第18話 エルグランディス計画

 プロジェクトレポート№1


 機械都市メカチックシティ。

 科学技術の粋を集めた最先端を行く都であるこの場所で我々は一つの実験を行う事とする。その実験とは『勇者の育成』である。


 過去数多の勇者との戦闘を経て分かっている事がある。それは勇者一人一人に大きな特徴の違いが無いという事である。


 近接戦闘を得意とする勇者。

 魔法を得意とする勇者。

 剣も魔法もバランスよく使いこなす勇者。


 大きく分けて基本的にはこの三種類しかいない。覚える魔法も多少の個体差はあるがそれほどの違いはない。現に我々が『勇者』と特定する基準は勇者の固有魔法であると思われる『慈愛バファリン』という魔法を使えるか使えないかで判定している。


 『慈愛バファリン』は仲間の能力をほんの少しだけ押し上げる魔法でその効果も持続時間も大したことはない。しかし魔法使いや僧侶は決して覚える事はなく人間が魔法を勉強するという魔導指南学校でも教える事はできない特別な魔法だ。


 他にも数種類勇者にしか使えない魔法はあるものの、勇者の素養があればレベル10までには覚えると言われる慈愛バファリンが使えるかどうか、これを勇者の基準とする。



「へーそうなんですか」


 映像を見ながらふむふむと頷く。


「クェクェ! 常識だぜ軍師さん。危険度Eの判定もここが基準だな」

「成程。しかしメカチックシティですか……。随分と技術レベルが高い地域があるんですね(頭は良くないのに……)」

「元々北の大地は超古代文明があった土地らしくてな。再利用できるものだけ使っているだけさ。そこのブリキも元は大陸で発見されたオーパーツに魔王が魔力をふき込んで動いているだけだからな」

「レモンバーム……私ノ出生ノ秘密ヲ簡単に暴露しないでくれたマエ」

「魔王様に命を頂いているのは我々も同じだ。生まれなど気にするなプラムジャム。さあ続きを映してくれ」

(ふーん。超古代文明か……アトランティス大陸みたいなものなのか?)



 機械都市メカチックシティの面積は北の大陸、アトランティス大陸の三分の一を占めており……


(本当にアトランティス大陸じゃねーか!!)


 その広大な敷地面積と技術力からも『勇者の育成』実験を行うには最適な場所である事に疑いの余地はない。各大陸から勇者の適性を感じる孤児を集めて実験はスタートする事とする。


 今回の実験の被験者は勇者の適性有りと判断された三歳から十歳までの100名の少年少女。ここから十年の歳月をかけていくつかの検証を行う。本計画の最終目標はレベル30相当の勇者を育成し魔王軍の手駒として加える事。

 今回の計画を勇者育成プロジェクト『エルグランディス計画』とする。

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