第29話 ポシェット出陣
「まず、君たちは機械兵と戦うべきではない。相性が悪いからな」
近くにあった椅子に腰を落ち着けるといつになく落ち着いた表情でキュービックは語り始める。
「女性は機械に弱いからな」
「……凄い偏見なの……」
「別に壊しに行くだけだから関係ないんだけど」
「二人とも茶々いれないの~。キツネさんの話を最後まで聞こうよ」
ポシェットが物申したそうな二人をなだめる。
「ここで問題だ。機械に弱いのは女性です、では逆に機械が弱い物とはな~んだ?」
両手でクエスチョンマークを作りながら三人の顔を覗き込むキュービック。
「……凄い偏見なの……」
「私結構メカに強いんだけど。時計とかも自分で直すし」
「二人とも答えてあげようよ~」
ニヤニヤと笑みを浮かべるキュービック。その顔は「ふふん、分からないだろう」と言わんばかりの勝ち誇った笑みだった。
「制限時間は三分です」
「っ、なんかムカつくなー」
「機械って雷なんかに弱いイメージあるよね~」
「……あとは水とか、なの?……」
「……」
三人の少女の答えを聞いた途端、うずくまり死んだ魚のような目をして沈黙するキュービック。
「え? 何? まさか正解なの?」
「……なぞなぞって程の物ではなかったの……」
ますます縮こまるキュービック。いつの間にか部屋の片隅まで移動している。
なんともいえない気まずい空気が部屋に流れる……その空気に耐えかねてポシェットが口を開く。
「や、やあ~やっぱりキツネさんは凄いなぁ~。ヒントの出し方が上手だからすぐ答えが分かっちゃたよ~」
その声に反応してキツネ耳がピンッと尖る。そしてキュービックはそのままガタンッと勢いよく椅子の上に立つと威風堂々と言い放つ。
「はははー! そうだろう! 難しい事を人に分かりやすく伝える力、これこそが軍師として必要不可欠な能力の一つだからな!」
「……面倒臭い奴だなー」
「……どうでもいいから作戦教えてほしいの……」
「ふふん、良かろう。今回作戦に利用するのは『水』と『電気』だ」
「なーんだやっぱり正解か。で、どうするの? 水系や雷系の魔法が得意なメンバーでも集めろっての?」
「浅薄! そんなチマチマとした策ではないわ!」
「ん~分からないな~。どうするのキツネさん?」
「……ここに来るまでに巨大な
「ああ、ここって雨水でも海水でも飲水に変えられる技術があるからね、シティ内で自給自足できるようなシステムになってるのよ」
「その
「……はい? なの……」
「そして町全体を水没させた後電流を流し一気に機械兵を仕留める! これぞオペレーション『水雷の道』」
人差し指を突き立てて決めポーズを取るキュービック。
「却下」
「……却下なの……」
「却下だね」
三人がそれぞれ作戦案を棄却する言葉を述べる。予想外の反応に動揺を隠せないキュービック。
「な、な、何故だっ! ま、町を壊さずに機械兵を掃討する。こ、こんな完璧な策は他にないだろうがぁ!」
「う~ん。でもその作戦って結局
「……
「そもそもあんな巨大な
「ぐ……ぐむむ!」
渋い表情で言葉を飲み込むキュービック。
「ほほ、まだまだ青いなキュービック。その策では三人は納得するまいて」
クレスタに吹っ飛ばされたはずのスクエアが足をガクガク震えさせながら会話に参加してくる。
「ス、スクエア殿!」
「ちっ……まだ動けるんだ。意外とタフだなー。で、エロヤギ爺さんも何か策があるって言うの?」
怪訝そうな表情でクレスタがスクエアに問いかける。
「ほほ、当然じゃ、わしを誰だと思うておる。幼少の頃から学問において右に並ぶもの無し、ミルウォーキー大陸随一の神童と言われた男じゃぞい」
「ふーん……」
「まず相手が完全なる機械兵と言っても人工知能はあるわけじゃ。つまり弱点など通常の魔物と同じに考えてしまえばよい。まあ色々複雑に考えてしまって本質を見失うのは経験の浅い軍師が陥りそうな思考の
「ぐむむ……」
「で? どんな作戦なわけよ?」
「名付けて『パンチラ大作戦』……ってグハァ!!」
クレスタ渾身のハイキックが炸裂する。
きりもみ状に回転しながら壁にめり込むキュービック。
「永久に
「ま……まだ何も作戦概要を伝えておらんじゃろ……」
「大体分かるわ!」
「ちょっとクレスタ落ち着いてって、ヤギさんほんとに死んじゃうから!」
「……それに
「あーもう! ポシェット! 時間ないからいつも通り私と
「う~ん。そうだね、ショーグンももうすぐ来ちゃうし仕方無いか。でもあんまり町壊さないように気を付けてね?」
「それは無理!」
「……うん。無理なの……」
「……だよね~」
結果ゴタゴタと時間だけを取られる形になったが三人の少女はメカチックシティ内で確認された反抗勢力である機械兵の元へ向かうのであった。
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