第2話 初対面
高いビルが立ち並び、賑わいを見せる街。この魔法使いの街は、元々が廃墟だったとは思えないくらいに発展していた。
そんな街と住宅街の境目に、第二部隊の拠点があった。
少し大きい洋風のお屋敷と言って思い浮かべられるような外観の建物。庭などはなく、ただ建物が建っているだけ。
聖弥は建物の門を迷うことなくくぐり、扉をノックした。
するとすぐに扉が開き、中から十歳くらいの少女が出てきた。
「もしかして、あなたが中央からの……?」
「はい。聖弥と申します。よろしくお願いします」
今日合流する約束をしていたから大丈夫だったのだろうが、ここまで王の妹だということを隠すためにフードを深くかぶって、ほとんど顔が見えず、少し見える口元には痛々しい傷があるという聖弥は、明らかに不審者だ。
ただ、第二部隊の再建のために王族が直々に手助けをするとわかれば、他の部隊から不満を買う。そのために王族だとわかる目元を隠そうとすると、こうなってしまった。ちなみになぜか名前は知られていない。
「よろしくお願いします、聖弥さん。私は
「乃愛……さん。よろしくお願いします」
「では、こちらへ」
挨拶を済ませて、乃愛は聖弥を屋敷の広間に案内した。
乃愛の見た目は十歳くらいだが、雰囲気はもう少し上に思える。ほとんどの人が親の顔も知らない人たちが集まるこの街では、そうなるのも無理はない。
そして聖弥が広間に足を踏み入れると、そこにはもう二人の魔法使いがいた。
「来たよ、例の助っ人」
乃愛がそう言うと、聖弥と同い年くらいの少年が立ち上がって歩み寄る。
「はじめまして、ここのリーダーの
來夢はそう言い、聖弥の前に手を差し出す。
「いえ。よろしくお願いします。聖弥と申します」
「聖弥さん。いい名前ですね」
「あ、どうも」
今までまともに他人と話す機会が無かったので、微妙な反応になってしまった。
「じゃあ、メンバー紹介しますね」
気を取り直して、來夢は話を続ける。
「まず、こっちのしっかりしてる赤髪が乃愛です」
來夢が紹介すると、乃愛は軽く会釈をする。
「そして、金髪の方が
輝星を紹介すると、輝星は聖弥に駆け寄り、目を輝かせて聖弥を見つめて、「よろしくね!!」と元気に挨拶し、その場で飛び跳ねる。
新しい人が来るのがそんなに嬉しいのか、と聖弥は思った。
「なるほど。よろしくお願いします」
輝星の勢いにも声色一つ変えず、聖弥は改めて挨拶をした。
「……一応同じチームなので、敬語やめましょうか。色々隠して猫被ってる暇もないし、建前みたいなのはやめて。……どうせ現場では本性出るわけだし」
「じゃあ、遠慮なく」
そう言うと、聖弥はフードを取り、声色や口調を変えた。
「っ……!?」
その聖弥の姿を見て、來夢は一瞬フリーズする。
それもそうだろう。珍しいオッドアイかつ、王族に継承される色、そして髪色も珍しい。その特徴に当てはまる人物といえば、それは王の妹しかいない。
そもそも、魔法使いの目の色と髪の色は自分が使う魔法の属性に応じて変わる。そのため、王族しか使えない魔法を継承していれば、その色を継承することとなる。だから白い髪に青い目の人間は王族以外にいない。
また、黒い髪は魔法のリソースとなる魔力を自分の中で循環させて使っている証拠だ。
普通は空間に満ちる魔力と交換するものを、空間に魔力が満ちていない状況や、意図的に自分の中で循環させている期間が長い魔法使いは段々と髪が黒くなる。
例えば、この街の外の世界で度々問題を起こす魔法使いなんかは黒髪がほとんどだ。だがもちろん、聖弥はそんなことはしていない。
「その……もしかして、王族……?」
「一応。でも、それはここだけの話にしておいて。他の部隊に恨まれるから」
「わかった」
たとえ王族だとしても、ここではチームメイト。普通に接する必要があることを來夢も理解している。今の戦力で他の部隊と戦うことはできない。
「聖弥っていうのは、偽名?」
「いや、本名。誰も王族の名前って知らないでしょ?」
「そうだな……今の王の名前も知らない。なんなら、顔も知らない」
「知られているのは王族に引き継がれる特徴だけ。私はあれだけど……」
「噂で今の王の妹が特殊だっていうのは知ってる」
「そう。だからこうやってフード被ってるわけ」
「なるほど」
來夢は驚いていたが、段々と冷静になり、王の妹が来たことを受け入れているようだった。
「とにかく、私が来た理由はわかってると思うけど、ここを立て直すこと。具体的にはちゃんと金を稼げるような戦力を確保して、仕事を受けられる状態にすること。いつまでかかるかはわからないけど、今の体制が変わらないうちにやりたい」
「僕が死なないうちに、ってことね」
仮にその時までに何も変わらないということは、輝星と乃愛だけしかいないということである。そこまで誰も入らず、たった二人の部隊なら、もう入る人はいない。再建は不可能だ。
「そういえば、來夢って何歳なの?」
「十六だけど」
「一個上か。まあ、何歳でもいい。三人とも、本気で頼むよ?」
「……ああ」「うん」「うおーっ!」
來夢、乃愛、輝星はそれぞれそう答えた。
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