第144話 メガネのお悩み相談室④(sideM)
「実はスマホの機種変更しようか迷っていてっチャ」
またそれええええええええええええ?
ボクの知らないところで機種変更ブーム来てる?
「タップしたら空間からお茶がポンッと出てくるスマホが欲しいなと思ってっチャ」
すみません世界の何処でも取り扱っておりません。
「そういう機種知ってないっチャ?」
「あ、いやー、そのー、流石にそんなスマホは存在してませんね……」
「ええ? そうなのっチャ? こんなに時代が進んでるのに、信じられないっチャ」
ええ、信じられないかもしれませんが、まだそこまで化学が進歩してないんです。
「ワシの時代にはもうそういうスマホはあったっチャ」
あるワケないですよね。何その嘘? 何のための嘘?
「技術は退化してしまっているっチャね」
いえ確実に進化してます。一応スマホかざせば自販機からお茶出せるところまでは来てます。
「正に退化の改新っチャね」
全然うまくねーし。
「まあいいっチャ。にしても、お茶は良いっチャね」
千利休は湯呑みに注いだお茶を飲み切った。
そしてお茶のペットボトルを出す。それをまた、湯呑みに注ぐのかと思いきや、
「あ、ちょ、もうめんどいっチャ」
湯呑みを手で横に払って、ペットボトルに口を着けて直接お茶をゴクゴク飲み始めたのだった。
(え、ええええええええええええ?)
もう千利休感無いんだけど。ただお茶をがぶ飲みするお爺ちゃんなんだけど。
「ぷは~! これに限るっチャ! 湯呑みなんて古臭いの使ってられないっチャ」
千利休がそんなこと言って良いの? 全国の茶道部の人が悲しむよ。
「わざわざ湯呑みを両手を使って飲むなんて茶番したくないっチャ。お茶だけに」
だから上手くねーし。
「この湯呑みも必要無いっチャ。バラバラにして手裏剣にしようかなっチャ」
高そうな湯呑みですが大丈夫ですか?
「現在の貨幣価値に換算すると五千万円くらいになるけど、まあ要らないから良いっチャ」
良くない良くない。
「よおし、じゃあ割るっチャ」
千利休は湯呑みに向かって拳を振りかざす。
ヤバいヤバいヤバい。目の前で五千万円が砕け散るううううう。
「ちょっと待ったちょっと待った! 気を確かに! それ何処かで売って生活費の足しにした方がいいですよ!」
「ええ~、でも要らないっチャ。手裏剣作りたいっチャ」
「手裏剣なら他の素材で作れば良いじゃないですか! それに、要らないならボクが貰いますが?」
「むう、それはそれで勿体ないっチャね。じゃあ売りに行くっチャ」
……なんか腑に落ちないけど阻止成功した。
「骨董品屋にでも売りに行くっチャ」
千利休はふところに湯呑みをしまった。
「そ、それが良いと思います!」
「分かったっチャ。手裏剣は他の安い湯呑みを砕いて作るっチャ」
なんでいちいち湯呑みを手裏剣の素材にしたがるの?
湯呑みでなんか嫌なことでもあった?
「とりあえず、スマホのことは諦めるっチャ。もう一つの悩みを聞いてほしいっチャ」
「え、何でしょうか?」
「実は、どう生きていこうか悩んでいて」
重いテーマ来たよ。ボクじゃとても答えられそうにないやつ来たよ。
「どうすれば良いと思うっチャ?」
「え、ええと……好きに生きていけば良いのではないかと……」
「うーん、そうは言ってもやりたいことがないっチャ」
「じゃあ、千利休さんの本格的な茶道を全国に広めるとか?」
「それは嫌だっチャ。なんでそんなめんどくさいことをっチャ」
言っちゃったよ。千利休が茶道めんどくさいとか言っちゃったよ。
「じゃあ逆に、最近の茶道に触れるのはどうでしょうか? どっかで聞いたんですけど、今はお菓子で出来た湯呑みがあるらしいですよ?」
「うーん、お菓子で出来た湯呑みっチャか……。でもそれ手裏剣に出来ないっチャよね?」
え、なに? 何で湯呑みを手裏剣にしたがるの?
「そんなんじゃ、お茶を飲んでる時に敵襲が来た際、対応出来ないっチャ。普通の湯呑みならすぐさま割って手裏剣にして敵を倒せるっチャ」
あ、そーいうことね。
「そ、そんな必要無いですよ! もう敵が襲ってくるような日本じゃないですから!」
「ええ~? でも極楽浄土に居たオナゴは光線を撃ってきたっチャよ?」
ヤベーよあそこが今の日本だと勘違いしてるよ千利休。あんなことしてくるのマリアさんだけだから。
「大丈夫ですって! あそこはちょっと特殊な場所でして」
「うーん、でもなあっチャ。まあいいっチャ。キミからは答えを見出せそうにないから、今度インターネット掲示板で相談してみるっチャ」
千利休がインターネットおおおおおおおおおおおおおおおお?
大丈夫? レスバ(レスバトルのこと)でネット民にボコボコにされない?
「変なこと言ってきた奴には言葉の手裏剣を投げるっチャ」
それ戻ってきてブーメランって言われないように気を付けてくださいよ?
「じゃあワシはこれで失礼するっチャ。悩み聞いてくれてありがとうっチャ」
言うと、千利休は静かに去っていったのだった。
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