第20話焼けるまでにお手伝い

あっそうだ!

ピザが焼けるまで少しかかるから僕他のところのお手伝いしてこよう!


「エル、かまど少しお願いね」


『おぅ、遠くにいくなよ?』


「はーい!」

よぉし、お手伝いがんばるぞ!


馬&騎馬世話係視点


「お馬さんにもご飯あげていいですか?」

タマモは目をキラキラさせて騎馬世話係にペコリと頭を下げた。騎士団の乗る毛並み、肉付き共に素晴らしい鍛え上げられた馬をカッコいい!と無邪気にはしゃいでいる様は非常に微笑ましい


ピコピコ動く狐耳にブンブン揺れる九本の狐の尻尾、キラキラと輝く瞳そんな控えめにいっても“まぶい”少年に笑顔で問われては


話しかけられた騎馬世話係も二つ返事で「いいよ」快諾。


タマモは「沢山食べてね」と命具から取り出した野菜や果物を刻んで混ぜたものを桶にいれて台におき馬達の前に笑顔で差し出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆


我々は“馬”である名前はいろいろある。騎士団の騎馬である我々は主のために命を懸け、運命を主と共にする覚悟はできている。

そんな我々だが先程魔物の群れに襲われ命辛々逃げおおせた。内心穏やかではない。


「沢山食べてね」


そんなときだ。我々の前に食事が山のように盛られた桶が差し出され少年がキラキラとした瞳でこちらを見つめている。


我々の世話をしている主の内の一人に目を向けると首を縦に振り“食べても良い”と促している。


バク…バクッバクバク…


ガツガツムシャムシャ


ゴクン…


………


う、馬ぁぁぁぁぁ


なんなのだ、なんなのだ“これ”は


新鮮な野菜、みずみずしい果実、丁度良い温度の水…何より労いの気持ちのこもったもてなし。


我々は夢中になって食べていた。そして…


ぶるる‥‥(あぁ食べ終わってしまった)


瞬く間に食べ終わってしまった……


足りない……


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

医療班=医療テント


「こんにちは、騎士様達お腹空いてませんか?」


そう言ってタマモは“負傷した騎士”が治療を受けているテントにはいっていった。

閉めきられたテントのなかは薬の匂いがこもりおもわずせきごみそうになった。



口に布を巻き髪が落ちないよう頭にも布を纒、視界以外の肌という肌を完全に隠した数名の男女がテントの中を回り騎士達に治療を施している。


タマモが中に入り声をかけるやいなや

「ここは君のようなものが来る場所じゃない。出ていきなさい。」と怒鳴られてしまった。


「えっ……えっとごめんなさい。ここに食べやすいのおいておきます。ねぇねぇが体がイタいイタい時はこれが一番だっていっていたのです。だえっと……ごめんなさいでした。」


怒鳴られたタマモはヽ(; ゚д゚)ノびくり と体を振るわせて若干瞳をにじませつつ命具から大きめの鍋と“瓶”を取り出してテントの入り口横に置き。

「ごめんなさい」と頭を下げて走り去った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


俺達は医療班。先の戦闘で負傷した団員達の治療に当たっている。

高位の魔物“ミノタウロス”とその上位種との戦闘のために医療班の俺達はてんやわんやしていた。

目に攻撃を受け失明寸前の者や、腕や足の骨を砕かれ騎士としては再起不能の者もいるようで今かなり苛ついていしまっている。


そんなところに「お腹空いてませんか?」なんて子供が医療テントの中に顔を出してきた。

先にもいったがかなり気が立っていた俺は「ここは君のようなものが来る場所じゃない。出ていきなさい。」と怒鳴っていた。

やっちまった、完全な八つ当たりだ。

すぐに謝罪をしようと子供のほうを向くと


「えっ……えっとごめんなさい。ここに食べやすいのおいておきます。ねぇねぇが体がイタいイタい時はこれが一番だっていっていたのです。だから……えっと……ごめんなさいでした。」


と早口でしゃべって何処かへ走っていってしまった。


「なんだったんだ?」


“がっ”


「って…なんだこりゃ?“鍋”?」


すぐにおいかけようと思ったんだけど足に固くて大きな重いなにかが当たってその隙に逃げられ?てしまった。


……

なんか甘くていい匂い……


俺も騎士の端くれだ、鍛練はそれなりに積んでいる。その俺が意識していないとはいえ結果的にけとばした事になるのだが……

その鍋は微動だにしていない。


少年への謝罪の気持ちと痛みで少し苛立ちが落ち着いた俺はふと鍋の中身がきになり鍋の蓋をあける。


「これはミルク粥か?」


あけると同時に白い湯気が立ち上る。甘くて優しい香りのなかに魚介の薫りがまざりなんともいえないいい匂いだ。


無性に俺はこれが喰いたくなった。隣に置かれた食器から配膳時に使うであろう大きい匙をとりかき混ぜてから皿にもる。

今気づいたがこれはミルク粥ではなく細かく刻まれた根菜と茸、魚介のシチューのようだ。


「(…ごくり)パクっ」


「なんだこりゃ?うますぎる。」


細かく刻まれたことで出汁がスープにとけて具材に均等に火が通り租借する回数も少なく病人も食べやすい。

そしてミルクの風味が全体をまとめている。

端的にいってうまい。


俺は食器にスープをよそいテントの中の負傷した騎士達にふるまった。

こんなうまいもん独り占めにしちゃいけないもんな。


なんて軽い気持ちで喰わせたんだけど…


「ははっ嘘だろ?」


一匙喰って数秒後の事だ「うまい!なんだこれ?」「こんなに美味しいスープはじめて‥‥」「作った奴を呼んでくれ」「馬鹿、作った奴をってなんだよ。作ってくださった方だろ?」


お前ら腕や足の骨砕けてたんだぞ?失明手前とか死にかけてた奴もいただろ?

それが…なんで回復してんだよ?おかしいだろなあ?

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