第78話 人外魔境メガネ決戦⑥(sideM)


(……な、なんだ?)


 ドン! ドン! と物音を立てて、何かがこちらに近づいてくる。

 明らかになったのは、なんと、信じられないことに、金剛力士像だった。

 体長約一八〇センチサイズになった、金剛力士像だった。

 何度確認しても、金剛力士像だ。

 金剛力士像が大きな足音を立てて、こちらに歩いてきているのだった。


(え、えええええええええええええええ?)


 なんかまたワケ分かんねー物体来たんですけど。

 岩田いわた先生もビックリ――、


「ぎゃああああああああああああああ!」


 と真っ先に悲鳴を上げたのは、幽霊さんだった。


(え、ええええええええええええええ?)


 おめーが驚くのカヨ。同族っぽいの見て悲鳴あげるの何なの? もはや幽霊でも何でもないんじゃないのこの人。


「ちょっと!」岩田先生が言った。「ドンドンドンドン足跡鳴らして! 他の人の迷惑でしょ!」


 いやそれ以前に問題なところありません? 

 つーか先生が一番うるせーんだけど。


「ふっふっふっ」


 と、金剛力士像は笑った。人間と同じように口を動かして。


「気の強いオナゴよのお。倒しがいがありそう――」


 金剛力士像の言葉を遮るタイミングで、岩田先生は廊下に飾られた絵を取って、手裏剣のようにして投げた。

 ギュルルルルル! と回転しつつ、絵はややカーブして金剛力士像の脳天に突き刺さった。


「ぎいやああああああああああああああああああ!」


 絵を頭に突き刺したまま、金剛力士像はあたふたする。


(え、えええええええええええええ?)


 先生なにしてんのおおおおおおおおおおおおおお?

 え、くノ一の末裔か何かですか?


「これ以上騒音を出してみなさい!」岩田先生が叫ぶ。「アナタの体を内部から引き裂くわよ!」


 なにとんでもないこと言ってんですか?

 つーかさっきから一番うるせえの岩田先生なんですが?


「ちょ、ちょ、あの」金剛力士像の頭には絵が突き刺さったままだ。「いや、ほらほら、オイラを見て驚くとか、ね? そういうリアクション……」


「あのね! 教師やってたら色んな生徒と出会うの! アナタ如き可愛いくらいよ!」


 いや多分岩田先生くらいですよ金剛力士像見て怯まず先制攻撃すんの。

 あとマジでうるさいんだけど岩田先生。もうちょっと声のボリューム落としてくんない。みんな目覚めるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る