第79話 人外魔境メガネ決戦⑦(sideM)


「ぐぐぐ……さっきから下手になってるからって調子に乗って……」


 金剛力士像は怒り心頭といった感じだ。


「こうなったら金剛力士クロスレーザーをお見舞いしてやる!」


 なんですかそれは?


「くらええええええええええええええええ!」


 金剛力士像の両目がピカーッと、黄色く光り始めた。

 ヤバいヤバいヤバい。

 金剛力士クロスレーザー放たれるって。

 どうすれば――、


「メガネくん、今よ!」


「……へ?」


「いいから私たちの前に立って!」


 金剛力士クロスレーザーを浴びろと?


「え、でも」


「大丈夫よ! 自分を信じて!」


 何を信じろと言うのですか?


「いいからほら!」


 岩田先生はソッと、ボクの背中を押した。ボクはその勢いに乗って、岩田先生と幽霊さんの前に立った。


「くたばれええええええええええええええええええ!」


 と、金剛力士像が叫んだ。

 間もなく、金剛力士像の両目から黄色いレーザーが放たれた。

 二つのレーザーは地面を這いながらクロスして、ボクに直撃……!


「はーっはっは! 粉みじんになるがいい!」


 直撃……したかと思った。

 終わったと思った。

 一瞬だけ花畑が見えた。

 でもレーザーは、ボクに直撃などしなかった。


 逆に……レーザーはボクのメガネに吸収された。


 後に、レーザーがボクのメガネから放出っ!


「な、なにいいいいいいいいいいいい!」


 金剛力士像は叫んだ。

 レーザーは廊下の壁や床を乱反射しながら、金剛力士像に直撃した。


「ぎいやああああああああああああああああああああああ!」


 金剛力士像はブスブスと黒い煙を上げて、ドッターン! と倒れ込んだ。


(え、ええええええええええええええ? てか、ええええええええええええ?)


 なにこれええええええええええええええ?


「ぐぐぐぐ……」金剛力士像は、苦しそうに起き上がる。「ま、まさか八咫鏡ヤタノカガミを持っているとは」


 八咫鏡ヤタノカガミって何?

 タダノメガネですが?


「私の生徒をバカにしないでくれる?」岩田先生は言った。「アナタのようなものが来ても引き下がるような人間じゃないし、そんなチンケなレーザーなんて跳ね返せるわよ。私の生徒は全員」


 そんなことないと思いますが?


「どうしてそういうことが出来るか、分かる?」


「ぐぐぐ……。オイラには分からん……」


 金剛力士像は中腰で苦しそうにしている。


「勉強から逃げなかったからよ。毎日毎日、嫌なことから逃げずに努力したからよ。そして競争率の高い高校に受かった。そういう子は強いの」


 だから、と岩田先生は金剛力士像を指さす。


「アナタのようなものが来ても……そう、どんな障害が襲ってきても、乗り越えられるのよ。レーザーなんて跳ね返せるのよ!」


 ……え、これツッコンじゃいけない?


「ぐぐぐ……努力……か……」


 何かを悟ったように言うと、金剛力士像はスッと、静かに消え去ったのだった。

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