第28話 キュービックの作戦会議

痛覚治癒エスタック


 キュービックとスクエアの体を癒しの光が優しく包み込む。


「ほほぉ……これは気持ちいいのぉ。しかしこんな高位魔法を使える仲間がおるとはのぉ」


 ポシェットが呼んできたエルグランディスの一人がスクエア達の傷をあっという間に癒していく。


「ほらあんまり動いちゃ駄目だよ~。傷口開いちゃうから」

「……キツネの人もすぐ目を覚ますと思うの……」

「傷が治るまではここに居ていいから治ったら自分達で住むところ見つけてよね。この町空家はいっぱいあるからさ」


 そう言ってクレスタはパンパンと腰のあたりを叩き大きく背伸びする。


「さて……と。じゃあ私たちは先生に会いに行こうか」

「……ふふ……楽しみなの」

「――――! ごめん、ちょっと待って」


 勇んで部屋から出ようとするクレスタと巫女姫みこひめを制止するポシェット。そしてそのまま目を瞑って何かと交信する。


「うん……うん……分かった。クレスタ、巫女姫みこひめ、ショーグンと会う前にちょっとお仕事」

「げっ!? マジ~。まさかまだシティ内に反抗勢力が居たって事?」

「……強制交友フレンドは使わないの?……」

「残念だけど完全な機械兵みたい~。気は進まないけどやっつけに行こうか」

「他のエル達は使わないの?」

「……ほとんどのエル達は今所定の場所で待機してるの……今戻すのはあまりお勧めしないの……」

「あ、そっかー、ま、久々の肩慣らしには丁度いいかな」


 せかせかと出発準備を始める三人。

 準備と言っても朝食の片づけをしただけで軽装のまま武器も持たずに部屋を後にしようとしたその時……


「ちょっと待てーい! どこに行くつもりだポシェットよ!」


 白目を剥いたままキュービックが出口を塞ぐように右手を差し出す。


「わわ! キツネさん、まだ動いたら駄目だよ~」

「どこに行くつもりだと聞いているのだポシェットよ! 急に出て行かれたら寂しいだろうがぁ!」


 右目だけグルンと青目に戻り三人を睨みつけるキュービック。


「……気持ち悪いの……」

「キツネ! あんたさぁ、邪魔するならもう一回蹴り飛ばすよ」


 トントンとフットワークを刻むクレスタ。


「ほほ……何を勘違いしとるのかのぉお前さん達は」

「え?」

「私たち軍師二人がこうしてここまでやって来たのは何故だと思う?」

「(何故なんだろう~……?)」

強制交友フレンドを……助けに来たのさ、危険を冒してでもな」


 少し照れくさそうに頭をかきながら呟くキュービック。


「あ……そうなんだ……えへへ。ありがとう~」


 嬉しそうにお礼を言うポシェット。そのポシェットの首根っこを掴んでクレスタが耳元でヒソヒソと話す。


「(コラッ! ポシェット! あんまり甘い顔して居すわられたらどうするつもりなのよ?)」

「(う~ん。でもやっぱり悪い人たちじゃないよ~。私の強制交友フレンドは性格まで変えられるような能力じゃないし、あの人たちきっと根は善人だよ)」

「(そうは言ってもねぇ……)」

「(それに偉い軍師さんみたいだし力を貸して貰えたら助かるかも)」

「(んなことしなくても私と巫女姫みこひめが行けばあっという間に片付いちゃうての!)」

「(でも町がまた大破しちゃいそうだし、それに機械兵の事だけじゃなくて……ね)

「(……うーん)」」


 クルッと二軍師の方を振り向きポシェットが話しかける。


「キツネさん、ヤギさん。もし良かったら友達として力を貸して貰えませんか?」


 手を合わせて真剣にお願いするポシェット。


「当たり前だ、今日から共に暮らす強制交友フレンドなのだからな」


 キリッ、と凄く良い顔で答えるキュービック。


「うぉーい!  ちょっと待ったぁぁ! あんた達と一緒には住まないからね!」

「ほほ、当然じゃろ。親しき仲にも礼儀有り、じゃ。わしもキュービックもそこは弁えておる。当然ベッドは別々にするつもりじゃ」

「部屋は一緒のつもりだったの!?」

「ん? 何を心配している。私たちは立派な大人だ。君たちのような少女に発情したりはしないから安心しろ。ただ夜にトランプとかUNOとかをしたいだけなのだ」

「どこが立派な大人だ!」

「……UNO得意なの……」

巫女姫みこひめ!?」

「ほほ、キュービックよ。まだまだ女心が分かっておらんのぉ。心配するな、三人とも十分魅力的な女性じゃ。わしは下心で燃えておるぞ……ってグハァ!!」


 クレスタの蹴りで数十メートル吹っ飛ぶスクエア。


「ポシェット……やっぱ駄目だこいつ等。勇者として始末していいかな?」

「ちょっと!? だ、駄目だよ! もう友達なんだから! それに軽い冗談に決まってるじゃない」 


 慌ててクレスタを止めるポシェット。


「UNO!」

「……つ、強いの……」

「U、UNOしとる!?」

「はははー軍師たるものUNOは嗜みの一つ。いつでも決闘デュエルできるように懐にしまっておるわ!」


 ワイルドドロー4カードを切ってキュービックが勝負を決めに掛かる。


「二人でUNOって面白いのかな~? 私たちも混ぜて貰う? クレスタ」

「いや混ぜて貰わないよ!? 機械兵倒しに行くんだよね!? ポシェットも完全にペース乱されてるよ!」


 ピタッ、と手札を凝視したまま動きが止まるキュービック。


「何? 機械兵を倒しに行く……だと?」

「ん……うん。実はそうなんだ。キツネさんとヤギさんって偉い軍師さんなんでしょ? 町をあまり壊さずに機械兵を倒す方法があれば教えて貰いたいんだけど……」


 申し訳なさそうにお願いするポシェット。


「……ふふふ、そうかそうか。お安い御用だ。天才軍師たるこのキュービックがこの窮地見事に救ってみせようぞ!」


 ドヤ顔で胸をドンッと叩く。


「いや、別に窮地ではないんだけど……」

「虚勢を張るな暴力女、私に任せておけ。さぁ! 作戦会議だ!」

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