第11話

「んで、お前らなんなんだ?この異常事態もお前らのせいって事でいいか?」

「…」

「無視かよ、つれないな」


相手は二人、およそ五メートル。こちらを警戒し手に持ったナイフを前に突き出しながら詰め寄ってくる。

こちらは素手でナイフを持った人間二名を対処しなければならないという事実に少々気が重くなるな。

だがこいつらを逃がす気はない、全員ここで仕留めなければ面倒事を招くことになるのが想像につく。

確実に屠るためにも静かに動くべきタイミングを待とう、敵が走り出すその瞬間を狙う為に。


「っ!」

「マヌケが」


飛びかかってきた一人目の顎を右手で殴りよろめかせる、一瞬意識が飛んだ敵を反対の手で首を掴み二人目に投げつけ相手の視界を塞ぐことを狙ってみる。


するとこちらの予想通り二人目の黒フードがしゃがんで躱そうとする姿が見えた。

俺はその姿を見た瞬間即座に右足で相手の顔を踏みつけ地面に叩きつける。


顔を踏みつけられた敵は手からナイフがこぼれ意識を失う。

俺は相手の手元から離れたナイフを持ちそのまま喉、次に心臓を刺し、投げ飛ばす。そして残った最後の敵に向かって声をかける。


「おい、質問に答えろ」

「…」


反応がないな、どうしたものか。…本当はやりたくないが仕方ない。

相手の右肩にナイフを刺し一気に引き抜く、そして再び黒フードに問い始める。


「グ…」

「反応がないな、質問に答えろって言ってるんだが?お前に拒否権はない」

「…」

「もう一回やられたいか?」

「…」


黒フードに向かってもう一度ナイフを突き立てようとした次の瞬間、背後から高速で何かが迫ってくるのを感じた、黒フードの頭を蹴りつけ気絶させるのと同時に振り向くとそこには焦った表情のした燈子が凄まじい速度でこちらに向かって来ていた。


「なんだ燈子かよ……おーい!燈子、どこ行ってたんだよ」

「彦斎!早くこっちに」


突如として視界が歪む、いや違う?視界じゃなくて空間が歪んでいるのか?

どんどんと歪み、空間が悲鳴を上げているかの様に鈍く嫌な音が鳴り響く。


「っ!聞け、今私達は何者かに攻撃を受けて異空間に飛ばされている!合流させない様に近づくとランダムに別の場所に飛ばされてしまうんだ!そして私達をここに連れてきた何者かを倒さなければ異空間からの脱出は不可能だ。とにかく逃げ回るんだ、私が必ず倒すから。」


燈子の言葉を最後に気が付けば廃れたボロボロの教会の中で倒れていた。

瞬く間の瞬間移動、移動した感覚がまるでなかった。

空間が歪んだと思ったら次の瞬間には別の場所、なんとも奇妙な感覚だ。


「とりあえず、合流は不可能っと」


どうするべきか考えるため複数あるボロボロの椅子の中から比較的マシな物を探し出し座って少しだけ考えよう。


「よっと」


敵を見つけ出す必要があるがそれは得意なので問題はない。

ただ見つけ出した相手を倒すことができるのかって所だな、空間操れる相手を殺せるとは思えないんだが…

さらに言えば燈子の焦り具合からして結構ヤバそうな相手なんだよなぁ。

…意外と大したとないみたいな展開来ないかな。


「まあ、頑張りますか!どうにかならなくても気合でどうにかしよう、うん!」


自分の頬を叩き気合を入れ、俺は教会を出て探索に出かけに行く。

外に出て空を見ればあちこち歪んだり雲が瞬間移動したり巻き戻ったりしているのが見える。


「この世の終わりみたいな世界だな、気味が悪い。さっきまで全然気づかなかった」


俺は早く帰りたいと心の中で思いながら歪んだ空の下、街路を歩いていく。

今日、一日中歩いたんだけどもまだ疲れないのは訓練のおかげだろうか?

ちゃんと成果がでていてなによりだ、勉強はともかく訓練は怠らなかったからな。


さて、何処に行こうか?むやみやたらに歩いてもどうにもならないし何かありそうな場所は…俺はその場で一周し何かないか見てみる事にした、すると大きな塔と鐘が目に入る。

確か魔を払う鐘だったか?何かあるかもしれないな、他に行きたい場所もないし一旦行くか。


「それに高い建物から見下ろしたら何かわかるかもしれないしな」


特に何の問題もなくたどり着いてしまった……行かれても特に問題はないという事だろうか?

見上げてもてっぺんまで見れない程大きな塔、入り口はそこらの建物と同じくらいのデカさがある扉が見える。

これはどうやって開けるんだろうか?人間が入ろうと思っても筋力とか足りないだろ。完全巨人仕様なんですけど…


不思議に思いながら扉に近づき押してみようとして触れた瞬間地面が揺れ始める、慌てて手を放し後ろに下がると扉がゆっくりと開き始める。


「触れたら開くシステムって事?」


扉が地響きの様な音を立てながら開いていき、完全に開く。それと同時に音が止まると暗くて見えなかった塔の中がライトアップされよく見えるようになる。

教会の様な内装に中心部には螺旋階段が見える、どうやらここから頂上まで登るらしい。


俺は登り切るのは大変そうだな、という思いと同時に何があるんじゃないかのかという期待感を胸に秘めながら登っていく。

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