第155話 イマドキ女子中学生のブーム
「
「え、俺か?」
うーん、確かに俺も消しゴムが無くなってきてるし……。
どれにしようかな……。
やっぱ消しやすいノーマルの消しゴムに――、
「あ、城ヶ崎くん! これにしたらどうですか?」
トアリが俺に勧めてきたのは……テレビだとモザイク処理されるほど精巧に再現された、ゴキブリの消しゴムだった。
(え、えええええええええええええええええええええ?)
何でだよ。何でこんな気持ちワリーもんが売りに出されてんだよ。
おかしいだろ。どこに需要があると思って売りモノにしたのこのメーカー?
「城ヶ崎くん。まずは触覚を無くすように使うのはどうでしょう?」
使いづらいわ。擦る度にボロボロになるわ。
そもそもこんなもん使いたくねーし持ちたくもねーし。
「い、いや、俺は普通のやつ買うわ……」
「たしかに隣の席でそんな気持ち悪い消しゴム使われたくありません」
じゃあ勧めるなよ。
「こんなものを使っている、なるみの気持ちが分かりません」
なるみちゃん使ってんのおおおおおおおおおお?
どーいう趣向? どんな闇抱えてんの?
「なるみが言っていました。これを使う度に鳥肌が立つと」
それ完全に拒絶反応出てるよね。無理して使ってるよね。
「でもこの消しゴム、最近の女子中学生の間ではとても流行っているようですよ」
「え、マジで? そうなの?」
ちょっと嬉しくて、つい俺は食いついてしまった。
「ええ。なるみが言っていました」
「マジか! ついに俺の時代が来たのか! って誰がゴキブリだああああ!」
「おや、私は別に城ヶ崎くんのことだと言っていませんが?」
し、しまったああああああああああああああああああああああ!
自らゴキブリであると認めに行っちゃったよ!
罠にハマったわ、ゴキブリホイホイにってか?
やかましいわ。
「仕方がありません。そこまで言うのであれば城ヶ崎くんのことをゴキブリだと認めましょう(笑)」
いやオマエは常に認めてる側だろが。ここぞと言わんばかりに嬉しそうにしてんじゃねーよ。
「因みに色のバリエーションも豊富です。スタンダードの茶色に加えて、青、赤、白、緑等々……」
気持ちワリーよ。マジで制作会社病んでんじゃねーの。
「もちろん、城ヶ崎くんカラーの黒もあります」
なんで俺専用のカラーがあるの?
「なるみが使ってるやつです(笑)」
なるみちゃんそれ使って鳥肌立ててるってことだよね。なんかちょっとショックなんだけど。
「一番人気はスタンダードの茶色だそうですよ」
一番気持ちワリーやつじゃん。今時の女子中学生どーなってんの?
「なんでもこの消しゴムを使うと運気が上がるのだとか」
悲鳴のが上がるわ。
「女子中学生に人気の女性インフルエンサーが広めたらしいです」
何処の誰だよソイツは。変なブーム起こさないでくんない。
「ほらほら城ヶ崎くん、買ったらどうですか?」
「要らねーっての。気持ちワリーから俺は普通の買うよ」
「ですよねー。私もそう思います(笑)」
なんだコイツは腹立つな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます