吹に話を聞いてみるのもアリか。
アイツは幽霊関係のエキスパートだから素直に話せばきっと協力してくれるかもしれない。
(……なんて、甘々だよね)
そもそも伊吹は幽霊をあるべき場所へ帰す側の人物だ。
となれば連絡すればその先にあるのはきっと成仏だろう。
結局のところ目的を叶えたければ自分で動くしかないのだ。
(それにしても、やっぱきついなぁ……)
ここのところ日に日に体の感覚が薄くなっていく。
腕や足を動かすのが億劫になり、少しずつ体力が無くなっていってる。
原因は分かってる、やっぱりアレのせいだろう。
おばさんにも隠してある、私の願いを叶えるための物。
伊吹や蓮、それにおばさんが知れば真っ先に止めるもの。
出来ればずっと隠していたいものだ、私がいなくなるその時まで。
空の向こうに日が沈んでいく、何度も見た寂しい景色だ。
「できれば夕焼けが来る前に消えたいかな……」
微かに漏れたその言葉は誰に届くことも無く消えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます