第9話

白を基調とした屋敷に馬車を止め、そこから燈子に何処かに連れられて行く。後ろには馬車に居た二人がついてきているが燈子はガン無視である、あれ放置でいいのか?


「なあ、後ろのふたっ!」

「気にするな、ほら行くぞ」


口を手で押さえられてしまった。燈子はないもの扱いしたいらしいので俺も気にしない様にしよう。分かったという意味を込めて燈子の肩を軽く叩く。


「っむ、ぷはぁ。わかったわかったよ」

「それで良い、ついてきてくれたまえ」

「はいはい」

「はいは…」

「一回でいい、だろ?はい」


ふと周りを見てみるも人しかいない事に気づく。エルフ的なの期待していたが見当たらず残念だ。

確かいるんだよな、人間以外の種族が…ちゃんと話を聞いてなかったから覚えてないけどそう言ってたはず。

そんな事をボケっとしながら考えていると唐突に燈子に手を握られる。


「こっちだ」

「あ!引っ張るなって、どこ…お?でっ…かぁ。なんだこの建物」

「元の世界でいう所のデパートと言えばいいのだろうか」

「そういうね、行こうぜ」


結構面白そうだな。さて建物の中はどんなもんかな、美味しい食べ物とかこの世界特有の物を見れたら嬉しいな。


建物の中を見た第一印象はとても近代的だなと感じた。

エレベーターやエスカレータなど存在し明らかに外と比べて技術レベルの差がある事がわかる、そしてそれより気になるのは…


「…明るいな、照明とかないのになんで?」

「魔法だよ、魔法明るくしてるんだ。地面を光らせてるのも魔法だぞ。エレベータもエスカレーターも魔法で動いているらしいな」


魔法、自分が使えないから完全に存在を頭の中から抹消してたわ。そういやあったなそんなのも便利だな魔法、俺も使いたかったぜ。


「でだ、こっちにな面白いものがあると聞いたんだ」

「面白いモノ?」


目的地に行くまでにはご飯を販売してる店やお土産とか武器、防具屋など様々な物を販売している様で全十階の建物全てが何らかのお店らしい。


売るものとか被らないのかな?ちなみに五階はオークション会場だそうで珍しい物とか売ってるらしい、後で見に行こうっと。


ん?燈子に腕を掴まれ横を見る様に促されたので見てみるとそこには和食屋っぽい看板が見えた。


「ここだ、ふむ、聞いてた通りだな」

「ん、んんん?どういう事だ」

「ふふ、驚いたか?」

「あ…ああ、驚いたけど…」


どうして食品サンプルがあるんだ?こんなモノがこの世界にあるなんておかしくね?世界観が壊れるだろ。

あ、良い匂い懐かしいくて旨そうな飯の良い匂いだ。燈子に聞こう、聞いた方がいいはずだ。


「これはいったい?」

「私たちより前に召喚された人が運営しているらしいぞ、私も初めて聞いた時驚いたよ」

「召喚?俺達以外にもいるのか?………………」


………………………………なるほどね。


「どうした?あまり嬉しくなかったかのか?」

「………え!?いやそんな事ないってスゲー楽しみで待ちきれないから早く入ろうぜ」


店内に入ると木で出来たメニュー一覧が壁に貼られており、カツ丼、鰻重、オムライス、あ、和食定食とかある。まじで日本にありそうな店なんだけど。


「いらっしゃいませー、二名様でよろしいでしょうかぁ?」

「はい」

「ではご案内します」


店員に店の中を通される、店内は結構賑わっていて…というか満席じゃね?

つか店内広!こんなにデカかったっけ、外から店を見た時ここまでデカくなかったと思うんだけど。


「こちらにどうぞ、ご注文がお決まりになったらこちらのベルをどうぞ」

「彦斎?どうしたんだ?」

「いや、凄いなって思って…よし、メニュー見よ…う」

「?」

「いや、無視無視…」


近くの席に鎧女と金髪ちゃんが座るのが見える、うっわこいつらここまでついてくんのかよ。

勘弁してよ…あれは忘れる事にしてメニューに集中して真剣に選ぼう。


「いろいろなものがあるな、どれにするか悩む所だ」

「だなー、………俺決めたわ。和食定食にする」

「じゃあ、私もそうしようかな、ベル鳴らすぞ」


燈子がベルを鳴らす、待つ事数分が経過して店員が到着、和食定食を注文し燈子と話しながらしばらく待っていると。


「お待たせしました、こちら和食定食です」

「おお!」


ご飯、味噌汁、焼き鮭と卵焼き、きんぴらと漬物。思ったよりシンプルだけどそれが良い。…あーうまいなぁ、日本に帰りたくなる味だよ。


「美味しいな」

「ありがとう、連れてきてくれて」

「喜んでくれて何よりだ」


俺と燈子は楽しく食事をしながらこの後どうするかを話し合いながらゆっくりと楽しんだ。

鎧女と金髪ちゃん物凄い形相で睨まれながら。


「はぁ…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る