第159話 運命


「言っときますけど、何も払う気は無いですよ?」俺は言った。「初回無料って書いてあったし」


「いいえ、そのことではありませんわ」


 占い師はクスッと笑ってから、


「あなた方について、です」


「……俺たちについて?」


 占い師は頷いて、


「あなた方は本当に強い『運命』によって繋がれています。交錯した世界の中で結ばれた、あなた方の『運命』は、千年に一度あるかどうか」


「何が言いたいのか分かりませんね」


 俺はため息交じりに言った。


「その縁を大切にしてほしいのですわ。それを断ち切った時、あなたは後悔することになります」


 断ち切る、ね……。


「心配しなくても、俺はトアリを見捨てるなんてことしません。なにがあっても」


 俺は不思議と、本音をぶつけることが出来ていた。

 ムキになったんだと思う。


 断ち切るだの、今日会ったばかりの他人に言われて。

 オマエなんかに何が分かるんだって。


 俺の気持ちを受けてか、占い師は嬉しそうに口元を緩めた。


「そうおっしゃると思っていましたわ。極悪ごくあく非道ひどう六神ろくしんじゅう及び魔王まおうこと、城ヶ崎じょうがさき俊介しゅんすけさん」


 俺の中で、時間が凍った気がした。


「……なんでそのこと知ってるんですか?」


「宇宙の波動を受け取ればワケないことですわ。あなたには期待しています」


「…………ふん……。あんたに期待されてもな」


 俺は立ち上がった。


「もう一つ、あなたには期待していることがありますわ」


「なんスか?」


 ここで、占い師は右手のひらを差し出してきた。


「最後はガチで占ったので、千円ちょうだい❤」


「嫌です」


 俺は占いの館を出た。


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