第066話「オークダンジョン」
「妖精さん、お願いしますよ~」
「~♪」
魔法のランプをこすって可愛い可愛い妖精さんを召喚する。そして彼女にカメラを手渡すと、小さな身体で一生懸命に俺を撮影してくれた。
辺りを見回すと、遠くに豚の顔をした二足歩行のモンスターが徘徊していた。いわゆるオークというやつだな。見た目は凶悪だが、ここは星二ダンジョンなので大した強さではないだろう。
「おーい、映ってるか~?」
『ばっちりですよ。……へ~、ダンジョンの中ってこんな風になってるんですね」
「まあ、色々な種類のダンジョンがあるから一概には言えないけど、今回のは一番オーソドックスな洞窟型だな」
イヤホンから十七夜月の声が聞こえてきたので、俺はマイクを通してそれに応答する。
十七夜月がどうしても俺がダンジョンを攻略するところを見たいっていうから、今日はカメラを妖精さんに持ってもらい、インカムをつけて配信することにしたのだ。
以前の俺であればこんな集中力が削がれそうなこと絶対にしなかっただろうが、半吸血鬼に進化した今の俺であれば、星二ダンジョン程度なら楽勝なので問題ない。
それでも見せるのは十七夜月だけだけどね。俺のぷりちーな姿を全国の皆様にお届けしたい気持ちがないわけではないが、今はまだその時ではない。それは俺の存在が世間に知られても大丈夫なくらい最強になってからのお楽しみだ。
「よーし、行くぞー! なにか気づいたことがあったら教えてくれよなー」
『はい、任せてください! 先輩一人じゃ見落とすようなことも、私がちゃんとばっちり見てますから!』
こうやって通信しながらダンジョンを攻略するメリットはこれだ。俺だけじゃ見落としてしまうようなことも、十七夜月がカメラ越しに見ていれば気付くかもしれないからな。それに、後で映像を見て色々と確認することもできる。
俺は次元収納ポーチの中から"
これは亜人系モンスターに特効効果を持った魔導具で、【ミニマムチャンピオン】を持つ俺とも相性抜群の武器だ。
そしてオークは亜人系モンスターに該当するので、今回のダンジョンではこの武器の効果が存分に発揮されるだろう。
ダンジョンの攻略が前よりもさらに容易になった理由がこれだ。次元収納ポーチを入手したことによって大量の魔導具を持ち込めるようになったので、どの武器をどのモンスターに使うかが選び放題なのである。
ちなみに、星二ダンジョンで手に入る魔導具 (※トレジャーボックスからドロップするレアアイテムは除く)はこんな感じになっている――。
────────────
・冥府の鎌 (アンデッド系に特効)
・魔獣の斧 (動物系に特効)
・鬼人拳鍔 (亜人系に特効)
・竜殺剣 (ドラゴン系に特効)
・水龍の槍 (水棲系に特効)
・羽撃ちの弓 (鳥系に特効)
・悪魔殺しの短剣(悪魔系に特効)
・妖精潰し(精霊系に特効)※メイス
・液殺鞭(液体系に特効)
・巨人斬り包丁(巨人系に特効)※大剣並みの巨大包丁
・人形砕きの鉄扇(人形系に特効)
・神殺しの魔剣(天使・神系に特効)※大剣
・虫砕き(昆虫系に特効)※大槌
・葉斬爪(植物系に特効)
・魔封じの鎖(魔法生物系に特効)
・破雷棒(機械系に特効)
・付喪神殺し(物質系に特効)※細剣
・赤ポーション
・青ポーション
・緑ポーション
・白ポーション
・黄ポーション
・紫ポーション
・水色ポーション
・虹ポーション
────────────
と、このように様々な特効武器が存在する。
種類は星一の杖より多いが、アイテムを落とすレアモンスターも複数体出現することがあるし、星二からは運がよければトレジャーボックスも出現するので、星一よりもダンジョン攻略の旨味は多い。
それと新たなポーションも追加されている。効果は下記の通りだ。
【名称】:黄ポーション
【詳細】:服用すると、10分間だけ物理系ダメージを軽減できる。大量に服用すればするほど大きな効果が現れるが、完全に無効化することはできない。効果が切れたあと、10分間のインターバルを挟まないと再服用は不可。
【名称】:紫ポーション
【詳細】:服用すると、10分間だけ魔法系ダメージを軽減できる。大量に服用すればするほど大きな効果が現れるが、完全に無効化することはできない。効果が切れたあと、10分間のインターバルを挟まないと再服用は不可。
【名称】:水色ポーション
【詳細】:10分間だけ水中で呼吸が可能になる。効果が切れたあと、10分間のインターバルを挟まないと再服用は不可なので、水に潜る際は注意が必用。
【名称】:虹ポーション
【詳細】:服用すると、なにが起こるかわからないポーション。良い効果から悪い効果まで、様々な効果がランダムで発生する。服用する際には、覚悟を持って挑もう。
さて、それじゃあ説明はこれくらいにしてサクッとクリアしてしまいましょうかね。
俺は拳に装着した
「そいやぁ!」
《ブヒィィィーーーー!?》
メキョリと俺の拳がオークの顔面を陥没させると、その巨体は遥か後方へと吹き飛んでいき、ダンジョンの壁にぶち当たって真っ赤なトマトのように潰れた。
やはり【ミニマムチャンピオン】が【全能力+2】の力で大幅に強化された上に、特効武器の鬼人拳鍔を装備している状態の今の俺なら、普通のオークなんて羽虫のように潰せるな。
こりゃあ本当に星二ダンジョンなんて余裕すぎますわ~。
『その顔、油断しまくってますね? そういう慢心が一番危ないんですよー』
「ぎくっ!」
十七夜月がまるで俺の心を読んだかのように、イヤホン越しに指摘してくる。
いやだって実際に余裕ですし……。なにか不測の事態でも起こらない限り、俺が星二ダンジョンの攻略に失敗することなんて――
「ぎゃぁぁぁーーーーッ! 誰か助けてくれぇーーーッ!」
と、そんなことを考えていたらいきなり不測の自体が発生してしまった。人気のないはずのダンジョン内に、野太い男性の悲鳴が響き渡る。
『男性の悲鳴ですね。先輩、助けにいきましょう!』
「ああもう! わかってるよ!」
なんで星二ダンジョンに俺以外の人間がいるんだよ……。はぁ、これはまた面倒な案件の予感がするなぁ。
俺は頭を抱えつつも、悲鳴が聞こえてきた方向へと走り出した。
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