第11話
それは一言で言うのならば黒い靄の人型だった。
間違いなくそれは『アンノウン』の特徴そのものであったが、しかしその人型は他のそれらよりも決定的に違うモノがあった。
……『アンノウン』と言ってもいろいろな形と種類がいて、そしてそれらの中にはいわゆる「固形型」と「靄型」が存在していた。
つまり、物体としてそこに間違いなく「ある」奴と、靄のようなガス状の状態で存在している奴と、二ついる。
だがそいつは靄ではあったが、しかし内側に「何か」がいる事が明らかなのだ。
瞳があるところがまるで化け物のような鋭い光が灯っていて、こちらを値踏みするように睨みつけてきている。
今まで『ラプラス』としてたくさんの『アンノウン』と戦ってきて、そして戦い抜いた。
しかしあのような『アンノウン』は初めて見た。
それを、『プレデター』が新種の『アンノウン』と見るか。
はたまた別の存在なのか
このタイミングで現れたそいつを見るとどうしても後者だと思ってしまうし、まあ、ラプラスの言う通り『グリード』の戦士なのだろう。
……『ラプラス』に変身して外に出た時、まずそいつが待ち構えていたのを見て、俺は流石に嘆息するのを我慢出来なかった。
確かに俺は例の『プレデター』が今もなお存在している事を知っていて、活動をしている事も知っていた。
しかしいざその証拠を実際に見せつけられてしまうと流石に「ああ……」と思ってしまう。
それこそ――例の虫を発見して倒したと思ったらまた出てきたような気分である。
がっかり感が半端ないし、早急に何とかしなくてはならないという使命感が湧いて来る。
昔こそはチートを手に入れた事による全能感でやってたところも確かにあるけど、今は、ただ彼等が平和を乱すのが気に食わない。
『あァ、岸波』
「どうした、ラプラス?」
と、唐突に尋ねて来たラプラスに尋ねる。
対しラプラスはどうも歯切れの悪い答えを返してきた。
『あいつ、正体がいまいち掴み切れねェ』
「そうなのか? いや、だとしても『プレデター』の連中なのは間違いないだろうし」
『落ち着け、岸波。『プレデター』が気に食わねぇのは分かるが、冷静さを欠くな』
と、窘められて俺は二度目の溜息を吐く。
最もだと思ったし、だから俺は一度息を整える。
……目の前の『アンノウン』は行動をしない。
俺を警戒しているのだろう。
「ああ、そうだな――まずは、敵の正体を探らなくては」
『そうだな』
「そんじゃあ」
俺は、まずラプラスブレイドを腰にあるベルトの脇に差し、それから柄の頭についているボタンを押し込んだ。
『ラプラス・ゾーン!!!!』
刹那、視界全体にグリッドが表示されると同時にラプラスの力による情報収集が始まる。
と、同時に俺が何かしらの行動をし始めたのを察してか、目の前の敵がこちらに突貫してくるのが見えた。
靄が剣となり、俺に襲い掛かって来る。
それを余裕をもって避けながら情報収集の完了を待ちながら――そして、すぐにそれはやって来る。
『complete』
そして正体が現れ、明かされた「それ」を見て俺は流石に動揺をしてしまった。
その正体は俺にとっては既知の存在であり、だからこそ「何故?」と疑問が湧いてくる。
その靄に包まれていた正体。
『グリード』の戦士。
それは――
「……」
恵美。
何故、彼女が……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます