第58話 すれ違う魔王(sideM)


「あ、あいつ」と丸坊主は金髪オールバックに耳打ちする。「きよキラの奴ッスよ」


「そそそそそそそそうみてーだな」金髪オールバックは何故かヒソヒソ声だ。


 新幹線のドア付近で隠れて見守るボク、中間(トイレとか化粧室の前)に金髪オールバックと丸坊主、その先から城ヶ崎じょうがさきくんが歩いてくるといった感じに。


「はぁ~マジでトラブルとか起こらないでくれよ……」


 ぶつぶつ言いながら、城ヶ崎くんはこっちに歩いてくる。そのまま金髪オールバック&丸坊主と対面するかと思いきや……。

 金髪オールバックと丸坊主は、何故かサッと化粧室の中に入って身を隠した。城ヶ崎くんはボクの横を通って、後ろの車両へ。


(え、あれ?)


 シバくとか言ってたような……とボクが思っていると、金髪オールバックと丸坊主は顔面蒼白で化粧室から出てきた。


「やべえッスね……」と丸坊主。


「あ、ああ……。アイツ……髪の毛茶色く染めてやがった……確実に不良だ……」


 いや金髪オールバックが言うセリフ? 城ヶ崎くん髪をちょっと茶色く染めてるだけだよ? 不良でもないよ?


「くっそ……清キラにマジモンの不良が居るなんて聞いてねーぞ!」


 金髪オールバックが言った矢先のことだった。


「おお、こんなところに居たのかねメガネくん!」


 そう声をかけてきたのは、長い白髪を後ろで束ねた老人だった。

 その、黒スーツを着た長身の老人は……教頭先生だった。


(……げっ)


 教頭の声に反応して、丸坊主と金髪オールバックはこちらを向いた。二人が確実にボクを認知したのが分かった。

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