第3話 思わぬ出会い
マッターさんと出会ってから既に数ヶ月。マッターさんと関わり深い人達とも大分打ち解けることが出来た。それに、マッターさんの商売は日を追う毎に業績が上がり、それなりに名の通った貴族との商談も、ついこの前に結ばれたところだ。
「おぉ来たか、アファル。」
俺が扉を開けると手前にマッターさん、奥に同じ旅商人のハタリさんがいた。
「よし、揃ったな。」
「それでハタリさん。俺とマッターさんを呼び出してどうしたんですか?」
俺の質問に神妙な顔つきになって腕を組むハタリさん。
「フロートとフリックの戦争だ。それに今回は前よりも規模がでかくなる。」
「なんと!?く、詳しく!」
所詮は表向きの和平というわけか。
「確かなものだ。なんせフリック王国国王から直々に俺を指名で調達を命じられたからさ。」
ハタリさんはマッターさんと同じ旅商人だが、扱ってるのは武器と防具のみである。その全国から武器や防具を集める手腕を買われ、貴族御用達となったらしい。珍しい武器や防具はある種のステータスとも言えるとか。
俺は使えりゃなんでもいいと思うんだがね。
「それを私達に言ってどうするのですか?」
「……実は期限がちょっと厳しくてよ。同じ旅商人のお前に頼みたいんだ。もちろん、礼は弾むぞ!何てったって国王様からの褒美だからな!」
「ムムム……アファル、あなたはどうですか?」
悩んだ結果、俺に振ってきた。
「俺は護衛としてあなたについていきます。今さら惜しむ命はありません。」
「……ですね。最近は順調に売上が上がっていたせいで保守的な考えになっていたようです。
是非とも、マッタ商会にもその件一枚噛ませていただきたい。」
マッターさんが膝に手をつけて頭を下げる。それに倣って俺も頭を下げる。
「何言ってんだ。俺が頼みに来てんだからふんぞりかえってよろしく、とか言っとけよ。」
ハタリさんが笑いながら手を差し出す。
「そのような態度、あなたに取ることなど出来ませんよ。」
そう言って恭しく手を握るマッターさん。
「それじゃあ早速、頼みたい地域は………
ハタリさんが地図を取り出した。俺にはさっぱり読めなかったが。
「フゥー、何とかハタリさんの納期に間に合いそうですね。」
「そうですね。トラブルが無ければ…ですが。」
「辞めてくださいアファル。それが本当になったらあなたを置いてでも私はフリック王国に帰りますよ。」
「ふ、構いませんとも。」
「ハァー…あなたは全く。」
元々一人だったんだ。俺は気にしないがね。
「それにしてもこの剣何か違うんですか?ただのロングソードにしか見えないんですが。」
俺は今回調達した剣の一つを持ち上げる。
「なんでも魔法が組み込まれているとか。北の国は魔物が多いですからそういう技術が発達したのでしょう。その箱の剣は電流を放つとか。」
「へぇー。」
めっちゃ使いてぇ………剣を振りながら魔法が使えるとか便利すぎるだろ。
「ダメですよ?あなたはご自身の相棒を直すための借金を私に返してからですよ?」
「……はぁーい。」
結局、マッターさんは俺を金で雇ってくれた。俺の剣を打ち直してくれる鍛冶師も紹介してくれて、その代金も借金という形で肩替わりしてくれた。俺が働いた給料から何割か俺の借金を差し引いてもらっている。だが、利子無しで待ってくれる上に、働きながらマッターさんの伝手と知己を得られるなんて最高の職場環境だと思う。前回も前々回の職場もある意味キツかったからな。
「おや、アファル出番ですよ。」
マッターさんが馬車を停めて俺を呼ぶ。マッターさんは他の人よりも遠くを見通すことができるらしい。
「へいへい。」
おっと、謎の一団が謎の一団に襲われてやがる。
まぁ冗談は置いといて、旅してる一団が賊に襲われてるってところだな。なかなか装備も整ってるし、謝礼金たんまりもらえるかもな。
「それでは私は隠れておきますので、頼みますよ。」
「臨時報酬は大事ですからね。」
「えぇ。」
そう言って、マッターさんは馬車で脇の道にズレる。
「さぁ~て、張り切りますかぁ。」
「くぅ!一人はそこまでだが数が!」
「そい。」
「ぐぎゃあ!?」
俺は押され気味だった爺さんの相手を一刀に切り伏せる。
「ぬぅ!?誰だ貴様は!?」
「助太刀してやるよ。感謝しな。」
次は……あっちの二人は上手く連携しているから問題ないな。こっちの二人は片方を庇うように戦ってるな。
「私から離れないでください!」
「あ、あぁ!」
盗賊は馬鹿だなぁ……金目の物を持ってそうな奴を狙うのは良いが……
「後ろがお留守だぜ!」
とりあえず二人を切り伏せ、注意を引く。
あの脱獄?の時から使っているこの剣にも大分愛着が出来た。最悪二刀流ってのも……
「死ねぇ!!」
「危ない!」
心配してくれるとはありがたい。
「死ぬかバァ~カ。」
下からの逆袈裟斬りで飛び掛かってきた盗賊を確殺する。
「助太刀していただき感謝します。」
「まぁな。俺はアファルだ。」
「おっと、失礼しました。私はアクライヤと申します。」
庇いながら上手く立ち回るのは至難の技だ。是非ともコツを聞きたい。
「俺はカズィンだ。」
「俺はセルヤ。」
二人だけで囲まれた状況を打破していた。かなりの腕を持っているだろう。
「僕は…キグミナス。助けてくれてありがとう。」
この感じはどっかの貴族の子息かな?まぁ、素直で可愛げがあるな。
「なぁ~に。礼をくれれば文句はないさ。」
俺は笑いながら金マークを指で作る。下品とも言われるがこれが一番伝わりやすいのさ。
「じゃあ……これでいいかな?」
キグミナスが懐から取り出し、渡された袋の中身を確認する。
「な!?そ、相場の三倍だぞ!?良いのか!?」
「もちろん。それと………出来れば、僕に剣を教えて欲しいんだ。」
「……?どういうこった?お前の周りに強いやつらがいるだろ。」
「え…えーと………」
「まあ、色々あるのです。」
アクライヤが澄ました顔で呟く。
「そ。…それよりあと一人自己紹介が無いんだが?」
俺は件の相手を一瞥する。
「フン!貴様のような雑兵に名乗ることなどないわ!」
俺はそのジジイを指で指す。
「あの人はモスコです。プライドが高いのが玉に瑕ですが、優秀な方です。」
「盗賊に負けそうになってたがな?」
「な!?」
「それは、本来の戦い方ではないからです。」
「ふぅーん、なるほどね。」
「ね、ねぇ!さっきの話、どうかな!?」
「えっと、キグミナス…だっけか?悪いが俺は今マッタ商会っていう旅商人の専属護衛なんだ。俺が欲しいならその人に交渉してくれ。」
俺はポン、とキグミナスの頭を触る。
「き、貴様!?なんてこと……」
「はぁーい。落ち着きましょうねぇ。」
ジジイが何か言いかけたが、それを羽交い締めにして押さえつけるカズィン。
「そっかぁ……でも、また会おうね!」
「もちろん、また話そうぜ。」
俺はそう言ってマッターさんが待つ馬車に向かった。
その話を動く馬車の中でしたら、マッターさんが本気で俺の処遇を考え出した。
「なぁ、マッターさん。俺のこと売らないよな?」
「えぇ…そうですね。」
聞いてねぇぇ!!
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