第162話 ジャパニーズヤンデレ(sideG)
「ではご主人様、三番テーブルの方でお待ちくださいね♪」
マリアさんに案内されて、俺は三番テーブルに着席。
そしてメイドさんを待つことに。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
と、間もなくオレ担当のメイドさんがやってきた。
一体どんな人――、
「あ」
と、オレとそのメイドさんは声を揃えた。
担当のメイドさんは……あの高校の教師、
見間違いじゃない。
メイド服こそ着ているが、あの時、オレの年収(嘘)を聞いたらすぐさま去っていった岩田さんだった。
(え、えええええええええええええええええ?)
オマエかいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
「ユウポンでーす♪」
言うと、岩田さんは俺の向かい側に座った。
……ユウポン? ああ、このお店での名前か。
名札にも書いてある――、
(え?)
岩田さんが左胸に着けた名札には、『ユウポン』と書かれている。
しかし、しかし……。
その後ろに『(
(え、えええええええええええええええええええええ?)
暗殺者耐性ありますって何?
え、やっぱりそういうこと?
「あ、あの、岩田さん?」
「はわわ~、ご主人様、岩田さんって何ですか?」
アンタのことだよ。
「私はキラキラ星から来たユウポンですよ?」
何で架空の星が学校名に似てんの?
もしかして高校の名前から万引きした?
「いや、あの、岩田さんですよね?」
オレがズバリと言うと、
「はあ……。ノリが悪い男って『ナイ』よねえ……」
岩田さんは頬杖をついた。
何なのこの人。『ナイ』のはアナタなんですが。
「ああでも初対面よね私たち」
いや二回目ですが。
「記憶に無いわあ。振った男なんて」
……何だと?
「年収が低いってことくらいしか記憶に無いわね」
バッチリ覚えてますよね。あの時、それ聞いてオレのこと切り捨てましたよね。
「振った男の数なんて星の数だけど……。外人さんなのに私が覚えてないってことは、記憶に残らないほどつまらない男だったのねアナタ(笑)」
オマエも星にしてやろうか?
「ああダメよマルセルさん」
え、今オレの名前言ったよね。確実に覚えてるよね。
「私を暗殺しようとしても無駄よ。今日は暗殺者耐性が付いてるから」
今日は暗殺者耐性付いてるからって何?
地球ではまず存在し得ないセリフだよね。
もしかしてキラキラ星の言語?
「にしてもマルセルさん、どうしてメイド喫茶に?」
あ、今の話ぶった切るのね。
「もしかしてモテなかったりする?」
残念ながら岩田さんよりはモテるよ。
「日本を知るために来ただけですよ……」
「へえ。モテないから女の子に癒されようってことで来たのね」
人の話聞いてたあああぁ?
「あの、そういう目的で来たワケでは……」
「じゃあ何で来たんですか?」
だからさっき言ったよね?
だ、駄目だ岩田さんは……。
話にならないっていうか話が出来ない。
他の人に代わってもらおう。
「あの、他の人に担当を代わってもらうことって――」
「ああダメよマルセルさん」
岩田さんは俺の言葉を遮った。
「あのね。私、さいきん料理のレパートリーを増やすために圧力鍋を買ったの。チェンジなんて言おうものならアナタをウッカリ圧力鍋に入れてジックリコトコト煮込むことになるわ」
なにその暗殺者以上に残忍な行い。
恐いんですけど。
そ、そういえば聞いたことがあるぞ。
あれだ……ジャパニーズヤンデレってやつか?
古の文献(?)で読んだことがある。
ジャパニーズヤンデレには、何があっても手を出すな、逆らうな、と。
「あ、その、じゃあ、何か飲み物でも頼もうかな……」
オレが言うと、
「かしこまりました、ご主人様♪」
と、岩田さんはメニューを取りに奥に消えていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます