第14話
「こちらです」
明らかに他の部屋より装飾されていて黄金がこれでもかと使われている部屋の前に俺は来ていた。
扉が開かれメイドさんが先に入って行く、俺もついていった方が良いんだろうか?
「カトリーヌ様、タチバナ様がご到着しました」
「あら?どうぞそちらの席に」
座るように言われた席に着く、互いに向かい合う形になる。
カップに入った飲み物を一口、カトリーヌは優雅に口を開く。
「此度の件についてお聞きしたいことがあります、魔絶の鐘を鳴らし異界現象を止めたのはタチバナ様で間違いありませんね?」
「異界現象?」
どうやらあの奇妙な世界の事を異界現象と言うらしい。
カトリーヌはこちらの目を見ながら異界現象について説明を始めてくれる。
「異界現象とは、現実の一部を再現して偽物の世界を生み出す、魔ノ者が引き起こす事象というのが通説です。実際の所はどうなのか、定かではないですが古くからそう伝わっています。そして異界現象を放置すると世界が逆転します」
「逆転?」
「ええ、現在我々がいる世界は消え魔ノ者に作られた世界が本物になるのです。 難しいかもしれませんが現実が空想となって空想が現実となるのです、全てが置き換わると言えばわかりやすいでしょうか?」
「逆転した場合その世界は消滅します。また、偽物の世界は魔ノ者に支配されています、天候や大地、世界の改ざんなどお手の物、本来であれば止めるのはかなり難しいのですが今回は運が良かったと言えるでしょう」
かなり難しい話だが現実世界と作りあげた世界が存在して、現実世界は俺が今いるここ、偽物の世界はエクトロスが作り上げた空間が歪んでた世界って事か。
んで、エクトロスは作った偽物の世界を現実世界に、元ある現実世界を偽りの世界に入れ替え消滅させようとした訳か。
「しかし、今回魔ノ者が選んだのは魔絶の鐘が存在する街でした。異界現象の逆転を起こす為に消せなかったのでしょう。タチバナ様はうまく弱点を突きましたね、素晴らしいです」
「どうして消せなかったんですか?あれがなければ」
俺が話している途中にカトリーヌは被せる様に答えを話始める。
「あれがなければ魔ノ者の作戦が成功していたのに、と思いますよね?
これには理由があるのです。まず、逆転現象を引き起こすためにはいくつかの条件があります。
一つ、表の世界と同一でなければならない、今回で言えば魔絶の鐘を消してしまうと世界が逆転しないのです。
二つ、常に裏世界に存在しなければならない、何処か別の世界に逃げるのはダメ、という事です。
三つ、規模にもよりますが逆転するには大体十日ほどかかります」
なるほど、でも話を聞いてて疑問が湧いてくる、どうしてエクトロスは異界現象を引き起こしたんだ?
なぜなのかカトリーヌに聞けばわかるかもしれない、そう思い俺は疑問を投げかける事にした。きっと答えを知っているはずだ。
「こうして聞くとあまりメリットがないような?確かに範囲内の人間を始末できるけどそれをするならもっと簡単な方法がある気がします」
「時間をかける程のものではない、とお考えなのですね」
「ええ」
「実はもう一つ特性があります、逆転して表となった場合、現実でも世界の改ざんが可能となるのです。今回で言えばあの街の範囲内であれば好きに世界の改ざんが出来ます。」
「自分の領域ができる…」
現実改変が出来るようになるって事だよな、無法が過ぎないか?
どこまでできるかわからないけれど地面とか天気を自在に操れるだけでも無茶苦茶だぞ。
エクトロスってこういう事が出来るくらいには強かったんだな、不意を突いて正解だったか。
「ご理解いただけた様で何よりです」
「はい、ありがとうございます」
カトリーヌは説明をし終え飲み物を一口、舌を潤わせてから再び口を開く。
「それで、どうやって裏世界、異界に侵入したのですか?」
「さぁ?気づいたらですね」
「そうですか」
「お力になれず申し訳ないです」
にこやかな笑顔、しかし瞳の奥はこちらを疑っている様にも見える、本当にわからないんだけどな。
カトリーヌは視線を横に向けながらわざとらしく今思いついたようなしぐさをこちらに見せながら俺と再び目を合わせる、その瞳に疑いの感情は見えなくなっていた。
…………さっきから時々敵意をカトリーヌから感じるんだが俺は何かしたか?
「そういえば異界でヒグチ様以外に人を見ませんでしたか?」
「ヒグチ?…燈子か。ええ見ましたよ、黒フードの奴、顔も見たんです」
「顔も?それはどのような」
えらく食いつくな、そんなに大事だろうか?…敵の情報だし気になるのは当然か。
俺が勘ぐりすぎてるな、こういうのは本当に良くない、やめよう。
「顔は…まるで悪魔の様な奇妙な顔をしていました、角が生えてて」
「悪魔の様な?」
「ええ」
カトリーヌは困惑した表情をした後、失敗した様な顔し、それを隠す様にお茶の入ったカップを口に着け表情を隠そうとする。
「そう…ですか、では異界現象を起こした側だったのでしょうね」
「そうですね」
実際は人間だったけどな、こいつさっきからポーカーフェイスしてるけど内心焦ってるのが見え見えなんだよ。
いや待て、そもそもこの表情は本当か?俺にわざと動揺を見せてるんじゃないか?
それを見破れるなら危険と判断されて今すぐ殺されるとか…
考えすぎと言いたいけどこの世界に来て最初から今日に至るまで嫌な予感と妙な胡散臭さそれからあんたの敵意がずっと付きまとってくるんだよ。
やっぱりずっと何かを隠してるんだよな、これじゃ信用したくても出来ない。
こいつら何を企んでるんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます