第21話デザートつくります。

私はミリア、第三皇女殿下直属の騎士団“白百合の花園”の団員です。

主に荷物持ちや偵察、所持品の管理、食事の準備などを担当しています。

 私はこの時、魔物に襲われ野営することとなったので皆さんのお食事の準備をしていました。予定に無いお食事でしたが野営の想定をしていない私ではありません。ちゃんと食材、馬車を引く馬達の飼い葉、ポーション等の薬品類を準備していたのですが…


あの平民の獣憑きがいるせいで食材が足りません。御姉様や姫様には気に入られているようですが食事を任されている身で優先すべきは主と上官です。

あなたに食べさせるご飯はありませんよ。


なんて、おもっていた私は相当アホですね。そもそも、彼から食事を催促されたわけではないわけで 彼自身がご飯を用意していない可能性のほうが低いんです。


目の前で従魔?が瞬く間に組み上げた竈、容器から飛び出してきた何らかの生地。そこに乗せられていく食材達。御姉様に説明を求められてこたえていますが私はまったくわかりませんでした。


そして


「くっ…」


なんなのでしょうかこの

“空きっ腹に暴力的にまで訴えかけてくる香ばしい薫り”

はまるで

“その気がない相手にマウント仕掛けようとして仕掛ける前に圧倒的な力で潰された”ような敗北感……。


とにかく、美味しいとわかりきっているものを前にしてプライドとかって何かの役に立つんでしょうか。否…そんなものかなぐり捨ててあげましょう


「タマモ殿、その…とても美味しそうですね。少しでいいので交換致しませんか?」

私はなぜか足取りが重くなって帰ってきたタマモ少年に話しかけていた。

若干目に涙を含ませ私を見上げるタマモ少年に

気がつくと私は自分の分のスープとパンを差し出してそう交渉していました。仕方ないじゃん美味しそうだったんだもん。


「いいの!交換する!ありがとうございます。えっと…」


「あっミリアです。」


「ありがとうございます。ミリア…お姉ちゃん!」


タマモ君は交換を申し出るとパアッと花を咲かせたような笑顔を見せてくれました。

くっ…なんなんでしょう勝てる気がしません。というより自分を殴りたい気分です。獣憑きって何?今まで他と違うからと偏見を持っていたなんて…

さっきまでの私さようなら、こんにちは今からの私。こんななんの変哲もないパンとスープと交換を喜んでくれる彼から向けられる私への笑顔…。

たった今、私は生まれ変わりました!


タマモ殿にパンとスープを受け取ってもらうと御姉様が「私が交換しよう。」とか「ずるいぞ」とか「頼む」とか言っていますが


「御姉様“これ”は私が“最初”にいただきます」


と一言だけ伝えさせていただきました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お姉ちゃん達も欲しいの?しょうがないなぁ、どっちかだけだよ?」


ピザが出来たところにお姉ちゃん達が交換しようって聞いてきました。まだあるからいいよって交換してたら他の騎士様達も交換しようっていっぱいきました。


僕もピザ食べたかったから僕達の分残してどっちが良いか聞いてパンと交換しました。スープはそんな飲めないもんね。


そして、パンが沢山のこっちゃいました。


『パン沢山あるな…』


『喉渇く~』

『渇く、渇く~』


うん、全部食べたら喉渇いちゃうね。顎もつかれちゃう。


「そうだね。……よし、デザートつくろう!」


モグモグしているエル達がパンを見ているから

 僕考えました。それで甘いのつくればいいんだっておもいました。


サテュロスさん達のミルクにジュエルビーさん達の蜂蜜、お砂糖と少しお塩、スパイスを混ぜて少し厚めに切ったパンを浸します。

浸している最中に竈に平べったい石を乗っけて暖めて、バターを溶かして、浸したパンを焼いていきます。


『なっ‥‥い、いいのか?俺達だけ喰っても』


「大丈夫!パン沢山もらったからみんなの分あるよ。」

エルが僕のつくってる甘いのみて驚いてる。エルも“これ”大好きだもんね。

“これ”はね“フレンチトースト”って言う甘いやつなんだよ。“レッド”が教えてくれたの。みんな大好きなやつでね、これに……


『あっタッくんそれはいけない!』


『いけない、それはダメだ!』


ハートとルークが止めてきます。だけど止まりません!僕は目録保存から禁断の“あれ”を取り出してお皿に乗せたフレンチトーストに添えました。ミルクとばにらの種とタマゴとお砂糖を混ぜて頑張って混ぜながら凍らせたふわふわ“バニラアイスクリーム”です。これは“レッド”が甘いものが大好きな知り合いに教えてもらったのを僕に教えてくれた甘い奴です。


「それを私に売ってください!」×いっぱい


あれ?大きなこえに気がつくと騎士様達が周りにいっぱいいます。みんなお財布もってます。なんで?

よく見ると「そんな、こんなに美味しそうなのがあるなんて」「ひめちゃん、気を確かにもって!」ひぃちゃんやあおちゃんもいます。


「えっと、食べますか?」


「「「「「ぜひっ!!!」」」」」


フレンチトーストのバニラアイスクリーム添えはみんな大好きみたいです。エル達と他の親友達の分を残してみんなのお腹にはいっちゃいました。残らなくてよかったね


(『なんじゃ、わしの名呼ばんかったかいのう?』


『だから、まだ早いって』


『ほぉか、ほじゃ!』


『まったく、レッドもエンマも我慢が足りない』


なんて、念話が交わされていたとか)

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