第17話お話し合い2 多数視点

ルーナ視点

「いや、なにいい感じに占めようとしてるんですか!?」


私は思わずバンと机を叩き大声を口に出してしまった。

自分自身、こんなにも声を荒げたのは久しく思う。しかし……


「“タマモ殿”貴方は確かに姫様から信頼をえているかもしれないが我々(騎士団)にとっては部外者、弁えていただこう」

(訳:姫様の友達にそんな危ないことさせられないよ。だから私達に任せて?)


ちがう、私が言いたいのはこんなことじゃない。この子は危険にも関わらず私達を助けてくれた。

食料調達の意味があったのだろうが見ず知らずの私達を躊躇わず助けてくれた。なのに……



「スカーレット嬢もです。襲われた事実がある以上は生誕パーティーの開催は公爵様に確認をとるべきです。」

(訳:スカーレット様も、危ないかもしれないから一人で決めないでお父さんに聞いてみようね?)


生まれた日をみんなで祝う。そんな催しに瑞を指すようで心苦しいですが、やはり……


「最後に姫様、貴女が一番タチが悪い」


「私達はそんなに信用がありませんか?」


(訳:まったく、姫様!そう言うことはまず私達に言ってください。いいんですか?いじけますよ?私、かなりめんどくさい女ですよ?)


姫様……もうしわけありません。主に対しこんな感情を抱いてしまうとは。

私もまだまだ修行が足りませんね。


信用されていないと本気で感じた訳ではない。ただ、自身で主を護りきれないと、彼らなら護ってくれると一瞬でもよぎったことがいいようもなく悔しかった。


「もうしわけありません。少し頭を冷やしてきます。」


私はテントを飛び出した。


タマモ視点


“「“タマモ殿”貴方は確かに姫様から信頼をえているかもしれないが我々(騎士団)にとっては部外者、弁えていただこう」”


僕はまた勘違いしちゃってた。ひぃちゃんはともかくあおちゃんとは今日はじめましてだったよ。

でもね、あおちゃん僕に“お願いいたします。”してくれたの。やっぱり僕“いいよ”したからちゃんとしたい。

「お姉ちゃんにごめんなさいして僕も手伝いたいってちゃんといわなくちゃ」


お姉ちゃんのところいかなくちゃ!



スカーレット視点


“「スカーレット嬢もです。襲われた事実がある以上は生誕パーティーの開催は公爵様に確認をとるべきです。」”


私、お祝いしちゃいけなかったのかなぁ。

お父様やお母様、お兄様達ががいれば私

……やだ、私は私に出来ることやりたい。だって私、出てきてからなんの活躍もしてない!

そのためには……自分の生誕パーティーくらい利用してあげる。


「ごめんなさい。サフィ-、タッくん、レオン、みんな。私やっぱりパーティーやりたい。わがままでもいい、怒られても我慢する。

だけど、“今”はこれが一番いいと思う。」


そうと決めたらルーナ団長のところいかなくちゃ


サファイア視点


“「最後に姫様、貴女が一番タチが悪い」


「私達はそんなに信用がありませんか?」”


飛び出していった、騎士団団長の背中をぼうっと眺めている私……

やっぱり私はダメダメですね。信用していない訳じゃない。伝えてしまったらみんなの事だから態度がかわって、哀れんでくれて……

きっと今みたいな、家族みたいな、友達みたいな関係には戻れない……。

騎士と主人にとってはそれが正しいはず。なんですが……


「嫌です。ケンカしたいんじゃないもん。」


謝らなくちゃ。ルーナは、お姉ちゃんは、私の…


レオン視点

「いやぁ、これだから子供さん達は純粋でいい。汚れた、裏の駆け引きは大人の仕事ってことで。」


何が汚れた?裏の駆け引き?大人の仕事?バカじゃないか俺は。

あの人は、泣かなかった。俺なんか……

追いかけるか?いや、


「俺なんか」


本当に嫌になる。騎士団の中じゃ若いから、命具が防御に特化しているからって理由でお嬢の護衛についているけど訓練生時代の軽率さがいつまでたっても抜けきれない。

今だって……お嬢や姫様がルーナ殿を追いかけるけど足が動かない。


「俺なんか行ったところでなあ」


ほら、自虐的な発言で自分の行動に理由をつけてる。こんな程度のやつに追いかけてこられたって


『なぁ、お前キン○マついてんだろ?』


「なっ、お嬢や姫様いるんすよ。少しは」


干渉にも浸れないのか……てか、やめてください子供の前ですよ。

俺もそれくらいは脇まえてるんすから


『そうだよ、そっちのほうが似合ってる、男ならうじうじ考えてないで勢い巻かせに行ってこいよ。』


「は?」


エル殿に注意(ツッコミ)したらからかうような笑みを口許に浮かべている。

確かに肩の力が抜けた気が……


「まったく、わかりましたよ。ひとつ借りときます。護衛騎士が護衛対象からはなれちゃいけないっすもんね。」


『今はそうしとくよ。ひとつ言っとくが、アイツは相当倍率高いぞ』


お嬢達を追いかける俺にエル殿がそっと呟いた。

うん、勝てないわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る