第25話 高校一年生

 一旦出て、昼食の間に探求者は見つかった。

 6キロエリアに入ると、ツル梨は復活していなかったが、別の場所にピンポン玉くらいの葡萄が生っていた。


「葡萄は木」

「美味しければどうでもいいわ」


 それほど数はなかったので、銀二と探求者の人のリスが採った。

 果物は普通は取ってしまうと1日復活しないので、マサの大軍鶏を先に済ませる。

 刀剣オタクで棒術使いのマサは、それなりに強い。

 今の剣道は武術じゃないと言って、棒術を習っていた。


 誘き寄せられた軍鶏は、足を撃たれた後、タラオに仕込まれたアッシュに蹴られ、マサに棒でボコられて、ワカッタカラヤメテ! みたいな悲鳴を上げた。

 可哀相なことになった軍鶏は、行安の名を付けられた。


「何処から出て来たんだ」

「鬼神大王波平行安」

「そうゆうのね」


 何のことか判らないが、付き合うと限がないので流す。

 時間までアイテムと果物を探して、十二分の成果があった。

 食堂で、通常勤務を終えたお義父さんと合流した。


「果物の分け前、どうなったの」

「大量に採れるだろうってことで、国が3割、実働部隊3割、僕と渡辺さんが2割ずつです」

「メロンだけで30個以上あったって聞いたけど、6個もどうすんの」

「1人1つ。ズズは我慢する」

「ひでえな、親の顔が見たい」

「好きなだけ鏡を見ると良い」


 ブドウも梨もイチゴもあるので、食べ切れる分以外はお義父さんの部隊に渡した。

 アイちゃんに、ママズとアネズの分を持って帰れとお義父さんが言われていた。

 メロンは四人だから四等分すればいい。

 お義父さんは我慢する。

 

 探索者との検証をリーナに任せて、ミャーちゃんの三角山羊を獲りに行った。

 湯河原は探索者を用意して、一緒に入れてくれと言った。

 減るもんじゃないどころか、取り分が増えるだけなので承知した。

 湯河原は各種柑橘類の林だった。

 軍がモンスターを殲滅して、採集者に採らせる。

 伸気突と伸気斬の出るモンスターは、こちらのメンバーで獲らせてもらう。


 いい具合にミャーちゃんが伸気突、銀二が伸気斬を取れたので、三角山羊に挑ませたら死なせるところだった。

 こうなる可能性があるので許可を貰って持ってきた、5キロボスのマナコアが役に立った。

 名前はイーリス。虹の女神でハーピーの姉。


 後は学校が始まるまで、3人とファミリアに天駆と剛突を取らせた。

 フュージョンモンスターは、ミャーちゃんは銀山猫、マサは斑狐が良いと言うので、フュージョンは学校が始まってからして、ゴールデンウィークに翼と飛行力強化をする予定にした。


