第9話

私が人間椅子にされてどれだけ経ったかは、分からない。

ただ、今の現実を受け入れられず、私に対するドッキリだった夢や、そもそも私が悪夢を見ているという夢だったりしたが、現実は人間椅子にされている状況は改善していなかった。


『ピンポーン!』

インターホンが鳴り、美幸が対応している。

「はあ、何今さら」

怒号が聞こえる。

やって来たのは、一輝だとすぐに気づいた。


扉が開いて一輝が入って来る。

「ホント、ごめんな、美幸許して出来心なんだ」

平謝りする美幸は言った。

「一輝、態度で見せてよ」

揉めている2人の声が私から離れていく。


そして、遠くで美幸が感じている声が聞こえてきた。

次第に大きくなる美幸の声。

「一輝、いいわ、きて私逝っちゃう、逝っちゃう、一緒に行こ」


「逝く、逝く、逝くぅぅぅ!」

「俺も」

2人は大きな声を上げた後、声は聞こえなくなった。


私は泣いた、声も出せずに。

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