第10話
『組織の事はさておき、研究施設は見つけたぜ!』
ラプラスに探らせていたところ、早速当たりを引いたらしい俺は早速現地に向かう事にした。
当然店は閉じ、二人のアルバイトに関しては休みを告げておいた。
何でも折角だからショッピングに行くのだそうだ。
実に青春をしていて良き。
そんな訳で俺は『ラプラス』に変身して、ラプラスが発見した研究施設へと潜入。
場所はなんと下水道の中。
これで排水用とかだったらヤバかったが、運よくそこは雨水用の通路だった。
曲がりくねった道を抜け、そしていきなり現れた金属の扉。
そこをぶち破って侵入すると――中は聞いていた話の通り誰もいなかった。
完全にもぬけの殻である。
「……」
もしかするとここはあくまでダミーの可能性があるが、それでも何か情報は残されていないかと探してみる事にする。
とはいえ重要そうなものはすべて持ち去られているようだ。
だが、相手は相当急いでここを出たのだろう。
少なくとも計画的にここを脱した訳ではない事は、様々な研究道具がそのままになっている事からも分かった。
ただ、俺は専門家ではないのでそれらが何に使われていたのかはさっぱり分からなかった。
これは左藤の奴に頼るしかないな。
そう思って取り合えずこの場を後にしようかと思った、その時だった。
「……ん?」
躓きそうになり、首を傾げる。
一面汚らしい絨毯が敷かれているが、躓く場所があったか?
……もしかしてと思い、俺は絨毯をすべて剥がしてみる事にすると、どうやらビンゴだったらしく隠し収納を発見する。
さて、ここにも何もなかったら本格的にこの場所を後にしないと。
そう思いながらそこを開けてみると――一束のレポートだけが残されていた。
「……収穫はこれだけ、か」
少し落胆しつつも、一体何が記されているのだろうと思いながら中身を確認してみる事にする。
「プロジェクト『グリード』?」
レポートに記されていたのはそれの研究概要についてだった。
端的に言うと、俺みたいに『アンノウン』と人間を融合させ、新しい戦士を生み出そうといった研究だった。
それには制御装置か、あるいは知性を持つ『アンノウン』の創造が必要不可欠であり、そして今回のプロジェクトでは制御装置によって『アンノウン』を封じ込め、融合する事にしたらしい。
とはいえ『アンノウン』は特注のものを製造し、そしてそれに適合する人間もまた特注で『製造』したらしい。
『製造』。
一組の親から生み出すのではなく、フラスコの中で遺伝子を合わせ人工的に生み出された人間――通称『ファースト』。
彼女は研究通り『アンノウン』との融合に成功。
そして最終的に戦場に投入して『ラプラス』――つまり俺にぶつけるつもりだったらしい。
「……だけど?」
しかし、その途中で『ファースト』は『プレデター』の意図しない行動に出る。
脱走、そして失踪したのだそうだ。
その原因は定かではないが、しかし最終的に『ファースト』は向風学園付近で姿を消したらしく、だから恐らくは――
「……」
最終的にプロジェクト『グリード』は凍結。
そもそも人間を生み出したところでその人間を『アンノウン』のようにコントロールする手段がなかった。
人造人間には縁というものがなく、そして無垢であるが故に縛り付けるものが少ない。
……調教を施す手間を考えるのならば、安価に『アンノウン』を大量に生産した方がよっぽど良い。
そういった理由が重なって、よってプロジェクトは闇に葬られたのだそうだ。
「なる、ほど」
その『ファースト』の事はさておくとしよう。
しかし、彼女――恵美ちゃんは間違いなくプロジェクト『グリード』の関係者だろう。
彼女はどうしようもなく俺とラプラスに似ていた。
その内面が、である。
「だとしたら、まだ続いているのか?」
組織がなくなった後も、何者かが独断で。
『ファースト』を最初に生み出された人間だとするとして、『セカンド』や『サード』がいるのだろうか?
いやでも、人間を人為的に生み出すのには相当な機材とそれを納める為の施設が必要な筈。
だとしたらプロジェクトによって生み出された人間は少数、だと思いたい。
「そうなると、彼女がどこまで出来るのか、って事だよな」
『直接聞いてみたらどうだ?』
「……どうやって」
ラプラスは答える。
『俺の力ならば、中にいる奴を強引に引き出す事も出来るぜ?』
「それで、恵美ちゃんはどうなる?」
『さァな』
「……じゃあ、それはなしの方向で行こう」
『そうかヨ。お優しい事で……ん?』
「どうした、ラプラス」
唐突に黙ったラプラスは、何やら含みのある口調で話す。
『どォやら、動きがあったらしい』
「どういう事だ」
『俺達とそっくりの存在が、上にいる』
「……」
『プロジェクト『グリード』の戦士が、現れたみたいだぜ?』
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