第3章 ついに課外授業!

第62話 G部屋


 トアリや加藤かとうを起点として、絶対に大きなトラブルが起こる。

 そう身構えていたが……。

 その最中に俺はウトウトして、眠りについてしまっていた。

 日頃の疲れが出てしまったんだと思う。


「はっ……!」


 俺は目を見開いた。それとほぼ同時に、


『京都~。京都~』


 新幹線が京都に到着。


(え? え? え?)


 もしかして寝ている間に体に何かダメージでも……とヒヤリとしたが……。

 自分の身には何も起こっていなかった。

 隣の席では、トアリが防護服をギシュギシュ鳴らしながら新幹線を降りる準備をしている。


(ま、マジか……)


 特に何事もなく京都に着いていた。


(き、奇跡だっ……!)


 絶対に誰かが邪魔しにくると思ってたのに……。

 奇跡以外の何物でも無い。一時間半、ゆっくり休めるなんて。


「ああ、奇跡だっ……! 俺は今、確かに奇跡をつかみ取ったんだっ……!」


 俺は晴れやかな気持ちで京都の大地を踏んだ。


「やれやれ、大げさですね、城ヶ崎じょうがさきくん」


「るせえ。俺にとっては奇跡なんだよ。毎秒毎秒『誰かさん』に邪魔されてたからな」


「へえ。それは大変ですね」


 ……なに他人事のように言ってんの?

 ああ分かって言ってるのかな?

 主にオマエのこと言ってるってこと、分かってるよね?

 分かってくれてるよね?


「そんな人が居たら言って下さいね、私が助けてあげますから」


 ああ分かってねえなこれ。


「ホント、鞘師さやしトアリ……さんは自覚がないわね!」


 おめーもだバカヤロウ。


「はいはい静かに!」岩田いわた先生は言った。「ひとまず、バスで旅館に行くわよ」


 俺たちはバスで京都の旅館に行き、それぞれの部屋へ入ることに。


「そういや岩田先生、俺、部屋割り知らないんですけど」


 旅館の玄関にて。次々と各自の部屋に入っていくクラスメートを横目に、俺は言った。


「ああゴメンね。実は昨日の五時限目に決めたのよ」


 俺たちが作戦会議していた時だ。


「これが部屋割りよ」


 俺は、部屋割りの書かれたプリントを受け取った。


「……は?」


 と、俺はつい、声を漏らしてしまった。


ジー部屋。城ヶ崎俊介しゅんすけ、鞘師トアリ』


 ちょっとどういうことこれ。


「あの岩田先生、流石に女子と二人ってのは……」


「そうですそうです! 何で私が『G部屋』なんですか! 私はGではありません!」


 そこおおおぉ?


「私も納得がいきません!」加藤が叫ぶ。「私もGってことにして、この部屋に泊まらせて下さい!」


 オマエはそれでいいのか?

 てか何でそこまでしてこの部屋に泊まりたがるの?


「はいはい、いいから加藤さんは自分の部屋に行く!」


「え? でも……あっ……」


 岩田先生に強く背中を押され、加藤はその流れに逆らえずに自分の部屋に行くのであった。

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