震えるHeart 躊躇いのBeat 2/3
「え?蓮くん?」
途中で異変に気が付いたのか京子さんの目が僕に注がれる。
そしてその色は少しずつ心配と不安を伴った眼差しに変わっていく。
「ご、ごめん!じゃなくて大丈夫!?」
「ご、ごめんなさい。少し休ませて、もらっても」
「うん、何ならそこまで運ぶよ!少し肩借りるね」
お互いに謝りっぱなしだけどとりあえずベンチまで運んでもらってそこで寝かせてもらった。
「どこか具合でも悪いの?なんなら医者でも行く?」
「大丈夫です、少し休めば、何とかなります」
上から覗いてくる京子さんを落ち着かせるために少しだけ元気なふりをする。
実際に少しだけ横にならせてもらえばそのうち動けるようにはなるだろう。
しかしなんでよりによってこんな時に来てしまうんだ。
「ちょっと待ってて、そこでお水でも買ってくるから」
「いや大丈夫です、それより傍にいてくれますか」
本当に何かあったときのために傍にいて欲しい、いざとなればスマホを渡すのも一つの手だ。
それにこの程度ならまだ軽い、それが唯一の救いでもあった。
「どうしたの?何か持病でもあったの?」
「まぁ、似たようなものです」
元より体が丈夫な方でなく寝たきりの生活が長かった身だ。
それでもそれから解放されて、そこで一悶着あって尚この忌々しい感覚がもう一度身体と心を縛る。
本当に、難儀なことこの上ない。
「そっか、ごめんね。そんな時に呼び出しちゃって」
「いいんですよ、元々無茶をしたのは僕ですし」
ここのところ嬉しいことが続いてたからその取り立てが来ただけだ。
人間万事塞翁が馬、いい事はずっと続かないし悪い事だってそんなに続かないものだ。
現に少しずつ体も動かせるようになったし、これならもうすぐ動けるだろう。
「それより京子さん、ごめんなさい。せっかくの探索を邪魔しちゃって」
「ううん、邪魔はしてないよ。それにこうなったのは知らなかった私の責任でもあるからさ」
それでも食い下がろうとすると人差し指を突きつけられる。
「心配かけたのを気にしてるならさ、次あった時なんか奢ってよ。それがいい落としどころでしょ?」
そう言って京子さんは涼やかにほほ笑む。
やられた、それを言われたらもうこれ以上は何も言えない。
「分かりました、でしたらまた会えた時にでも何か奢らせてください」
「うん、楽しみに待ってるね」
その笑顔を見ているとなんだかこっちまで笑顔が滲んでくる。
結局その日は日が完全に沈むまで二人でベンチに座っていたのだった。
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