第21話 イノベーション

 筑摩雅子が警察に引き渡された後も、江戸川真一の心には何かが引っかかっていた。雅子が最後に言った「新しい時代を築くための力」という言葉が、彼の頭から離れなかった。


 真一は、雅子の言葉の意味を探るため、さらに調査を進めることにした。彼はまず、雅子の過去を調べ始めた。雅子はかつて天才科学者として名を馳せていたが、ある時期から突然姿を消し、その後の足取りは不明だった。


 調査を進める中で、真一は雅子が関わっていた極秘プロジェクトの存在を突き止めた。そのプロジェクトは「イノベーション計画」と呼ばれ、次世代のエネルギー源を開発するためのものであった。しかし、計画は不明な理由で中止され、関係者も次々と姿を消していた。


 真一は、計画の詳細を知るために、プロジェクトの元メンバーである入江という男に接触した。入江は、かつて雅子と共に研究を行っていた科学者であり、今は隠遁生活を送っていた。真一は入江を訪ね、彼の協力を求めた。


「入江さん、あなたと筑摩雅子が関わっていたプロジェクトについて教えてください。彼女は何を目指していたのか、そしてその計画が中止された理由を知りたいのです」


 入江は深いため息をつき、重い口を開いた。「イノベーション計画は、人類の未来を変える可能性を秘めていた。しかし、その力があまりにも危険であることが判明したんだ。我々は新たなエネルギー源を発見したが、それを制御する方法が見つからなかった。それが暴走すれば、全世界を破壊する力を持っていた」


 真一はさらに質問を続けた。「雅子はその危険性を知りながらも、なぜその計画を続けようとしたのでしょうか?」


 入江は悲しげな目で真一を見つめた。「雅子は、人類が進むべき道を見失っていると感じていたんだ。彼女は新しい時代を切り開くためには、古い秩序を破壊しなければならないと信じていた。しかし、その信念が彼女を狂気に導いた」


 真一は入江の話を聞き、雅子が何を目指していたのかを理解し始めた。彼女は人類の進化を信じ、そのために危険な道を選んだのだ。真一は、雅子の残した研究資料を調べることに決めた。


 雅子の隠れ家には、多くの研究ノートとデータが残されていた。真一はその中から、雅子が最後に取り組んでいた「究極のエネルギー源」の設計図を発見した。設計図には、未完成ながらもその力を制御するためのヒントが記されていた。


 真一は、その設計図を持って再び入江を訪ねた。「入江さん、雅子の研究を完成させるための手がかりを見つけました。このエネルギーを安全に制御する方法を一緒に探しましょう」


 入江は驚きとともに設計図を見つめ、やがて真一に向かって頷いた。「分かった。この研究を完成させることで、雅子の意志を正しい形で継ぐことができるかもしれない」


 こうして、江戸川真一と入江は協力して、雅子の夢であった新しいエネルギー源を安全に制御するための研究を始めた。彼らは多くの困難を乗り越えながらも、一歩ずつ前進し続けた。


 数ヶ月後、ついに彼らはエネルギーを安全に制御する方法を確立することに成功した。その発見は世界中に広まり、エネルギー問題の解決に大きく貢献することとなった。


 雅子の狂気じみた夢は、真一と入江の努力によって、ついに現実のものとなった。そして、江戸川真一は新たな冒険へと旅立つ準備を整え、次なる謎に立ち向かうのだった。

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