第16話 女体化
大天狗山は来宮駅から1キロ足らず、あたみ梅ラインの西側なので、沼津よりかなり好立地。
モンスターの構成は天狗山と一緒。
大社少佐のイヌワシのフュージョンモンスターは、ここの8キロの普通エリアから出た。
そっちの希望者は殲滅部隊に入っている。
熱海はガトリングホースも用意してくれていた。
名前はイナサ。先行隊長の
僕の為に用意したわけじゃないか。
中佐はお義父さんと同じ狼頭のシェイプシフターだが、翼はない。
二つ名は熱海の黒狼。
一応お昼を中で食べる用意をして、殲滅済みの8キロエリアを回し車エリアまで突き進んだ。
以前なら一つ出たらその日の仕事が終わったようなアイテムを取得しながら歩く事1時間余り、リスが黒い鳥を見付けた。
翼長は3メートル弱くらい。光線の加減で青く光る。
「カラスか? でかいな」
「フュージョンモンスターです」
「やるか」
「はい」
顔防具を不気味なお面に替えて、低空を走る。
大烏がこっちを見たので、左右に分れ、以蔵だけが前足を揃えて飛び掛かった。
以蔵を見た烏を撃ち、僕を見たら以蔵が斬り掛かる。
「キエッ!」
鋭い鳴き声で以蔵が飛ばされた。何か吐いたのか?
撃ったが外れ、こっちを向いて口を開いたので飛退いて避ける。
地面に何かが当たり、小石と草が飛び散った。
「衝撃波?!」
考えている場合じゃないので、駆け上がる。
飛べると思っていなかったのか、逃げ腰になった背中を以蔵が斬った。
のけ反った胸を刺して、そのまま一緒に落ちた。
すでに死んでいるのか、足も動かさない。着地と同時に結晶になった。
現れた暗いサファイア色の珠を手に取って、融合した。
骨格も変わるのだが、痛みなどはない。少し骨が痒い。
全身がずきずきして、下腹の中を揉まれている感覚がある。
毛髪が落ちるが、羽毛が生えるのは判っているので、心配ない。
全身の脈打つ感じが収まると、変身の仕方が判る。
変身の前に体の色を決める。
風切羽は黒に近い濃紺、勝色に。
雨覆いは紺だと判る程度に少し明るめ。
手足のアーマーも勝色、体は暗い青。
「終わった?」
隊長に聞かれる。
「はい」
「一回変身してみる?」
「はい」
「防具取ってね」
装甲を全部仕舞ってから変身しないと、落ちてしまって、解いたら貼り直さないといけない。
監視所にはフュージョナー用の変身室がある。
判っていたのに、いざとなると忘れてる。
「そうでした」
「ちょっと待って」
アイちゃんが僕と隊長の間に入る。
「向こう向いて」
「あ、そうだ」
ちって言ったの誰だ。
体の霊晶甲は、前面はハイレグのバニーガールくらいしかない。
背中の装甲はお尻だけ。翼があるから、なんぼかまし。
足りない分は普通の革装甲が貼れるけど、今はいい。
「一旦出ますか? 適性値が100を越えました。別のが出るかもしれません」
「よし、撤収」
やはり烏だろうということで、僕のベースの名はブルーレイヴンになった。
普段の髪の毛は15センチくらいの細い羽毛で、青光りする黒。
白目がほとんどなく、虹彩は瞳孔が区別できないほど黒い。
何が出るか、フュージョナー以外の人も期待を残して、午後の部に突入した。
いたのは、緑色に光る黒鷲だった。
誰にも反応しない。
なんでか、僕にはなんとなく判る。
「隊長、あれ獲ってみて下さい。もしかしたら、飛行力が出るかも」
「そうか!」
走って行ってイナサと二人掛かりで乱射、飛び掛かって刺すわ蹴るわで、ちょっと可哀相な感じで黒鷲は落ちた。
黒鷲なのに、僕のよりは明るいエメラルド色の珠が出た。
大きさは一回り小さい。
隊長が背中の装甲を収納してから融合すると、黒い翼が生えた。
光線の加減で緑に光る。
羽ばたいて飛ぶ訳じゃないのに、パタパタする。
「今日は、これで帰る?」
「ええ。何処に帰るかですが」
八王子に直帰もありうる。
「我が軍がご用意したホテルがあるじゃないですか」
「やはり、そうなりますか」
「飛べないシフトボディかなりあるから。君がシフトボディ増やしたし」
アイちゃんが頷く。
「絵にかいたような自業自得」
「書いてごらん。字でいいから」
女体化のデメリットは、ほとんどなかった。
立小便がし辛いとか、毎回拭かないと駄目とか。
浄化すればいいんだと気付いたのは、2日後だった。
スキルレベルが上がるはずはないが、万が一上がるとまずいので、この頃故意に使ってなかった。
アイちゃんとの性生活も、あまり問題がない。
「今日から、乳繰り合えるようになった」
「今までは何だったの」
「あたしが一方的に乳繰られていた」
「そう言う意味じゃないだろう」
今までの仕返しだと言って、一方的に乳繰られてしまう程度だ。
鷲は
取得期間は30日を限度にしてみたが、全部埋まった。
2級オーブの帰宅困難組とかなり再会した。
その間に自分の能力を確認した。特に烏が使った衝撃波の咆哮。
9キロエリアにはいるが、あの大きさで使うのはいないそうだ。
やってみたら、口から出せるが、射程が短い。ほぼ格闘戦用。
持った武器からは出せないが、手の平と手足の霊晶甲から、振動として直接なら相手に撃ち込める。所謂浸透勁。
飛行力取りが終わったら、猫狩りと引き換えに家族と友人に空跳を取らせたいと軍に打診した。
軍は二つ返事だったが、友人の範囲をどこまでにするか悩んだ。
アイちゃんは同級生5人とお義母さん。
こっちで50越えているのは、お母さん、姉2人、タラオとミャーちゃん、驚いたことに田宮さんも越えていた。
マサは誕生日が遅かったのでしかたがない。来年だね。
マサの代わりに佐藤兄を入れた。
言われたからって直ぐに来れるものでもなく、日程を調整しなければならない。
中学生は全員金曜の夜に来て、土日に取りたい。
お義父さんに、最初にお母さんとお義母さんをしてくれるように頼まれた。
「マリとミエとアイがそっち行って、俺はどうなるんだよ」
ま、そうか。
僕の関係者じゃないのに、有望株の浄化師も頼まれた。
このまま一人でやるより気が楽になるので、引き受ける。
浄化師は6人。結構いる。
生みの母と義理の母二人が来るかと思ったら、お義父さんまで付いて来た。
「どうしたんですか」
「休み取った」
「大丈夫なんですか」
「お前のお陰で戦力増えて、マナコアの採掘量が上がったから、無理に攻略しなくてもいいんだ。先行隊解散って話も出てる」
「どうなるんです」
「解散と言っても改名なんだが。第1攻略隊になる。兎も角アヌビスが無茶苦茶だ。10年前からやってるもんにしたら、俺等の苦労はなんだったんだってなってる。欲を言えば、猫頭と鷲頭が見つかれば、探して無駄な時間使うより量産型でいいってのが8割くらいいる」
「2割は量産じゃ嫌なんですね」
「ああ、絶対狼ってのと、草食獣系と、猛禽じゃない鳥派がいる」
「一生替えられないから、妥協できないのも当然ですよね」
お義父さんとの話が終わると、お母さんが近づいて小声で言った。
「浄化師の女の子のことは、どうなってるの」
「今度来るってだけ。まだ顔も見てない」
「よかったら、すずちゃんを抱いて上げて」
「なんで」
「あなたじゃないと駄目だって。あなたに認めて貰えるように頑張ったのよ」
「悪い子じゃないんだけど、友だちなんだよね。性的にみると友だちでいられなくなるような感じだった」
「ダンジョン入ると変わるのよ。もう自分で稼げるから、あなたに寄生するつもりじゃないの」
「まあね、ズズちゃんは、嫌じゃないんだけど」
アイちゃんに相談しない訳にはいかない。
「ズズなら構わない。二人掛かりで乳繰り回して遊ぼう」
「もしかして、そっちだったの」
色々な問題を先送りにして取り敢えず、おかあさん二人を済ませてしまう。
ちなみに、お義母さんのファミリアになったのは、トラジマリスの
シマリスではなく、ニホンリスにトラジマがある。
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