第13話

エクトロスを倒した後、俺は長い螺旋階段を降りて行く。

下には複数見え神父とシスターの様な人が見える。

おそらく俺は元の世界に戻ってきたんだろうな、しかしなんだ?何故かこちらを見て驚いている様な…?


「し、し、侵入者ぁぁ!」

「ちょっと待って!違う!いや、違わないけど違う。話せばわかる!」

「動くな!」

「いや!…もういいよそれで。はぁ」


そうじゃん不法侵入者じゃんか!何やってんだおれぇぇぇ!?普通に隠れて出ればよかった…ああ、もうこれはダメだ大人しく捕まろう。本当に今日は厄日だ。


「畜生…おお、神よ、くたばりやがれ」





「ふっ、ふっ」


今日の俺は訓練場で剣の素振りをしていた。…昨日、俺は塔で捕まった後に走って駆け付けた燈子にどうにか助けてもらった。

ちゃんと説明をしたがいまいち理解してもらえず出禁になってしまったのだが。

まあ、牢屋に入れられなかっただけマシだな。


「ふー、はぁ!よし」


素振りを終え朝食を食べに部屋に戻ろうとすると話し声が聞こえてくる。

噂話だろうか、二人の女性が話をしている。


「ねえ、きいた?」

「何を?」

「メイドさんが殺された話」

「なにそれ、こわぁ」


ふーん?物騒な話だな、これもゾルノードの仕業なのだろうか?

それとも別の何かの仕業か。


「華ちゃん、仲良かったからショックで寝込んじゃったって話」

「ヤッバ、かわいそう」

「ねー」


そんな話を盗み聞きした後、ふと前を見ると食べ物を持っておそらく俺の部屋に向かうウェインの後ろ姿が見えた。


「ウェインさん?」

「おや、こちらにいらっしゃいましたか。今朝食を部屋に運ぼうとした所でございます、そろそろかと思いまして」

「ナイスタイミングですよ」

「よかったです」


ウェインを見ているとなにやら普段と違う風に思う、まるで右肩をかばっているかの様に見える。

いやそもそも普段飯持ってくるとき右手で持ってるよな?記憶違いか?


「ウェインさん肩を痛めてるんですか?」

「ええ、ぶつけてしまいまして。こちらをどうぞ、失礼します」


ウェインは朝食を俺に押し付け足早に去って行く。今聞かれたくないような事を聞かれた顔をした?

右肩…《何か心臓と喉を刺されてたらしいよ》…黒フード?昨日の事だ詳細に覚えている。

確かに黒フードの心臓と喉を…別の奴は肩も刺したよなその後気絶させた訳でそいつが生きててもおかしくはない。


「…………まさか、な」


いやいや、あまりにも突拍子がない考えだ。仮にそうだとして自ら召喚しといて殺すとか意味が分からんだろどんな理由だよ。

いくら姫様とかが胡散臭いからってその考えは流石に失礼すぎる。

ウェインが俺を殺そうとする理由なんてないだろ。


…いや、待てよ、あるな。そうだスパイって線はどうだ?ウェインがゾルノード側で召喚した人間を殺そうとしてるスパイの可能性が高い。

というかウェインが黒フードならそれしか考えられない。

どの道俺は狙われてるんだ、全部警戒することにすればいいんだけど。


「どうあれ警戒は必至。あぁ、めんどくさ」





朝食を食べながらステータスを見る事にする、新しいものが追加されていたので調べたいしな。

ちなみに毒とかは気にしないことにしている、毒で殺すならもっと早く殺してるだろうし、なにより『狩猟の申し子』で分かるからな、心配の必要がない。


「さてと」



立花彦斎

種族・ヒューマン

加護・狩猟の申し子 殺意の使徒 

権能・■■悪魔との契約(蛸)


『剣使い』『軽業』『急所狙い』



新しい加護『■■悪魔との契約(蛸)』だ。こいつはどんな力なんだろうか?



『■■悪魔との契約(蛸)』悪魔の力、その一端を行使することが出来る

 魔の触手を使用することができ、触れると相手の力を吸い取れる



蛸か、どう考えてもエクトロスの力だよな?あいつこんなのを使えたのか。

てか、権能?新しいのが追加されてる…

確かに加護って感じじゃないし殺して力を奪った、と考えた方が自然だよな。


「これが魔の触手…」


嫌な雰囲気を漂わせた紫色の触手が一本現れる、二本目を出そうとすると頭に痛みが走り冷や汗が吹き出る

…二本目はやめておこう、俺はそう心に決め触手をしまう。


「いまので触れたら力を吸い取れるって訳か」


冷や汗を拭きベットに寝っ転がり心を落ち着かせる、この力はバレてもいいんだろうか?悪魔の力は迫害される可能性もあるよな。

…ステータスを誤魔化す方法ってないのかな?ないよなぁ。


「…暇だな」


俺はしばらくの間城の外に出る事を禁じられている、理由は昨日の事件のせいだ。

あんな大規模な事が出来るやつが襲ってきたという事で外出禁止にされてしまったのだ、召喚された人間、全員外に出られないそうだ。


さらに事件の当事者の俺はこの後事情聴取みたいなのを受けなければならないそうで正直凄く嫌だ、かなり面倒くさい。


この国が信用できると確信は持てないし、信用できるとしてもスパイがいる可能性がある訳で、さらに言えば『■■悪魔との契約(蛸)』これが存在する事で俺が迫害されるかもしれないと考えると持って来てもらった歴史書にも手がつかない。


「タチバナ様」

「はい、今行きます」


部屋の前から女性の声が聞こえる、おそらくこれから事情聴取が行われるのだろう。

扉を開けた先にはメイドさんとその横には騎士が二人仮面を着けていてどんな人物なのかわからない。


「こちらに、ご案内します」


何処に連れていかれるのだろうか?どんな話を誰とするのか、そんな事を考えながらメイドさんについていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る