蓮台幻聴廻文サーカス

倉 无本

蓮台幻聴廻文サーカス

あるはずのないところからうまれ またないところへときえてゆくもの


受信せり磁気嵐「吾君臨す」と嬰児みどりご手に空のオーロラ


虚空そらを斬る衛星つきの運行 独り打つ槌の残像 冬の幻灯


衛星に捕捉されまま日を灯す オレンジ色のアイスを舐める


夕焼けのダージリン茶の水色と 砂蚯蚓サンドワームの声はただ風


陽は金と翡翠とはずむ手鞠歌 女神の御名を知る人もなき


夕焼けに並行線を曳く雲と 裏か表か決める手遊び


善き聲のマルチバース案内ウグイス嬢 ネガからポジへエッシャーの鳥


蓮台うてなより「すまいのせちぞ」と月の幻聴こえ 池の蛙と今日の一番


禿げ山の楽師どもなる幽霊と 調弦チューニングして 弾けばひとり 


春の夜の集積場の静寂しじまにも 混入せしは玩具おもちゃ行進曲マーチ


リサイクルマークつけたる蓮華ロータスを 天上天下 虚空そらへと撒布


円環の六道輪廻盆踊り 遠き山にヒトの往く経路みち


鬼神カミの名を呼べば夜は橋を飲む 渦巻く川へ深く打ち込む


にそうぶね ほかけぶねまた だましぶね れんげのせたら すえあやぶむね


燃え落ちる塔を見上ぐる泥中の 今は虚ろな君の王国


這う葛の丘に眺むるロケットに 後に会はむと鳩笛を吹く


人影は腐蝕の沼の色となり 谷底に落ち聞く祭笛


銀の雨葉に溜めてまた溢す音 遥か記憶の谷の蓮花ロータス


ここのつの うてなのうえのさわぎさえ さかさまことばよるのさーかす

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