第3章 そしてゴールデンウィークへ……
第119話 クラスに一人は居る謎の勢力。
ゴールデンウィーク前のテスト当日になった。
まあ、出される問題は基礎レベルだし、合格ラインの九割なんて余裕だ。
リスニングもバッチリ復習しておいたしな。
(明日から休みか……)
テストなんかより、休みの過ごしかたの方がなぁ……。
ダラダラ過ごすのも良いけど……。
もっとタメになるムーブをしたいというか……。
(うーん……)
メガネくんと新しい発見を求めるのもアリだし……。
トアリを誘ってみるのも良いか。
潔癖症を緩和するために、人ごみに慣れさせるとか、そういうことするのも良いだろうし。
(どーしたもんかねえ……)
考えがまとまらないまま、俺は教室に入った。
「おはよう」
と、クラスメートたちが挨拶してくれた。俺は「おはッス」といっぺんに応えて、自席に座った。
「おはようでやんす」
金剛力士像が入ってきた。皆「おはよう」と返す。もうすっかりクラスに馴染んでいる。
金剛力士像は、俺の背後に立つ。
「おはようでやんす
「おう」
軽く返すと、金剛力士像は「ふっふっふっ」と笑った。
「城ヶ崎の兄貴、いよいよテストでやんすね。勉強してきたでやんすか?」
「へ? ああ、まあ。リスニングも復習したし」
フッと、金剛力士像は笑う。
「えっ、勉強してきたでやんすか? ヤベー、おいら勉強してきてないでやんす」
そう言う金剛力士像の目は、バッキバキに充血していたのだった。
(……………………いや何でだよ)
おまえ勉強してきたろ。見た感じ徹夜で勉強しただろ。
クラスに一人は居るよこーいう奴。
しかも何で銅像界の金剛力士像が、人間界あるあるの『勉強したのにテスト勉強してないわーって言うクラスメート』になってんだよ。
せめて『銅像界あるあるのクラスメート』になれよキャラ設定的に。テスト前日に千手観音にシバかれてキツイとか、他にも考えようがあるだろーが。
つーかそんな勉強する必要無いからね、基礎問ばっかだし。
さては先生の話聞いてねーな?
「へへ、どうしようでやんす。九割取れなかったら補習なんだよな~」
大丈夫だから。
「まあ補習になったらゴールデンウィークに
補習は他の先生がやるって話なんだけど。マジで説明聞いてねえのな。
「あ、でも歴史にはちょっと自信あるかもな~」
歴史的建造物だしね。歴史が身に刻まれてるからね。
「1000点取っちゃうかもでやんす」
全部100点満点だよ残念ながら。
「オイラ、歴史的建造物ボーナスで加点されて点数が限界突破するでやんす」
何だよ歴史的建造物ボーナスって。そんなシステム無えよ。
「ちょ、やべ、でも英語のリスニングはちょっとキツイかもでやんす」
うん、そこは危機感持った方が良いよ。
「まあでも歴史に全振りすれば他の教科で0点取っても大丈夫でやんす」
何でだよ。
「歴史の1000点を分配すれば大丈夫でやんす」
そんなシステムも無えよ。
「はあ~、何だか体がダルいでやんす」
徹夜したからだろ。
「深夜、耳元で弥勒菩薩にお経を唱えられてて……」
なにその恐怖体験?
「まあこっちの界隈では『テスト前日あるある』でやんすけど」
そーなの?
てかそれを全面的に出せよ。
何でしょーもない人間界あるあるを初手で出してきたの?
「起きてたから大丈夫だったでやんすけど」
勉強してたからだろ?
「あっ、ちょ、やべ、しまった、オイラは勉強せずに寝てたでやんす!」
気づくの遅えよ。もうごまかし切れないから。
「くっそお! これで九割取れなかったら弥勒菩薩のせいでやんす!」
人のせいにするな。いや人じゃないけども。
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