第7話 成長


 「何よこれ。滅茶苦茶強いじゃないの」


 「うなーお」


 熊さんと戦ってから半月ぐらい経ったかしら? あれから、毎日午前は魔物狩りに出掛けて、午後からは色々な訓練をしている。


 最近やっと結界の操作が多少上手くいくようになってきて、戦闘にも組み込めるようになってきた。


 さっきもここ半月でベストフレンドになった熊さんを仕留めたところよ。いっぱいいるのよね。やっぱり弱い魔物なのかしら?


 まず熊さんの突進に結界を合わせる。これは、私にしか見えてないみたいなのでかなり使い勝手が良いの。


 熊さんが結界にぶつかって怯んだ隙にウロボロスを伸ばして、首を刈り取る。このコンボが強すぎて、最初に距離があれば確殺なのよね。


 「蛇腹剣なんて使えないとか言ってたけど、認識を改める必要があるわ。『守護神アテナ』との相性がバッチリなのよ」


 まさか錬金術師がここまで見越していたとは思わないけど…。それでも相性が良いのはありがたい。


 勿論脳死でこのコンボだけで調子に乗ってる訳じゃないわ。結界って、私のイメージでは敵の攻撃を防ぐばかりと思ってたのだけれど。


 戦闘の補助にも使えるし、操作次第ではかなり面白い事が出来るようになると思うのよ。今はまだ技術が拙くて、思い通りに動かすのは一苦労だけど、必ずモノにしてみせるわ。


 「というか、未だに魔力操作の仕方がイマイチ分からないのよね。結界も力押しで使ってる感覚があるし…」


 よくある、血をイメージして〜とか、私には分からないわ。何か体の中にあるっていうのは分かるのだけれど、それを上手に動かせない。


 普通に生きてきて血液の流れ方とか考えた事があるかしら? 学校の授業以外で考えた事ないわよ。これも要練習ね。


 「もうお腹いっぱいかしら?」


 「にゃう」


 「ハーヴィーの食べる量も増えてきたわねぇ。将来的に食費がどれだけかかるのやら…」


 私の拙い解体が終わった熊さんをハーヴィーはほとんど食べ切った。最初は三分の一ぐらいで満腹だったのにね。ハーヴィーを養うのは苦労しそうだわ。





 「ハーヴィー! その調子よ!」


 「ガルルルルッ!!」


 異世界にホムンクルスに転生して、小屋で暮らし始めてからかなりの時間が経った。


 最初の方はちゃんと日数を数えてたんだけど、途中で辞めちゃったわ。でも、ハーヴィーの体長が3m近くに成長する程度には、長い日数をここで過ごしている。


 今は森の中を一泊二日で探索中。だいぶここでの生活にも慣れてきて、野営の練習を出来るぐらいには私も成長した。


 今は森の中にあったデカくて気持ち悪い巨人みたいな魔物の巣を攻略している。まあ、してるのはハーヴィーだけなのだけれど。


 珍しく一人でやらせて欲しいと、グルグル言ってきたから、いつでも助けれる準備だけして応援しているわ。


 「それにしても、ハーヴィーの背中にあったしこりみたいなのは翼だったのねぇ。何度見ても驚きだわ」


 魔石を食べてハーヴィーはぐんぐんと成長した。体長が1mぐらいになった時、ぴょこっと生えてるのを見て、本当にびっくりしたわ。


 ハーヴィーは一体なんて言う魔物なのかしらね? 獅子に翼がついてればグリフォンなのでしょうけど…。虎に翼? 確かどこかの神話か何かで居たような気もするけど、名前までは知らないわ。


 空を飛んで急降下して、首を噛み切るを繰り返すハーヴィー。巨人に空への攻撃手段がないから一方的だわ。石を投げるぐらいの知能があればまた話は変わったのでしょうけど。


 「ガルルルルッ!!」


 「お疲れ様」


 最後の巨人を仕留め切って、ハーヴィーは勝利の雄叫びを上げる。うにゃうにゃ言ってた頃のハーヴィーは可愛くて良かったけど、今の姿もカッコ良くて良いわ。


 「グルルルッ」


 「甘えん坊なのは変わらないわね」


 私が近寄ると褒めろほめろとばかりに、首をすりすりしてくる。大きくなって見た目がカッコ良くなっても、可愛いくて甘えん坊なのは変わらないわね。


 「さっ。倒した魔物は回収して魔石だけ取りましょうか」


 私は途中で解体を諦めた。一行に上手くならないもの。やっぱりやるなら、ちゃんとしたやり方を学ばないとダメだわ。素材を無駄にしてばっかりなの。


 だから、途中から魔石だけ取って、アイテムボックスの中に放り込んである。これまで色んな魔物を倒したから結構溜まってるのよね。


 冒険者ギルドに行けたら、そこで解体を依頼しましょう。


 「お互い結構成長したわよね。そろそろ街に向かっても良いと思うのだけれど」


 最近気温が下がってきてるのよねぇ。服の温度調整があるお陰で不便はしないけど、そろそろ冬になるんじゃないかしら?


 なら、冬が明けてから行った方が良いわよね。


 「冬の間は小屋でゆっくりしましょうか。冒険者としての私をキャラを考えなきゃいけないし」


 フレンドリーな感じでいくのか、孤高で寄せ付けない感じでいくのか。忠義に厚い騎士みたいな感じか、クズのチンピラスタイルか。守ってあげたいお姫様タイプか、気高い女王様タイプか。


 色々選択肢があって迷っちゃうのよね。


 錬金術師には好きに生きて良いって手紙には書かれてたもの。どうせなら異世界を一番楽しめるスタイルで、異世界を遊び尽くしたいわね。

 

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