第7話 成功

ダッダッダッダッ…………!

 流石にこんな地響き立ててたら気付かれるか。

 まぁ、もう遅いがな。

「騎馬隊突撃ィ!!」

「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」

 騎馬隊の地響きと轟音に驚いたアシュリネ家の兵士達が及び腰になる。

「お前ら、暴れるぞ!」

「「「おう!」」」

 アクライヤによる計算された陣形のお陰で、騎馬隊が抜けた瞬間に、俺達近接部隊が接敵した。

 右翼の将は……あの髭ジジイか。名前は……あぁ、忘れたわ。

 俺は大きく跳躍し、近接部隊の邪魔にならないようにする。なんでって?俺以外槍だからね。じゃなきゃ俺が後ろから刺されちまう。

 

「フッ!」

 着地した瞬間に、周りの兵士を凪払う。

 前を見ると、目測でも敵将までの道は七人か。奇襲だからこの数だが、時間をかけたら一人じゃ無理だな。

 それに……

「!」

 この七人、護衛だろうがそれなりに強い。これは型を使うしかないか。

「雑兵が!」

 相手の横凪をバックステップで避けた後、俺は剣を左脇腹の横に構えて走る。

「来い!」

「鋼断!」

 俺の顔を狙った一撃は、敵の剣を切り裂き、兜ごと顔を二つに割った。

「フゥー………」


「な!?ミトー!……おのれぇ、よくもミトーを!

 ロート、センテ、カミュオン!三人がかりであれを潰せ!」

「しかし、それでは……」

「口答えするな!」

「「「はっ!」」」

 どうやらアシュリネ家の御当主様は相当お怒りのようだ。

 ミトーと呼ばれた死体は、顔が二つに割れていてなお、相当な美男子だと思う。お手付きだったのかね。というか毎回思うんだが、発散で連れてきたガキを戦場に立たすなよ。それで悲しむのは違うだろ。

 まぁこちらとしては、勝手に頭に血が上ってくれて助かるよ。それに、俺にわざわざ護衛三人もくれるなんて優しいなぁ………


「来い!下郎が!」

「おいおい、あのガキはしょうがないにしてもだ。お前らいい年なんだし、名乗ってくれても良いんだぜ?」

「痴れ者が!貴様のような奴に名乗る物はない!」

「ミトーの仇、とらせてもらうぞ!」

 ……この家の兵士はアホなのか?こんな挑発にホイホイ乗るし、勝手に周りが見えなくなってるし……どう見ても、自分達の味方が少なくなってることに気付いていない。今まで、フロート王国が強すぎて、勝ち戦しか体験してないから、必ず勝てるという自信があるのだろう。それに技量が追い付いていれば最強の戦士になれたかもな。


 よし、遠目でカズィンとセルヤ率いる騎馬隊が、アシュリネ家の本陣に突っ込んだ。

「やれ。」

 俺は剣を護衛三人に向けて振り下ろす。

「はっ!何……を?」

「がはっ?」

「バ……カなぁ……」

 周りにいたバーンロー家の槍部隊が、完全に殺せるように四方から三人を突き刺した。

 やはり、囲まれているとは気付いていなかったようで、驚きと困惑の表情のまま死んでいった。

「うし、一人は首を取るために残れ!アシュリネ家の護衛は全員貴族って話だからな!他全員は騎馬隊の援護だ!行くぞ!」

「「「おう!」」」



「よし、槍部隊!敵の背後を半円に囲うように立て!良いか?近づいてきた奴だけ殺せ!だが、武器を持たない者はわざと逃がせ!その場からなるべく動くなよ!」

「「「了解!」」」

 近接部隊、さっきの一人を除いた十七名が散開するように敵部隊を囲う。

 よしよし、いい調子だ。アシュリネ家は兵士が六百名だと聞いていた。コーデル家の相手をしてるとはいえ、優勢なことに調子に乗り、兵士を前に出しすぎたのだろう。


「敵将、ブランド・アシュリネ!このセルヤが討ち取った!」

 セルヤの声にバーンローの兵士が鬨の声を上げる。

「よぉーし!撤退だぁぁ!!」

 カズィンの悔し涙を抑えた大声で、バーンローの兵士は一斉に退却する。これ以降は奇襲する予定は無いため、森に添った道を駆け抜けて、コーデル家の後ろにあるバーンロー家の陣地に帰還する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る