第60話 ネーミングセンス(sideM)


 どうしよう……。

 大丈夫ですよ、とか言って金髪オールバックをフォローしたいところだけど……。

 自分を血祭りにあげようとしてる教頭とボクが仲間だって確実に思ってるだろうし……。声かけたら余計に驚かせちゃうよねこれ。


「き、キミは……!」


 ボクが判断に迷っていると、誰かが金髪オールバックにそう声をかけた。

 ボクと同じきよキラの生徒だった。とりわけ特徴のない男子だった。


「あ、お、おまえ……」


 と、金髪オールバックは恐怖に支配された表情を和らげていった。


「も、もしかして……フジヨシくん……か?」


 金髪オールバックが言うと、清キラの……フジヨシと呼ばれた平凡な男子はゆっくりと頷いた。


(え、ええええええええええええええ?)


 こんなところでフジヨシくんと再会?

 しかもフジヨシくん清キラ高生だったんだ?


「久しぶりだね」フジヨシくんは静かに口を開いた。「金髪オールバックくん」


 金髪オールバックくんって何?

 え、もしかしてそういう名前なの?

 さては作者サボったな。


「フジヨシくん、おまえ、清キラに行ったのか……」


「あ、うん……」フジヨシくんは気まずそう。「金髪オールバックくんは勉強苦手だから、そういうところ行くとボクのこと嫌いになるんじゃないかって……」


「バッキャロウ! んなわけあるか!」


「き、金髪オールバックくん……!」


「むしろ祝いたいぐらいだぜ! そうか……清キラに入れたのか……良かったな……。これで人生安泰だな!」


「……うん……ありがとう金髪オールバックくん……」


 そこそこ良い話なのにテキトーな名前のせいで感動が薄まってるんだけど気のせいですか?


「ボクが休んだ日に配られたプリントを、金髪オールバックくんが届けてくれたお陰だよ」


「へっ、よせよフジヨシくん。友達として当たり前のことしただけだって」


「うん、でもありがとう……」


 ここで二人は微笑みを交わした。


「あ、そういえば気を付けてね、金髪オールバックくん。清キラにも極悪ごくあく非道ひどう六神獣ろくしんじゅう及び魔王まおうが居るから」


「ご、極悪非道六神獣及び魔王?」


「うん、キミとは別の、ね。だからボクたちの車両には行かない方が良いよ」


「そーいやさっき、変なジジイが探してたな」


 いやそれキミのこと探してるんだよ。

 あ、そうか、彼らはあの人が清キラの教頭ってこと知らないんだった。

 なんか話が奇跡的にごちゃごちゃになっててめんどいな。


 金髪オールバック→自分が本物の極悪非道六神獣及び魔王と自覚しているが、教頭が追っているのは自分じゃない極悪非道六神獣及び魔王のことだと思ってる。


 教頭→本物の極悪非道六神獣及び魔王……つまり金髪オールバックを探してる。清キラの城ヶ崎じょうがさきくんが本物じゃないことを知ってる。


 ややこしっ!

 整理したら超ややこしいことになってた。なんかスゲー三角関係出来てんじゃん。どう終着すんのこれ?


「心配すんなフジヨシくん! もしその極悪非道六神獣及び魔王に何かされたら俺に言ってくれ!」


「だ、大丈夫なの? 金髪オールバックくんって喧嘩とかしたことないし……」


「例えヤられることが分かっていても、友達を守るためなら俺は動くぜ」


「き、金髪オールバックくんっ……!」


 だから名前なんとかしろって。作者今からでも遅くないから名前テコ入れしてくんない? 全然話が入ってこないから。


「なあフジヨシくん。清キラってどんな学校なんだ?」


「あ、それがね金髪オールバックくん。授業は――」


 と、金髪オールバックとフジヨシくんはダベりながら前の車両に歩いていった。

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