第143話 メガネのお悩み相談室➂(sideM)
(やれやれ……)
静まり返った図書館にて、ボクは再び勉強の世界に入った。
それから三十分経った頃だろうか。
「この席、空いているっチャ?」
そう話しかけられ、ボクはハッと勉強の世界から現実に戻った。
向かいを見ると……腰を曲げた老人がそこに居た。
丸坊主で、茶色い袈裟を着ている。住職のかたかな?
「あ、ええと、空いてますけど……」
なんで他に席があるのにワザワザここに? という気持ちを秘めて、ボクは答えた。
「ありがとうっチャ。優しいっチャね」
……チャ? なんか語尾が変だなこの住職。
「よっこいしょっチャ」
と言いながら、住職と思しき老人は向かいの席に座った。
「今日は暑いっチャね」
え、なに? 語尾にチャを付ける宗教でも入ってる?
「こういう時は麦茶に限るっチャ」
言うと、住職(?)はふところから高そうな湯呑みを出した。次いでペットボトルのお茶を出して、それを湯呑みに注ぐ。
「キミもどうっチャ? 美味しいっチャよ」
「あ、ボクは遠慮しておきます」
「そうかねっチャ」
住職(?)は、湯呑みを両手で上品に持って、麦茶で喉を潤した。
「はあ……。やはり茶はウマいっチャ」
住職(?)は、また湯呑みに麦茶を注ぐ。
「あ、あの~、ところであなたは一体……?」
「おお、そういえばまだ名乗ってなかったっチャね」
住職(?)は麦茶を一口飲んでから、
「ワシの名前は千利休っチャ」
せ、千利休うううううううううううううううううううううううう?
サンタクロースの次は千利休が現れるってどういうこと? どんな法則?
なんでこう、いちいち想定外の人が来るの。もっと他に分かりやすいの居るでしょうよ、悪魔とか閻魔大王とか。そーいうのにしてくんない?
てか歴史的人物が何故ここに?
「ちょっと前に【極楽浄土】という『お茶のみ場』で復活して抜け出してきたっチャ」
メイド喫茶だ。ボク行きつけのメイド喫茶【極楽浄土】だ。
そこで復活してここまで来たってこと?
す、凄いな。あそこに入荷した『魔のモノ』はラブリンビーム受けてまず助からないはずだけど。
あ、そうか、千利休って魔のモノじゃないから大丈夫だったのか。マリアさんからラブリンビーム受けずに済んだのね。
「とても可愛らしいオナゴが愛の光線を撃ってきたが大丈夫だったっチャ」
ラブリンビーム受けたんかいぃ。
あれを掻い潜るって凄くね?
撃つマリアさんもマリアさんだよ。
見逃したげてよ千利休なら。
「いや本当に危なかったっチャ。もしワシが忍者じゃなければ逃げられなかったっチャ」
え、千利休って忍者だっけ?
「あのオナゴ、只者じゃないっチャ。ワシが投げた手裏剣とクナイを、お盆でいとも容易く捌きつつ光線を撃ってきたっチャ」
なにその無駄にハイレベルな攻防?
てかマリアさんスゲーな。流石は店の番長。
「あれほどの猛者、ワシが生きてた時代には居なかったっチャ」
そりゃあね。
「にしても時代は進化してるっチャ。そのへんで売っているお茶ですらワシが淹れたモノを凌駕する美味しさだっチャ」
さっきからずっと気になってるんだけどさ……。
その語尾は何なの?
もしかしてお茶好きだからってこと?
「ところで少年、ちょっと悩み事を聞いてほしいのだがっチャ」
無理してその語尾付けてない? キャラ設定守るのは良いことだけども。
「そんな暇が無ければいいのじゃがっチャ」
「あ、いえ、聞くだけなら何とか……」
今度は千利休の悩み相談受けることになった。
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