第133話 ユウポンさん(※1人目)の正体。


「ではご主人様、三番テーブルでお待ちくださいませ!」


 俺は指定された三番テーブルに着いた。


(うーん、見た感じではメガネくんの魂は無いよなあ……)


 店内には、オムライスを食べたり、ジュースを飲んだり、メイドさんと楽しそうに話をする客が居る……。

 普通のメイド喫茶にしか見えないけど……。


(弥勒菩薩がログボで出るくらいだし……。メガネくんの魂ここにしか無いと思うんだけど……)


 色々考えていると……。


「おかえりなさいませ、ご主人様❤」


 と、俺の席にメイドさんが来た。

 ユウポンさん……とやらが来たのだ。

 一体どんな人――


「あっ」


 と、俺と、ユウポンさんの声が揃った。


 俺を受け持つメイドさんは……ユウポンさんは……。

 見間違いじゃなければ……見間違いじゃなければ……。


 担任の岩田いわた先生だった。


 メイド服姿で、今日は髪形をツインテールに仕上げている。

 左胸には『ユウポン(メガネ可)』と書かれた名札が貼ってある。


「えっ」


 と、再び俺とユウポンさん(たぶん岩田先生)はシンクロした。

 そのまま数秒間、俺とユウポンさん(たぶん岩田先生)の時間は止まる。


「えっと……岩田先――」


「ユウポンでーす☆」


 俺の言葉を遮ると、ユウポンさん(たぶん岩田先生)は向かいの席に座ってニッコリと笑ったのだった。


「え、岩田――」


「ユウポンでーす☆」


 言いつつ、ユウポンさん(たぶん岩田先生)は、テーブルの下で俺の足をギューッと踏んだのだった。


「痛い痛い痛い。え、ちょ、岩――」


「さっきから何を言っているのですかご主人様? ワタシはユウポンですよ? 頭を強く打ちましたか?」


 ユウポンさん(たぶん岩田先生)は鼻にかかった甘い声で言いながら、更に足をギューッと踏みつけてくる。


「あ、人違いでした~! ユウポンさん(たぶん岩田先生)ですよね~! 分かりました分かりました!」


「よくできましたご主人様!」


 ユウポンさん(たぶん岩田先生)は足を離してくれた。


(や、やべーよ)


 どっからどう見ても岩田先生だよね?

 生き別れの双子とかじゃないよね?

 静かなバイオレンスっぷりといい、


「次にユウポンのあとに括弧内を着けたら口を縫い合わせますよご主人様」


 この残忍な発言……。


 声は可愛い子ぶってるけど、きよキラ高校の岩田先生だよね。

 何でこんなところに?


 そ、そーいや岩田先生の名前って優実ゆうみだったな。

 だからユウポンか……。


 作中で一回しか出てきてない名前をここで使うの反則だろ。作者も忘れてるぞ。

 あと左胸の『ユウポン(メガネ可)』って名札は何?


「今日は何になさいますか? ご主人様?」


「え、ええと……」


「あっ! そういえば自己紹介がまだでしたね! ワタシったらウッカリさん☆」


 え、もう終わってると思うけど。


「申し遅れました。ワタシはキラキラせいからやって来たユウポンでーす☆」


 清キラ高校からやって来た岩田先生ですよね。

 なに学校の名前からちょっと拝借してんの。

 てか清キラの教員って副業OKなんだ?


城ヶ崎じょうがさきくん――」


 アッと、ユウポンさん(岩田先生)は先の言葉を飲んで、


「ご主人様のお名前を聞いてもよろしいですか?」


 さっきご自分で答え言ってませんでした?


「城ヶ崎……ですけど……」


「城ヶ崎様ですね! かしこまりました~☆」


 ニッコリと微笑むユウポンさん(岩田先生)。


「あ、あの~、ユウポンさん? ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


「えええ? はわわ~、何ですか何ですか?」


 よくこんな可愛い子ぶれますね。疲れない?


「チェンジって――」


「ああダメよ城ヶ崎くん」


 と、突然ユウポンさん(岩田先生)は素の声に切り替えた。


「私ね、さいきんミシンを買ったの。チェンジなんて言おうものなら手が滑って城ヶ崎くんの口を縫い合わせちゃうかもしれないわ」


 いやそれ滑ってるんじゃなくて自ら縫いに行ってますよね?


「まっ、私は別に困らないけどね。城ヶ崎くんが亡霊になるだけだし」


 口を縫われた挙げ句、命も取られるの?


「つまり城ヶ崎くんが亡霊にチェンジってことよ」


 全然うまくないです先生。


「わ、分かりました分かりました! このままお願いします!」


「はわわ~☆ ありがとうございます城ヶ崎様!」


 ユウポン(岩田先生)は、可愛い子ぶった声に戻したのだった。

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