第10話
「ここがオークションやってる場所か」
ご飯を食べ終えた後、俺と燈子は装飾品や服を見て回り、帰る前にオークション会場に足を運んでいた。
オークション会場では現在進行形でオークションが行われており、今はとある指輪を競っている様だ。
指輪の名は「天よりの恵み」と言うそうで身に着けていると幸運を運んできてくれるらしい。
「十万ゴールド!」
「二十万ゴ-ルド」
「二十万ゴールド入りました!」
「百万ゴールドですわ!」
ざわざわと落ち着かない様子で周りが驚きと困惑しているのがわかる。
俺が百万人間に視線を向けると見たことがある人物だった。
百万の人、門の前で揉めてた人じゃないか?やっぱり金持ちだったのか、あれだけ揉めてたのにちゃんと入れたんだな。
「百万ゴールドか」
「すげー高いのはわかるけどどのくらいかわからん、燈子はわかるか?」
「さあ?基本的に無料だからな私は、お金が溜まっていく一方で使わないから何にどのくらい掛かるかいまいち理解できていないし、仮に払うとしても私は払わないというか払わせてくれないのでな、本当に良くわからないんだよ。」
そうだ、ここに金持ちより上の特権持ち女が居たわ。てか基本的に無料だと…?
燈子にそんな特権を与えるほど重要視してるって事かサンタル王国は…
「に…二百万ゴールドォ!」
「三百万ゴールド」
「なぁ!?」
あいつ、おっさんが冷や汗かきながら言ったのに冷静にガン無視で即座にプラス百万積みやがった、性格が悪いな。
おっさんも驚きすぎて口をパクパクしてるよ、かわいそう。
「えー…三百万ゴールド、ナスティリア様が落札です」
「行くわよ」
「はっ」
ナスティリアと呼ばれた少女はメイドと五名の騎士を連れてどこかへ去って行く。
やっぱりとんでもねえ女だ、今おっさんの事鼻で笑ったぞあいつ。
「あまり面白そうな物はなさそうだな、彦斎どうする」
「そうだな、帰るか」
面白いものは見れた、他は…気になる物はなさそうだ、まあ気になる物があっても金持ってないからなぁ。
欲しい物が出来た時の為に金を稼ぐ方法を後で聞いてみよ。
俺達はデパートを後にし馬車のある館に戻るために来た道を戻っていく。
他にも美味しそうな飯屋あったしまた来たいな…
デパートを出て帰り道の最中、周りを注意深く見てみれば薄暗い路地にボロボロの服が見える、あれは子供だろうか?
綺麗な街並み、騒がしい街の裏は貧しいのかも知れない、臭い物に蓋をするというのはどこでも変わらないものなのかもな。
夕暮れ時、太陽の日が沈もうとしている、今日はいい休息日になったな。
ここまでの生活は訓練ばかりだったがそれも終わったしこの先は自由にやらせてもらおう、気になる事もあるしな。
今後の予定を頭の中で計画しながら歩いているとふと違和感を感じ横を見る、隣に燈子がいない。
慌てて周囲を見るも燈子が見当たらず大きな声で呼んでみる事にした。
「燈子?」
周りを見て更に気づく人が誰一人として見当たらないことに、さっきまであんなに賑やかだったのに音一つ聞こえないという事実にこの街に来た時の嫌な予感が的中して俺は憂鬱になりそうになる。
「はぁ、今日は楽しいまま終われると思ったんだけどな」
頭を掻きながらどうしようか悩むな、とりあえず今来た道、デパートの方に戻る事に決め静かに警戒しながら歩いていく。
どれだけ歩いても冷たい風が吹くだけで人の気配など微塵も感じない。
どうしようか考えていると背後から気配を感じる、ここは気づかないふりをしながら焦らず相手が近づいて来るのを待とう。
俺は今武器を持ってないから襲われたりしたら対応が難しい、大したことない奴だといいんだけど。
相手は警戒してるのか徐々にゆっくりと近づいて来る、気配は三つ。
さっさと来ないかな、面倒くさいんだけど。俺はそんな事を考えながら歩き始め一時間ほど経過。
もう街のほとんどの場所を歩き回ったんだけどまだこないのか?敵意を感じるんだけどな。
「ふぅ、しっかし人がいないな、何なんだこれ?」
などと言って油断してるふりをしていたその時、背後から急接近してくる何かの気配を感じた。
ようやくこちらが油断しきってると判断できたのか接近してきた奴を振り向きざまに右手で思いっきり顔面を殴りつけそのまま地面に叩き付ける。
「遅いんだよ、バカがよ!」
「!?」
地面に叩きつけられた黒フードはそのままピクリとも動かなくなり気絶した様だ。
残りの家の屋根に隠れている二人にも声をかける、逃げられると面倒だし軽く挑発して出てくるように誘導してみよう。
案外簡単に引っ掛かるかもと俺は考えつき実行する事にした。
「さっさと残りも出て来い、長時間歩かせやがってよぉ。逃げれると思ってんのか?来いよ、恥ずかしがり屋のマヌケ共」
「…………」
お、出てきたな残りの黒フード二人、迅速に処理して話を聞きだしてやる。俺は心の中で静かに気合を入れ直した。
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