勇者でしかなかった女は、孤独な魔王と結ばれない
柴野
プロローグ
第零話 とある広間での対峙
広間の大窓の外には暗雲が立ち込め、身の毛がよだつような雷鳴が響き渡っている。
ここは魔王城。不穏な空気を体現したかのようなその光景を背に、二人の人物が対面していた。
片や、世界の希望を背負う者。
片や、忌まれ疎まれる悪。
先に口を開いたのは、甲冑姿の年若い娘であった。
目が覚めるような紅い髪をした彼女はどこか哀しげな瞳を向けていた。
「人々の平穏を脅かす闇の者に告ぐ。わたしは勇者だ!」
「そうか。よく来たな、勇者よ。貴様と相見えるのを心待ちにしていた」
高らかな勇者の声に応じる男が、仰々しい玉座の上で紫紺色の唇を歪め、笑みを深める。
闇より深い黒髪の頂点である頭部には禍々しい角が二本生えていた。肌色は青白く、人間のものとはかけ離れている。
それを見上げ、勇者が腰の剣を引き抜いた。聖剣と呼ばれるそれは、男――魔王の命を絶やすためにのみ存在し、彼女に与えられし秘宝だ。
爪と剣が交わった瞬間、戦いが幕を開けた。
数えるのも嫌になるほど繰り返してきた、世界で最も激しく虚しい戦いが。
――今回もきっと、
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