第8話
城を出て馬車に一時間ほど揺られていく、今日は快晴、空は澄み渡っている。
そんな心地よい空が広がる一方で馬車の中の空気は完全に地獄と化していた。
燈子は不機嫌そうな顔をしながら目の前の人物を不愉快そうに見ている。
一方その見られている鎧を纏った人物は俺を睨みつけており、ひっじょーに居心地が悪い。
「おい、彦斎に対してなんだその態度はいい加減にしろ。そして今すぐ帰れ」
「まあまあ」
「いえ、なんでもございません、気のせいでは?後帰りません」
笑ってるけど目が笑ってねぇ、この女怖すぎだろ。
鎧女の隣に居る一見穏やかそうな金髪の女も燈子にバレない様に睨みつけてくるしさぁ。
俺は居心地の悪さを覚え、とても帰りたくなる。
「護衛は要らないと言っているだろう、私は二人で出かけるんだ、消えろ」
「言葉が強いって燈子、落ち着けよ」
だから名前読んだくらいで睨むなよ!こいつら怖すぎるだろうが。
一体何なんだ?俺は不機嫌そうな燈子に恐る恐る聞いてみる事にした。
「えっと、いつ知り合ったんだ?この二人と」
「ん?この世界に来て次の日かな、これから一緒に行動する仲間として紹介されたよ、護衛もかねてだそうだ。そんなもの要らないと言っているのに」
「必要です、ヒグチ様。いいですか貴方様は…」
「黙れ、私は今彦斎と会話してるんだ。邪魔するな」
怖いって完全にキレてるじゃん、なんでこんなに怒ってるんだ燈子は?
というかこんな感じで喧嘩しててモンスターとの戦いに影響でないのか心配になるんだけど。連携大丈夫そ?
「あー、今日ってどこいくんだろうなぁー、楽しみだなー」
「ふふ、期待に添う事ができると思うぞ」
「…あ、後どのくらいでつくのかな」
「おそらく、後十分もかからないだろう」
「そっかぁ、ありがと…」
ふぅ、見ないふりしてとにかく話逸らそう、それしかねえ。
とりあえずちょっと燈子の機嫌が良くなったからこのままキープしたい所だな。
そして代わりにあちらの機嫌が最悪だけどもう知らん。あー、早く解放してくれ………
☆
少し経ち、人や馬車が長い列を作って並んでいるのを見えそこの横を俺達が通過していく。並ばなくていいのか?
「なあ、並ばなくていいのか」
「特権と言うやつだ。並ばなくとも通れる」
「あれが行ったら俺達か」
「うん、…少しかかりそうだな」
そりゃ便利だ、まじで素通りじゃん。荷物検査もしない訳?
前にある馬車凄い豪華だな、周りにめっちゃ護衛いるし有名人かな?などと思っていると言い争う声が少しだけ聞こえてくる。
トラブルだろうか、声が聞き取りずらいが揉めているのは間違いないだろう。
何で揉めてるんだろ?早くこの馬車から出たいから早く解決してほしい所だ。
「…」
「……」
「………」
「…………」
どうにかしてくれ!燈子はこっちをずっと見てるし鎧と金髪は睨んでくる訳でここ苦しいよ、誰か助けて。俺は脳を空っぽにして目を瞑り待つ事にした。
どのくらい経っただろうか馬車が動き始め話し声が聞こえる、目を開けると何やら鎧女が門番?ぽい人と話をしていた。あ、戻ってくる。
「おはよう、彦斎」
「ああ、おはよう」
なんかニヤニヤしてるんだけど、何か良い事があったんだろうか?
こっちとしては機嫌が良いってのはありがたいけど。
「ヒグチ様、お待たせしました。これから町の中に入ります」
「そうか、頼んだ」
「はい」
どうやら町の中に入れる様だ、揉め事を起こしていた人達はもういない。
先に行ったのだろうか?大きな壁が近づき門をくぐり抜けたその先には石造りの家が並んで見え石橋の下には川が流れており船が通っているのが見える。
奥の方には塔の様な物があり一番上には大きな黄金の鐘が見える。
「あの鐘は?」
「なんだろうな、気にしたことなかったな」
「…あれは魔絶の鐘です」
金髪ちゃんが教えてくれそうな雰囲気を出しているぞ、教えてくれ。
「あの鐘を鳴らすと魔の力や呪いを払うことができるんです、朝昼夜の三回、鳴らされます、とてもいい音色を奏でるんですよ」
「そうなのか、私は聞いたことがないな」
「へぇ、意外だな」
「この街には時々来るが長時間はいないから聞く機会がなかったんだ。だが今日は聞けそうだ」
結構人が多いんだな、馬車から外の街並みを見ながら進んでいく。俺は楽しみに思いながらも何処か嫌な予感がしてならない、そんな気がしていた。
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