第115話 魔王VS勇者①


 俺、トアリ、金剛力士像の三人で、校門の前に現れた勇者に会いに行った。


 遠くから見て、勇者は男……だと思っていた。

 しかし勇者は女子だった。見た感じ、俺と同年代くらいか。

 近所の高校生だろう。


 ピンクのタンクトップに、下は青デニムのショートパンツという超薄着。

 ヨガの先生みたいな格好だ。


 ショートカットで、額には赤い鉢巻を巻いている。

 顔は……そこいらにはまず居ないだろうと言えるほど可愛らしかった。


 でもその明らかに変質者っぽい薄着が、可愛らしさを打ち消していた。


(……めんどくせえ……)


 マジかよ。今からコイツの処理するのかよ俺が。

 どーやって絡めばいいんだよ。

 どっからツッコめばいいんだよ。


『皆さんご安心を! 極悪ごくあく非道ひどう六神ろくしんじゅう及び魔王まおうが何とかしてくれます!』


 嫌だよもう帰りてえよ。


(……ん?)


 勇者の足元がおぼつかないなと思ったら……。

 勇者はローラースケートを履いていた。ローラースケートを上手く使いこなせておらず、常に足元を動かしてフラフラしている。


「あのー……」


 俺が声をかけると、


「ついに現れおったな! 魔王ども!」


 ショートカットの女子……勇者は叫んだ。

 キャラを立てるためか、変な言葉遣いだ。


「魔王よ! 今日こそウヌの命日だ! あっ、ちょっ、やべっ! 足元が安定せぬ!」


 ローラースケートだしね。てか何でそんな下手なのに履いてんの?

 もしかしてバカ?


「凄まじいわい! これが魔王の攻撃かい!」


 何もしてねえよ。酸素取り込んで微量の二酸化炭素吐き出すくらいしかしてねえよ。


「もうだめだ! あかん!」


 勇者は転んだ。いてて、と言いながら、勇者は立ち上がろうとする。


「くそう! 流石は魔王! やるではないか! 我を転ばすとは! そんな高レベルの魔法を使えるとはな!」


 だから何もしてねえよ。勝手に転んだだけだろ。


「くそう! まさか高等魔法の『スリップ』をかけられるとは!」


 高等魔法って何だ。転んだのはそっちの低級頭脳のせいだろ。


「……引くわあ……」トアリは呟いた。


 ヤベーよトアリにドン引きされてるよ。

 こんな人類初めて見たよ。トアリがドン引きするところも何気に初めて見たんだけど。


城ヶ崎じょうがさきの兄貴! 今ならチャンスでげす! 肉塊にしようでやんす!」


 金剛力士像の方はノリノリだ。

 ちょっと止めてくんない、肉塊とか物騒なこと言わないで。

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