第27話 ポシェットの友達

 メカチックシティ内部のとある建物。

 その建物の一室でアンティークな四角いテーブルを囲って朝食を取る少女が三人。


 一人は小柄でどこか不思議な雰囲気の漂う青い目をした金髪の少女

 一人は赤みを帯びた茶髪を後ろで束ねキャップを被っている活発そうな少女

 一人は巫女装束を身に纏いおっとりとした黒髪の巨乳少女


 焦げた目玉焼きを口に頬張りながら会話が弾む。


「ポシェット。先生が帰ってきたみたいだよ!」

「うん、知ってる~。後一時間くらいしたら多分ゲートが開くと思うよ~」

「……先生きっと驚いてるの……そして困っているの……」

ゲート開いたらどうするの? また何人か外に出すの?」

「ううん~。あんまり時間も無さそうだし今回はショーグンに直接会って話すよ」

「えっ! マジマジ!? 私も会いたいよ!」

「……いいな。ポシェット……私も先生に会いたいの……」

「そうだね。皆で会いに行こう」

「やった! 私たちの成長っぷりに驚くだろうな先生」

「……巫女姫みこひめはあまり変わってないと思うの……」

「何言ってんの。巫女姫みこひめの胸の成長具合こそ先生が一番驚くところだと思うよ?」

「……先生胸大きいの好きなの?……」

「セクハラしてきたら私がぶっ飛ばすから安心して」

「だいじょぶだいじょぶ。ショーグンはそんな事しないよ~」


 キャッキャと盛り上がる三人。


 ガタッ!

 不自然な物音と共に二つの影が部屋の入口付近を横切る。


「誰!?」


 タタッ! 

 キャップの少女が一足飛びで人影に近づくとヒラリとスカートをなびかせて回し蹴りを食らわす。


「ぐはぁ!」

「おひょぉ!」


 そのままなぎ倒される二つの影。

 その影の正体はキツネとヤギの魔物であった。


「ほんとに……誰?」


「はぁはぁ……い、痛い。だ、だが、ポシェットぉぉぉぉ――ついに見つけたぞぉ!!」

「ほほ……ゴホ、ゴホ……冥途の土産にいい物が見れたわい……パンツ……」


 血だらけの魔物二人。


「……クレスタやり過ぎ……」

「いや、私そんなに強く蹴ってないんだけど」

「クレスタ、謝りなよ。その人達もう私達の仲間だよ?」

「え? じゃあポシェットの能力にかかった人達? あ……ほんとだ目が青い」

「……教えてくれないと……ポシェット以外分かる訳ないの……」

「ごめんごめん。でもシティの外で友達になった人達だからさ~。まさかゲートも開いてないのに中に入って来れるとは思ってなかったんだよね~……って本当にどうやって入って来たの? キツネさん、ヤギさん。」


 キツネの魔物がよろよろと立ち上がりながら話す。


「ポシェットよ、私をキツネさんと呼ぶな。私の名前はキュービック。元ミックスベリー将軍の配下で組織拡大に多大な貢献をした誰もが羨む才覚を持った天才軍師だ」

「ふ~ん。で、キツネさんはどうやって入って来たの?」

「だ、だからキツネさんと呼ぶな! 私の名前はキュービック、入り口がなかったので取りあえず黒い球体を直進して進んできた孤高の軍師だ」

「え! マジで? あの重力場って鉄とかへし折れるくらいのジーが掛かってるはずなんだけど?」

「ほほ……誰がジジイじゃ」


 年老いたヤギの魔物もフラフラと話に参加する。


「……重力場の力は一律じゃない……運が良かったのかも……でも多分重力場自体が弱まって来ているのも事実なの……」

「キツネさんとヤギさんが体を張って教えてくれたんだね……ありがとう」

「だから私はキュービックだと言っているだろうがぁぁ!! そしてこの爺……いやお歳を召した方はスクエア軍師!! 私と同じく元ミックスベリー将軍の配下で秀才軍師だ! 私には及ばないものの! 私には及ばないもののぉぉぉぉ!!」


 熱を帯びるキュービック。興奮して穴と言う穴から血が噴き出している。


「分かったから落ち着けって! でも珍しいよね、ポシェットの能力にかかってるとは言っても直接会いにくる人達なんて……」

「……魔物たちは強制交友フレンドって呼んでるみたいなの……」

「へ~強制交友フレンドかぁ~。上手い事言うね」


 ふむふむと感心する三人の少女。


「ほほ、ところでポシェット。そこの二人はどちらさんかな? どうやらわし達の仲間ではないようじゃが……」

「そ、そうだ! 私たちと同じオーラを感じない。それに瞳も青くないぞぉ!?」


 キョトンとするポシェット。そして「ああ、そうそう」という口ぶりで話す。


「当然そうだよ。二人は君たちの言う強制交友フレンドには掛かってないからね~。そうだ、二人とも自己紹介してあげなよ」


 「どうぞ~」とばかりにヒョイッと右手を差し出して自己紹介を促す。


「なんか照れるな……、コホン。えーと私はクレスタ。クレスタ=エルグランディス。ポシェットとは同じ学級で育った幼馴染だよ」


 帽子を被った少女がペコリと挨拶をする。


「……巫女姫みこひめ巫女姫みこひめなの。正式名称は巫女姫みこひめ=エルグランディスなの」


 巫女装束の少女が小さくお辞儀する。


「二人とも昔からの私の友達だから仲良くしてね」


 プチン……。


「私たちも強制交友フレンドだろうがぁぁ!!」


 激怒するキュービック。


「友達を区別するとは……ポシェットよ、そんな子に育てた覚えはなかったのだがのぉ……」


 淋しそうに呟くスクエア。


「あっ……ごめんごめん。区別してるわけじゃないの、そうだよね、友達だよね」

(なんだか面倒な人達が来ちゃったなぁ~)


 ピューと噴水のように血が溢れ出ているキュービック。


「……取りあえず……止血した方がいいと思うの……」

「あ、そうだね! 回復が得意な人達連れて来るよ。ちょっと待っててねキツネさん、ヤギさん」

「友達なら名前で呼び捨てしろやぁぁぁぁ!!!!」


 最後の花火と言わんばかりの激昂を炸裂させその場で倒れるキュービック。

 その様子を見て静かに手で十字架を切るスクエア。


「……こいつ等どうするのポシェット?」

「来ちゃったものは仕方ないよ……」


 はぁ……と溜息をつきながらゴソゴソと包帯を取りだす。

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