名探偵、江戸川真一

第22話 異臭

　数ヶ月に及ぶ研究の末、江戸川真一と入江はついに究極のエネルギー源を安全に制御する方法を発見した。その発見は世界中に広まり、エネルギー問題の解決に大きく貢献することとなった。彼らの努力は称賛され、真一と入江は公の場でその功績を讃えられることとなった。

　ある日、研究の成功を祝うために開かれた式典で、真一と入江は壇上に招かれた。多くの人々が見守る中、真一は感謝の言葉を述べ、そして入江と握手を交わした。その瞬間、真一はふと異様な悪臭に気づいた。

　真一は驚きながらも表情を崩さず、握手を続けた。入江もまた、同じ臭いに気づいたようだったが、彼も何とか笑顔を保とうとしていた。しかし、周囲の観客も次第にその異臭に気づき始め、ざわめきが広がった。

　握手を終えた後、真一と入江は舞台裏に引き下がった。そこで、真一は入江に小声で尋ねた。「入江さん、今の臭いは一体何だったんですか？」

　入江は困惑した表情を浮かべて答えた。「わからない。私は何も変なものは触っていないし、普通の握手のはずだった」

　二人は異臭の原因を調べるために、自分たちの手と服を確認したが、特に異常は見つからなかった。その時、舞台裏の暗がりから一人の影が現れた。それは、雅子の弟子であり、彼女の研究を引き継いでいた若い科学者（ジェシー）だった。

　彼は冷たい笑みを浮かべて言った。「あなたたちの成功を祝うべき時に、こんな悪臭がするなんて興醒めですね。しかし、それは偶然ではないのです」

　真一は警戒しながら問いかけた。「あなたは誰だ？そして、何をした？」

　若い科学者は平然と答えた。「私は雅子様の意志を継ぐ者です。彼女の計画にはまだ続きがあるのです。この悪臭は、私が仕掛けたものです。雅子様の研究の一部であり、特定の化学物質が触れると発生するものです」

　入江は怒りを抑えきれずに言った。「何のためにこんなことをするんだ？我々はエネルギー問題を解決するために努力してきたんだ」

　若い科学者は冷笑を浮かべて答えた。「あなたたちのやり方は間違っている。雅子様の真の目的は、古い秩序を破壊し、新しい世界を創ることだ。そのためには、あなたたちの成功も無意味だ」

　真一は冷静さを保ちつつ、彼に近づいた。「あなたが雅子の意志を継ぐのなら、彼女の目指した未来を理解するべきだ。彼女もまた、人類の進化を信じていた。しかし、その方法が誤っていたことを認めるべきだ」

　若い科学者は一瞬ためらったが、やがてその目には狂気が宿った。「いいや、雅子様の計画は完璧だった。私はそれを成し遂げるためにここにいるのだ」

　その瞬間、若い科学者は手元の装置を操作し、再び悪臭が立ち込め始めた。真一と入江はすぐにその場を離れ、周囲の人々にも避難を呼びかけた。

　真一は決意を新たにし、入江に向かって言った。「この新たな脅威を止めなければならない。雅子の意志を歪める者を放っておくわけにはいかない」

　入江も頷き、二人は若い科学者の計画を阻止するための新たな冒険に踏み出した。江戸川真一は再び、その鋭い洞察力と勇気を持って、世界の平和を守るために戦い続けるのだった。