第3話
「今、開けるぞ」
ノックに対して返事をして扉を開けるとそこにはやっぱり燈子とメイドが立っていた。何事だろうと思って首を傾げていると燈子が近づいて来る。
「彦斎!良かった…」
そう言い力強く抱き着いてくる燈子、その眼には涙の様な物が見えた気がした。
隣に居るメイドがお辞儀をしながらこちらに声をかけてくる
「ではこちらでお待ちしています、ごゆるりとどうぞ」
そう言い表情を一切変えず、扉をゆっくりと閉めていく。…ベットに座らせて話を聞こう。
「おい、とりあえずベットに座れ。な?」
「うん」
「ちょっと待ってろ」
無理矢理ベットに座らせて、飲み物を持ってこよう。
この部屋に飲み物はないからベルを鳴らして持ってきて貰おう、ベルを軽く押しウェインを呼ぶ事にした。
ベルを押すと綺麗な音色が鳴り数十秒後、ドアからウェインの声が聞こえてきた。
扉を開けると綺麗なお辞儀をしながら佇んでいた。
「暖かい飲み物を二つお願いします」
「承知致しました、種類はいかがなさいますか」
「ココアっていう飲み物が僕らの世界にはあるんですけどこの世界にもあります?」
「はい、存在します。ココアですね、すぐに持っていきますので少々お待ちください」
俺の言葉を聞きお辞儀したのち素早く去って行った、早すぎる人間の速度じゃないだろ。ってそんな事に気を取られてる場合じゃなかった。
俺は急ぎ足で部屋の中に戻り燈子のいるベットに向かうとそこには…
「燈子?」
ベットで顔を抑えうずくまっている燈子がいた、頬が赤くなってるのが見える。
もしかして泣きながら抱き着いたのが今になって恥ずかしくなったのだろうか?
これは見ないふりして話を聞こう。
「燈子、どうしたんだ?何があった」
「ただ…一人になって、少し怖くなって会いたくなっただけなんだ」
ベットから起き上がり少し儚げに笑う燈子、ここまで弱るのは久しぶりに見たな。
どうしたものか、…ああ、そういう事か。
不安になってるみたいだし連想させるような事は言わない方が良さそうだ、話を逸らそう。
「そうだ、なあ燈子もこの指輪貰ったか?」
「うん、これでステータスが見れる様だな、メイドがそう言ってたぞ」
「ステータス見せてくれないか」
「もちろん、構わない。好きなだけ見てくれ」
そう言いながらステータスを出しこちらに見せてくれる。さて、他の人のステータスはどんなもんなのかな?
樋口燈子
種族・ヒューマン
加護・『退魔の加護』『矢避けの加護』『火の神の加護』『鬼神の加護』『日照の加護』
『万才の達人』『第六感』『一騎当千』『戦いの詩』『解析』
強いな、俺と比べても明らかに数も多いし個人差ありすぎだろ。
どれもこれも強そうな名前ばっかりでうらやましいな、とりあえず加護から見るか。
『退魔の加護』魔を滅する力を得る ■■■■■■■■■■■■■■■■
『矢避けの加護』あらゆる投擲物・遠距離攻撃は全て自ら逸れて行く
『火の神の加護』火の神の加護 火の無効化 神の力の一部を行使できる
『鬼神の加護』鬼の神の加護 筋力・脚力などあらゆる身体機能が強化される。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『日照の加護』日が出ていると能力上昇 日が強ければ強いほど能力の上昇幅が上がる 火が沈むと加護が機能停止する
化け物か?本当に同じ人間の能力かよ、チーターだろこいつ。
ドン引きしながら燈子の方を見ればよくわかっていない様な、とぼけた表情をしていた。
美人で様になるのが腹立つ、容姿の権化がよ!
「どうした?何かあったか」
「いや…何も。まだ見たいんだけど良いか?」
「もちろん、構わないぞ」
『万才の達人』あらゆる才能が達人まで上り詰める
『第六感』卓越した勘を持つ
『一騎当千』人数不利であればあるほど能力が上昇していく
『戦いの詩』戦闘時自身または指定対象のすべての能力を向上させる
『解析』生物・無機物・概念の情報を得れる
「ええぇ、強すぎぃ」
「?」
「いや、何でもない。見せてくれてありがとう」
「そうか、ならいいが」
あまりの強さに驚いていると再びノック音が聞こえる、おそらく飲み物を持ってきたウェインだろう。ココアの良い匂いだ。
「飲み物取りに行ってくる」
そう言いながらドアを開けるとやはりウェイン飲み物を持って来てくれてたのでココアを受け取りウェインに感謝を伝える。
「ありがとうございます」
「ココアです、失礼します」
お辞儀をして去って行くウェイン。貰ったココアを燈子に渡し不安を和らげるためにしばらく話に付き合おう。元気になってくれるといいけど。
☆
「…ふぁ」
「本日より訓練を始める!」
朝起きて飯を食べてそうそう修練所のような場所に三十人が集められ訓練をさせられるらしい。ちなみに飯は可もなく不可もなく、といった具合でとても元の世界が恋しくなる朝飯だった。
「ここに集められたものは魔法の使えない為主に前衛を務める事になる。そんな君たちを指導するのは私、デュランだ、よろしく頼む。こちらに様々な武器が用意されている、スキルにあった武器を選んでくれ。ん?スキルがわからない?」
スキルとはなんだろうか?と皆が困惑している、それを目にしたデュランは大袈裟に頭を手に当て空を見上げた後、謝罪をし始めた。
「すまない、説明を忘れていた。ステータスを開くと一番下に文字が書いてあるはずだ、『剣使い』とか『槍使い』とかなそれらを我々はスキルと呼んでいる。説明は以上だ、武器を取りにいってくれ」
なるほど。さて、俺は『剣使い』があるから剣の方がいいよな?…バカでかい剣は論外として短い剣はどうだろう?いや、盾は持ちたくないし二刀流もちょっとなぁ……このロングソードにするか。
「すまない、また忘れてしまった。もう一つ、加護の使用は禁止する、理由は加護はどれも強力なモノばかりで使っていると基礎が育たない、よって使用を禁ずる。意識して使わないと念じるんだ、それだけで良い」
念じるだけね……………お、途端に体が重くなり視野が狭くなるのを感じる。
俺も気づかないうちに加護の恩恵を受けてたって事か。
そういえば昨日見てもないのに誰が来たか分かったり、部屋の外にあったコーヒーの匂いを感じたりしてたな。
そういう事だったのか。
「ふむ、できたかな。それでは素振り始め!一人ずつ私が見て回るからな、私が辞めと言わない限りやり続ける様に」
こうして地獄の一か月が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます