心を繋げるOne action 3/3
「あ、もうこんな時間か」
気が付けば時刻はすでに夕方に差し掛かろうとしていた。
さすがに東雲にも疲れが見えてきたのか表情にも少しずつそれらが出てきていた。
だけどそれ以上に動きが洗練されていき、最後の方にはそのまま使うのもアリではないかと思えるほど完璧な演技だった。
「それじゃこの辺で切り上げようか、東雲もお疲れ様」
「ん、ありがと。こっちも楽しかったよ」
それだけ残して少し足早にその場を去っていった。
そう言えばおばさんの迎えがあると言っていたしそこに急いだのかもしれない。
「そんじゃ俺も上がるわ、お疲れ様だぜ蓮」
「うん、伊吹もありがと。また続きが出来たら教えてな」
「おうよ、最っ高の出来にしとくから待っててくれよな」
そう残すと彼もまた自分の家へと帰ったのだった。
(さて、僕も帰って編集でもするかな)
そう思った矢先にズボンの中でスマホが震える。
手に取ると非通知とだけ書かれたそれから着信が来ていた。
少しだけ悩んだ後通話を始めた。
「もしもし」
「やっほー、聞こえるかな?」
その声には聞き覚えがあった、それと同時に昨日のことが思い出されていく。
「もしかして京子さんですか?」
「うん、あってるけどその応対は不味いね、知らない人からの電話は名前を言っちゃダメだよ。オレオレ詐欺とか流行ってるみたいだし」
「心に留めておきます」
とはいえこういうことを言う人が悪事を働くとはやっぱり思えない。
見ず知らずの人を簡単に信用しすぎなのだと言われたらそれまでなのだが。
「それでさ、昨日も言ったけどいい撮影の場所を見つけたから来れないかなって」
「いいですけど、何処かで待ち合わせします?」
「それなら文化館の前に来てよ、私はそこの近くの公衆電話にいるからさ」
となると連絡方法もそれか、なら早めに切り上げた方がよさそうだ。
「わかりました、ではそちらに向かいます」
「うん、待ってるよ」
朗らかな声音と共に受話器が落ちた音がした、スマホで文化館の場所を確認すれば歩いて10分ほどだ。
(うん、やっぱり気になるし行ってみよう)
京子さんが案内してくれる場所にも興味があるしもしかしたらそこに行くことで新しいインスピレーションが浮かぶかもしれない。
先ほどまで続けていた撮影の影響か、まだまだ満足することが出来ず昂った心境のまま文化館へと足を延ばすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます