第15話

「それでですね、今日は他にもお話がありまして」

「お話ですか?」

「ええ、それはですね」


カトリーヌはニコニコしながらこちらにとあるお願いをしてくる。


「実は今とあるモンスターが異常発生してまして近日中に討伐、殲滅しようという事になったのです、そこで是非ともタチバナ様にご参加して頂きたいのです」

「なるほど…」


ふーん?それだけで俺の様子を伺ってたとは思えない、まだ何かありそうだな。


「モンスターの名はトックスと言われる翼を持ったスネークの様なモンスターなんです、空は飛べないんですけどね」

「翼があるのに飛べないんですか?」

「ええ、古代では飛んでいたそうですが現在のトックスは飛べません」


そう言う風に進化したというか退化したの方が適切か?


「しかし厄介なことに凄まじい程繁殖能力が高いのです。定期的に異常繁殖するほどに是非とも参加してほしいのです、これからの戦いの為にもなるでしょう」

「!?……ええ、ぜひ」

「よかった」


突然カトリーヌから敵意が向けられる、驚きをどうにか抑えて返答できたけど……代わりに引き受けてしまった、今更断れないしな…

それにしても急に敵対心を隠そうとしなくなったな、一体どういう心変わりだ?


断ったらどうなるかわかんないしやるしかないんだけど、行った先でもなにか仕掛けられそうだな、俺に対してここまで敵意を向ける理由が知りたいな。


「それではまた後日お知らせします、本日はありがとうございました」

「こちらこそ……一つお聞きしても?」


王女と喋れる機会なんて次はないかもしれない、今ここで聞くべき事はなんだ?

何を聞けばこの先有利になれる?


「どうぞ」

「…燈子についてどう思いますか?」

「ヒグチ様ですか?とても素晴らしい方だと思います、正しく人類の希望と言えるでしょう」


燈子に敵意はない…か、やっぱり俺だけ?いや、一部の召喚者にだけが正しいのか?

燈子と俺の違いを考えればわかるかもな。


「そうですか、友人として誇らしいです、ありがとうございました」

「こちらこそ、またお会いしましょう」





「あーあ、めんどくさ」


ため息とともにめんどくさいという感情が言葉にどうしても出てしまう。

理由は不明だがカトリーヌ王女は俺の事を疎ましく思っていて敵意、それも殺意を強く感じた。


もちろんふつうはそんなもの感じれないが俺には『狩猟の申し子』がある。

そのおかげではっきりと感じた、あいつは俺を殺す気だと。

やっぱり疑問に思うのがどうして毒殺をしないんだろう、というかそもそも寝てる間に殺せばいいのでは?俺ならそうする。


「出来ない理由…っ、わからん」


今までは殺す価値がないと思っててやってこなかったが、最近になって殺したくなったとかか?なら今度から警戒した方が良いかもしれないな。


本当『狩猟の申し子』さまさまだななかったらもっと早くにくたばってたかもしれない。

知らないどっかの誰か、ありがとう、感謝する。


「…夜動くか」


そろそろ動いても良いかもしれない、気になる事をこのままほっておくのは良くない気がする。

盗み聞きしに行こう、これが一番手っ取り早い。

となれば……


「夜まで待機かな」


静かに夜を待とう、彼らが夜に集まってるのはわかってた、これまで『狩猟の申し子』の力で見てたから。

今までは放置してたけど今日は行くべきだろう、おそらく俺が聞きたいことがここで聞けるんじゃなかろうか。





「スニークミッション開始ってか?」


窓から外に出て別の場所から再び城に侵入するのが一番良いと見た。

いつもサボり魔の執事が一階の窓を開けて寝てるからそこから侵入できるはず、今日に限って働いてるとかやめてくれよ、お前はいつも怠惰で居てくれ。


「よし、降りれた……人影も無し、と」


さて……どうやら今日も空いてるみたいだ、後は寝てさえいてくれれば完璧なんだが。どうだ?


「…………ぐ~」


腕を組んで椅子に座りいびきをかいて気持ちよさそうに寝ている、こりゃ起きそうにないな。


「…お邪魔しまーす……」


少し埃被った部屋に入り扉を開ける前に『狩猟の申し子』の力で確認する。

敵影無し、誰にも見られてない今がチャンス!


「お邪魔しましたー…」


ここからドでかい大聖堂に向かおう、大聖堂は一回中央にあるが俺は一回も行ったっ事がない。

というかこういう場所があると教えられたが同時に入ってはいけない場所だとも教えられた為よくわかんないというのが正直なところだ。


何事もなくたどり着けるだろうか?


「着けちゃったよ」


あまりにも人がいない、まるで廃墟を探索している様な気分になってくる。

いつも廊下を巡回してる奴らも今日に限っては0。

明らかな異常事態なのは間違いないだろう。

恐ろしさ感じるんだけど、そんな事思っててもしょうがないので大聖堂に侵入しよう。


「入れそうな場所…は……上か」


上を見れば壁の上側が開いており大聖堂中に通じているのがわかる。

ここからなら入れると思うが登るのが大変だな……


「やるしかないんだけどねぇ…気合いだ気合」

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