第19話 カチコミ
ぐちゅ。
アジトの前で見張りをしていた二人の男を頭を結界で圧縮して潰す。ほんと『
「容赦ないっすねー。何やったか、俺っちには分からなかったっすし」
「敵に容赦する必要なんてないのよ。喋って情が湧いちゃったりしたら殺しにくくなるでしょ」
「殺せないとは言わないんすね」
「さあ? どうかしら?」
ほんと、どうかしらね? 今まで悪人しか手に掛けてないけど、私はそんなの関係なく殺せるのかしら? その場になってからじゃないと、なんとも言えないけれど…。
悪人でも仲良くなったら殺さないかもしれないわねぇ。利用する方法を考えるんじゃないかしら?
「貴族令嬢なのに結構覚悟決まってるっすね」
「だから平民だってば」
カゲオは私が貴族の人間だって決め付けてるみたいね。まあ、格好もそれっぽいし、持ってるモノが高級品だったりしたら仕方ないのかしら? 勝手に勘違いしておいてもらいましょう。そっちの方が都合が良さそうだしね。
「ハーヴィー。あなたは逃げて出てきた奴等を仕留めなさい」
「ガルルルルッ!」
『毒蜘蛛』のアジトは前世で言うところの大きな工場のような建物。昔は何かに使われてたんでしょうね。今は廃工場という感じでいかにもそれらしい建物になってるわ。
結構広いから何人か逃げ出すかもしれない。ハーヴィーにはそれらの処理を頼みましょう。
「そういえば確認しておきたいんだけれど」
「なんすか?」
「『毒蜘蛛』のアジトある価値がありそうなモノは私のモノよね?」
「まあ、そうっすね。悪事に繋がりそうな証拠はこっちに欲しいっすけど」
「それが聞けて安心したわ」
こういう場合、カゲオの雇い主であろう領主が押収したりする事もあり得ると思ったんだけれど。すんなり渡してくれるみたい。
錬金術師がアイテムボックスにお金を入れておいてくれたお陰で、現状はお金に困っていない。でもそれもいつまで持つか分からないし、稼げるうちに稼いでおきたいわ。
「後は捌くのが難しそうなのは、あなたの雇い主であるお館様に買い取ってもらったりも出来るかしら?」
「モノによるっすね。ゴミを渡されたら流石に無理っす」
「そう。まあ、なんにせよ、まずは『毒蜘蛛』を潰してからね」
この廃工場をまとめて結界で覆って、圧縮して潰す事も出来た。でもそれをした場合、戦利品を確保出来なくなるのよね。それは少しもったいないわ。
それよりも…。カゲオは結構裁量権とかあるのかしらね? 戦利品を簡単に私に渡すのを許可したりって、それなりに上の人間しか判断出来ないんじゃないかしら?
「? なんすか?」
「………なんでもないわ。行きましょう」
これが上の人間? と疑いの視線でカゲオを見る。相変わらず軽薄そうな男でどうしてもそうは思えない。実は偉い人なのかもね。私にはどうでも良いけど。
「たのもー」
「なんすかそれ」
「由緒正しいカチコミの方法よ」
「はえー。初めて聞いたっす」
気の抜けた声で廃工場の中に入ると、出るわ出るわ悪人顔。予想以上に構成員が多いわね。
ウロボロスを振り回して鎧袖一触でモブ悪人顔を仕留めていく。中には逃げ出したのもいるけど、外から悲鳴が聞こえてきたので、ハーヴィーが仕留めてくれたんでしょう。
「便利そうな
カゲオはと言うと、相手の足元から影の槍を出して、相手を貫いていた。影がある場所じゃ無敵ね。閃光玉を用意しておかないと。
「眼帯を付けた大男。あなたが『毒蜘蛛』のボスね」
「くそったれ! なんだってこんなバケモンが!」
「私みたいな美女に向かってバケモノだなんて。失礼しちゃうわね」
「うるせぇ!!」
造られた顔だけど、今では気に入ってる容姿なのよ? 前世では見た目でチヤホヤされる事なんて、あんまりなかったんだから。少しお灸を据えてあげましょう。
見た目は結構強そうだけど、不思議と負ける気はしない。まだまだ実戦経験の少ない私の練習台になってもらうわ。
私のこれからのエンジョイ異世界ライフの礎になりなさい。
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