 ダンジョン専門高校は職業訓練校である。学業と実習が1日交替で、座学は小テスト中心で、受かったら実習に行ってもいい。

 高校卒業程度試験に受かっていれば、ダンジョンに関すること以外の座学も必要ない。

 卒業時の目標は5キロボス討伐で、6人で組むように言われた。

 一年生全員のファーストスキルと融合適性が公表されている。 


 数値は公表されないが、基礎能力の合計でクラス分けがしてあって、僕と仲間は全員A組。

 リーナは高校卒業程度にすでに受かっていて、ダンジョンの仕事をしながら、八王子総合大学で趣味の考古学の聴講生をする。

 入学式の後、ファーストスキルと融合適性が書かれた名簿が配られ、自由時間になった。

 でかいのが二人来た。


「内山、浄化師だろ。俺等がガードになるから、組まないか」


 権田久道ごんだひさみち後藤勇気男ごとうゆきお、自称言語道断コンビである。

 学校から貰った個人情報では、この二人がカタログスペックではトップ。どっちもシェイプシフター。


「もう決まってるから」

「誰だ」

「アイちゃんとタラオとミャーちゃんとズズちゃんとマサ」

「誰だよ、判る訳ないだろ」

「今村愛理、片岡尚太朗、大口美夜、田宮寿々恵、佐藤雅嗣」


 二人は名簿を見ながら確認する。


「射撃の今村と強撃の片岡は判るが、後は支援職と生産職だろ。中学の同級生とかで組むなよ」

「お前ら二人でもズズちゃん一人に勝てないぞ」

「ふざけるなよ、調理じゃないか。飯食わさないぞとかかよ」

「それは、結構俺等にダメージ来る。ここに居るってことは余程料理が上手い?」

「何言ってんだゴンタ、だからって、二人掛かりで敵わない訳がないだろ」


 実際にズズちゃんは、調理師としては世界最高の基礎能力を持っているので、何か手料理を食べさせて、二度と作ってやらないと言う嫌がらせが出来る。


「ま、隠してもすぐわかるので、見せておく。ズズちゃん、カモーン」


 ばたばたとやって来る。


「ハイハイサー、ご主人様」

「何なのお前」

「ご主人様のセックスペット、メギツネのズズです」

「お前等、頭大丈夫か」

「大丈夫だけど普通じゃない。見て判らないか」

「医者だって見ただけで中身は判らないだろ? お前の頭、羽根か?」

「田宮の頭も人間じゃないぞ」

「そうだけど、言い方」

「フュージョン済みかよ」


 女の子の集団から声が掛かる。


「今村さんの髪も羽毛なんだけど」

「となると、狙えるのは唯一フュージョン出来ない片岡の後釜か」


 タラオが鼻で笑う。


「ケライノに勝てたらな」

「また知らない名前」

「出でよ、ケライノ」


 タラオがケライノを出す。


「な、大軍鶏!」

「もう3級かよ」

「こっちにもいるぜ」


 マサが行安を出す。


「はい、こっちにも」


 アンディが出て来る。


「大口さんは?」

「はい、イーリス」

「三角山羊!」

「採集の護衛ならこの子ね。撫ぜていい?」

「どうぞ」


 女の子がイーリスに群がる。


「軍鶏触りたいって女はいないな」


 マサの言葉に、一人振り向いた。


「触っていいなら触らせて。わたしは軍鶏だわ」


 アイちゃんに似た、ちょっときつい雰囲気の子だ。

 行安には微笑んでいる。


「私は井坂美紗喜いさかみさき

「ファミリアは人間覚えるけどさ、俺が先じゃねえ?」

「あきらめろ。おま、中学3年間、女子に人間扱いされてなかったろ」


 タラオが事実を陳列する。


「半年は女に追いかけ回されてたぞ」

「シュンの友達ってだけで、不快生物から獲物になっただけだ」


 井坂さんが、行安を撫ぜながら、首だけこっちを向く。


「内山君、あなた、なんなの」

「義賊団天狗党首領、アオガラス」

「聞いた私が馬鹿なのね」

「そう」

「午後マサに狐獲らすなら、そろそろ動こう」


 アイちゃんが話を終わらせた。


「うん、後2人」

「何が」


 後藤が言ったが、女の子2人が反応した。


「はい!」「はい」

「じゃ、5人は一緒に来れたら富士森に来て。足は用意するから。マサがフュージョンモンスター獲るから、付いて来るだけでパワーレベリングになる。一緒に来ればスロットが2つ以上なら3級オーブ渡す。4級と3級で良ければ4級も渡す。学校卒業すれば支払い免除」

「本当に義賊じゃない。私馬鹿じゃなかったわ」

「残されたわたしたちは、どうなるの」

 

イーリスを撫ぜていた女の子の一人が言った。


「順に渡すから。A組は全員3級オーブと必要ならメヘルガルドールも渡す。条件は同じ。退学にならなきゃいい。ダンジョンに行かないと渡せないし、余ってはいないから少しずつしか渡せない。土日に8キロエリア行って出してこないと」

「出せるんだ」

「うん。あと、1人だけ」

「私!」


 井坂さんだ。


「お狐様を僕が、と言うか適性値とスキルレベルの差がある浄化師が倒すと、機敏が出る。順にみんなに上げるけど、1日1つしか出ない」

「今日、くれるの?」

「そう」

「今のそうは、ありよ」


 富士森では、四分谷少佐が待ち構えていた。


「シュンちゃん、枕崎行ってたんだって?」


 先に言われてしまった。もう使えない。

 探索者も待っていた。

 用意されていたオーブを5人に渡した後、変身して見せる。

 田坂さんが頷く。


「なるほど。天狗党のアオガラスのお頭なのね。そのフュージョンモンスターは何処で出るの」

「8キロの回し車エリアで出たんだけど、9キロのレアモンだと言われてる。そこは僕が獲った後別のが出るようになって、これは一度も出ていない。判っているのを獲っちゃった方が早いよ」

「飛べないと色々不便でしょ」

「ズズちゃんを見てくれれば判ると思うけど、飛行力出るモンスターも判ってる。鳥に拘らなくてもいいんだ。後付けだと飛行力弱いけど、強化も出来るし、天駆も取れる」

「羽の生えた狐のレアモンじゃないのね」

「色がレアなだけ。量産型のキツネさんチーム」

「なんでそんな情報が公開されてなかったの」

「僕が個人でやってたから。暗殺の危険が絶対ない訳じゃないし、公開されたらハニトラはまずある。浄化師六人衆が8キロエリアで確実に仕事が出来るようになったら公開される」

「貴方の方が、上なの」


 アイちゃんが頷く。


「六人衆筆頭のリーナが第二夫人」

「あなたが第一夫人?」

「そう」


 さっき見せなかった以蔵とスクネ、マッハ、銀二、アッシュも出して、道にいるモンスターを蹴散らして行く。

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