第121話 勉強してない三人衆、ここに集結!

 と、ここでトアリがギシュリと教室に入ってきた。皆からの「おはよう」に、トアリは手をちょっと挙げて応えるだけだった。


(……ん?)


 いつもなら「おはようございます」といっぺんに応えるのに、今日は無言だった。

 トアリはギシュギシュと歩いて、俺の左隣の……自席に座った。


「……トアリ?」


 俺が呼びかけても、トアリは反応しない。


「お、おい、どうかしたか?」


 俺が更に呼びかけると……、


「Zzz……」


 トアリは静かな寝息で応えたのだった。


(え、えええええええええええええええええええ?)


 オマエもかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。

 しかもトアリに至っては寝てんじゃねーか。


「なるほど! トアリさんも勉強してきてないのね!」


 加藤かとうは言った。

 いや徹夜して勉強したから寝てんだよコイツは。


「流石はトアリの姉御!」と金剛力士像。「寝てても九割取れるってワケでやんすね!」


 寝てたら0点しか取れねえよ、


「Zzz(スリープモード中です)」


 何で括弧内で話せてんだあああぁ。

 てか人間のスリープモードってただの睡眠だろ。


「Zzz(今日も良い天気ですね)」


 会話が単純だな。

 スリープモードだからか。スリープモードだから複雑な会話できねーのか。


「トアリさん! テストの自信はどうなの?」


 加藤が問うと、トアリは長い間を空けてから、


「Zzz(勉強してきてないから少し不安かな)」


 意外と謙虚だな。スリープモードだからいつものように毒吐けないのか。


 ヤベーよ。

 この一帯に『テスト勉強してきたのに勉強してないって言う奴』が三人も集結したよ。


 クラスに一人くらいしか発生しない奴が三人もここに?

 密度高すぎだろ。もしかしてそのせいで他のクラスに発生しないようになった?


 つーか何度も言うようだけどそんな勉強しなくても大丈夫だからね?

 基礎問題しか出ないから。人の話は聞けっつの。


「Zzz(城ヶ崎じょうがさきクンハ、勉強シテキマシタカ?)」


 え、何で片言なの? スリープモードだから?


「まあ俺はしてきたけど……」


 俺が答えると、


「Zzz(笑)」


 何その『(笑)』? 腹立つ。いつも以上に腹立つ。


「Zzz(私ハ勉強シテマセンガ、英語ニハ自信ガアリマス)」


 ……オマエさては加藤みたく英語の勉強しすぎて英国人になってるな?

 だから片言なんだろ。


「トアリさんもなのね! 私も英語担当よ!」


 英語担当ってなに? 皆で点取るゲームじゃないからね?


「一緒に頑張りましょう!」


 加藤が言うと、トアリはさっきよりちょっとだけ早く反応する。


「Zzz(イエス! ウィー! キャン!)」


 名言引っ張り出してきたよ。

 スリープモードだからこれが限界か? それとも言いたかっただけ?

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