第123話 イギリスの忍者から習いました。


「Zzz(にしても、もう午後五時かあ)」


 朝の八時ごろだけど。徹夜しすぎて時間バグってる?


「Zzz(あ、間違えた。これイギリスの時間だった)」


 さっそく英国人になってんじゃねーよ。


「Zzz(あー、完全にイギリスに染まってました。日本に合わせるのって難しいですよねえ)」


 なにこのイギリスかぶれ。


「Zzz(日本との時差がなあ。どうりで眠いワケでした)」


 眠いのは徹夜したせいだろ。


「Zzz(そろそろ午後ティー飲む時間だったんだけどなぁ)」


 イギリス人だからか。イギリス人だから午後ティー飲むのか。

 イメージのレベル低っ。


 もっと本場イギリスあるあるを出してみろよ。

 出せるものならな。


「……トアリ。なんか他にイギリスについて教えてくれないか?」


 俺が問うと、


「Zzz(スリープモード中です)」


 都合が悪くなったらスリープモードに入るな。起きてるだろゼッテー。


「Zzz(狸寝入りの術)」


 狸寝入りの術って何だ。


「Zzz(イギリス流、忍法、狸寝入りの術)」


 何でイギリス流なのに忍法? え、イギリスって忍者居たっけ?


「Zzz(イギリスでカサカサ動いて人を翻弄する黒い忍者から教わった極意です)」


 それゴキブリいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。

 確かに動きとか色合い的に忍者っぽいけども。


 す、スゲーな。ここでGに繋げてきたよ。意識外からの攻撃してきたよ。

 おまえマジでどっからでもGネタに繋げる才能あるんじゃね?

 専門家にでもなれば?


「Zzz(正に異邦いほうジーですね)」


 それ言いたかっただけか。


「はいはい皆~、静かにね~」


 と、名簿をパンパン鳴らしながら岩田いわた先生が入ってきた。皆がぞろぞろと自席に戻り、静かになる。


「じゃあちゃっちゃと始めましょうか」


 俺の号令で『起立、礼、着席』が終わったところで、岩田先生はテスト用紙をトントンと鳴らした。


「まあ全教科、基本問題しか出ないから、あまり力まないようにね~」


 岩田先生がそう言うと……。

 トアリ、加藤かとう、金剛力士像が「え?」と声を揃えた。


「あら? 三人ともどうしたの?」


 トアリと加藤と金剛力士像は顔を見合わせてから、


「い、岩田先生、基本問題しか出ないって本当でやんすか?」


 金剛力士像の問いに、岩田先生は「そうよ」と答えた。


「あの! きよキラだからもっと難しい問題を出して『ふるいにかける』かと思っていたんですけど!」


 と加藤。岩田先生は「そんなことしないわよ」と微笑んだ。


「基本問題って、どれくらいの難易度ですか?」


 トアリは言った。


「他校の実力テストと同じくらいかしらね。でも日々、応用とか発展問題を解いてるあなたたちにはワケない難易度よ」


 ここで、岩田先生は腕を組んだ。


「前に説明したでしょう? まさか三人とも、人の話を聞いてなかったの?」


 岩田先生がちょっと怒った様子で言うと……。

 トアリ、加藤、金剛力士像の三人は再び顔を見合わせた後……。


「Zzz(狸寝入りの術)」


 と、三人揃って、イギリス流の忍法を使ったのであった。

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