第74話 人外魔境メガネ決戦②(sideM)


「ククッ……恐怖で動けない人間……。なんて滑稽なのかしら」


 もうノリノリだよ幽霊さん。

 何かを成し遂げようとしてるよ。

 幽霊として。


「じゃあまずはファーストフード店にポテトでも買ってきてもらおうかしらね」


 怖がらせ方が独特すぎない?


「まあどうせ動けないだろうけど」


 ごめんなさい動けます。ラジオ体操完走できます。


「あの、サイズはSで良い?」


 なに聞いてんのボクううううううううううう?

 反射的にサイズの話に移行しちゃったよ。

 だってたまに家族にそういうお使い任せられるんだもん。

 クセになってんだ、ポテトのサイズ聞くの。


「え、ええと、やっぱりポテトはいいかな……」


 ボクがあまりにも自然にサイズ聞いたせいで幽霊さんキョドった上に要求取り消したんだけど。

 すみません空気読めなくて。


「ワタシ……幽霊なんだよなあ……。あっ、ヤベッ……足透けてるの見えちゃったかな~……」


 露骨に幽霊アピし始めたんだけど。

 分かってるから。キミが幽霊なの分かってるから。

 つーかさっき幽霊ですよねって言いましたよねボク?

 人の話聞かないタイプ?


「ワタシ、かなりの数の呪術師じゅじゅつしを葬ってきたんだけどな~」


 呪術師?


「超Sランク的な、その……幽霊なんだけどな~。だってかなりの霊媒師……あっ、やべっ、間違えた。呪術師を葬ってきたしな~」


 設定ブレブレだよ。

 こんなすぐバレる嘘つく生命体人間でも見たことないよ。


「あ、じゅ、呪術師でお願いします。れれれ霊媒師は聞かなかったことにして」


 テンパらせる存在であるべき幽霊がテンパってるよ。


「あらメガネくん、もう消灯時間過ぎてるわよ? どうしたの?」


 と、不意に誰かが声をかけてきた。

 岩田いわた先生だった。

 髪を後ろに束ねた上に旅館の浴衣姿だったので、セクシーだった。


(……げっ……)


 ヤバいヤバいヤバい。

 なんでこのタイミングで来ちゃうんですか岩田先生。

 ややこしいこと起こるって絶対。

 なんでこの学校の教員はスゲータイミングでボクと合流すんの?

 え、そういう訓練でもしてます?

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